『アマゾン(AMZN)×ミスター・オリンピア』にみるアマゾンの拡大戦略

ボディビルダー投資家の皆さんお待ちかねのミスター・オリンピアまであと1週間となりました。2016年もアマゾンが放映することに決まっており,ボディビルファンの方やアマゾン株主の方は必見のイベントとなっています。(米国の9月16日プレジャッジング,9月17日ファイナル)

アマゾン×ボディビルディング

アマゾン(AMZN)は2015年よりミスター・オリンピアのオフィシャルブロードキャスターを務めています。それ以前は,Bodybuilding.comがずっと放映していましたが,放映権の高騰にともないついに資金力に勝るアマゾンがコンテンツを奪い取ることに成功しました。

 

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このイベントの成功の是非はアマゾンの今後の成長路線にも大きく関わってきます。というのも,ボディビルというのは,スポーツ・ニュートリション(栄養補助食品など)の最先端テクノロジーの粋を集めたスポーツだからです。

※ボディビルを知らない方へ:今をさかのぼること51年前の1965年にジョー・ウイダー氏がボディビルコンテストとしてMr.Olympiaを始めました。ウイダー氏はボディビル雑誌の出版社を経営する傍ら,数多くのボディビルダーを支援し,ボディビルをマニアのスポーツではなく一大スポーツにまで育て上げた生みの親です。そのウイダー氏の秘蔵っ子として大活躍したのがアーノルド・シュワルツェネッガーです。

さてアマゾンがなぜミスター・オリンピアを放映することが重要なのか,それは私の目には,①アマゾン(AMZN)が今後ディズニー(DIS)のようなメディア・コングロマリットに化けるかどうかの試金石であり,かつ,②アマゾンがMuscleTechのようなスポーツ・ニュートリション会社に化けることが出来るかどうかの試金石でもあると映るからです。

ご存じのようにアマゾンはEverything Storeであり,ものを売ることにかけては達人ですが,最近の動きを見ていると,すでにEverythingとは「もの」だけではなく「コンテンツ(Amazon Prime Video/Music)」「体験・エクスペリエンス(Amazon Echo/Alexa)」まで手がけるようになっています。まさにアメーバ経営(京セラ盛田会長)ですね。

このアマゾンの次の狙いというより,留まることを知らぬ勢いを観察しようというわけです。

スポーツ市場

スポーツ市場というのは大きく分けて,以下のような市場に分かれます。

  1. スポーツ用品製造販売(ナイキ(NKE)やアンダー・アーマー(UA)やリーボック)
  2. スポーツ・ニュートリション販売(MuscleTech,Ultimate Nutrition)
  3. コンテンツ販売(NBAやNHLやMLBなどの放映権)
  4. スポーツ施設(フィットネスジムやライザップなど)
  5. スポーツイベント開催
  6. 飲料水(コカ・コーラ(KO)やペプシ(PEP))

もちろん裾野が広いのでこれだけではありません。上記それぞれがショートケーキのようなもので,スポーツ市場という巨大なケーキを10等分ずつくらいに分けていると考えておいてください。

アマゾンのスポーツ市場参入

ではアマゾンは,現在,上記のスポーツ市場のどこを占有しているかというと,1のスポーツ用品の小売りの部分と,2のスポーツニュートリションぐらいのものです。残念ながらスポーツと言えばアマゾンだと連想する人がほとんどいないのが現状で,ブランド力が欠如しています。ゼロスタートだと言えますね。

では,アマゾンはどうスポーツ市場に食い込んでいこうとしているのか?

その一つが,2のスポーツニュートリション部門の強化です。

Euromonitorによれば,プロテインパウダー市場は今後5年で急成長すると予想されています。

それは日本でもライザップグループをはじめとするフィットネス市場が爆発的に拡大しているのを見れば分かると思いますが,さらに米国や欧州や中東(イランやUAEやカタールはボディビルのメッカです)ではボディビルはごく日常的にたしなむスポーツであり,ショッピングモールの中でプロテインを販売しているのを目にします。(日本ならアイスクリーム屋とかケーキ屋のノリですね。)

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小売り+プライベートブランド化

アマゾンが狙っているのはこのプロテイン等のサプリメントの小売り,さらにはプライベートブランド化でしょう。アマゾンは既にいくつかの日用品でプライベートブランドを出しつつあります。そして,プロテインパウダーなどのサプリメントというのは実は「最もプライベートブランドを出しやすい製品の一つ」です。

それは米国には無数のサプリメント原料メーカーが存在し,それらの原料メーカーからホエイやカゼインというった原料を購入し,パッケージングし,OEMラベルを貼付してくれるサービスがあるからです。

多くの現役あるいは引退したボディ・ビルダーが自分の名前を冠したスポーツニュートリションブランドを経営しています。

例)

  • Phil Heath(5回優勝):Gifted Nutrition
  • Kai Greene:DynamiK Muscle
  • Ronnie Coleman(8回優勝):Ronnie Coleman Signatured
  • Jay Cutler(4回優勝):Cutler Nutrition
  • Dexter Jackson(1回優勝):Blade Nutrition
  • Lee Labrada:Labrada Nutrition
  • Rich Gaspari:Gaspari Nutrition

こういった著名な(全員分かるあなたは,立派なボディビルファンでしょう)ボディビルダーは自前でプロテインを調合しているのではなく,提携先に頼んでいるわけです。そして,自分の名前・ブランド力で商売をすると。ボディビルダーは分厚いファン層を抱えているのでこうした商売が成り立ちます。

ここに目を付けたのがアマゾン(AMZN)というわけですね。

おそらく今後,ミスター・オリンピアのみならず,アーノルド・クラシックなどのほかのボディビルコンテストの放映権獲得にも動いていくでしょう。サプリメントとは品質の差がほとんど無く,売れるか売れないかは,価格とブランド力でほぼ決まります。

逆に言えば露出が多くなければ売れません。

アマゾン×メディアコンテンツ

アマゾンの1の矢がスポーツニュートリションだとするなら,2の矢は放映権そのものの価値,コンテンツの価値を手に入れることを目的としていると思います。

ディスニー(DIS)がなぜあれだけの好業績を上げ続けられるかと言えば,スポーツ放映権を中心とするメディアコンテンツの価値に他なりません。コンテンツとは視聴者の『時間・興味』を占有する権利な訳です。もし何かを視聴者に売り込みたければ,コンテンツの合間に宣伝するというのが最も効果的です。

今後,アマゾンはコンテンツ・ビジネスを強化していくのではないかと感じる根拠は上にも書いた,アマゾン・プライム・ビデオ(映像コンテンツ)の拡充路線です。

インターネット放送技術の発達により,コンテンツはほとんど追加コストなしで多くの視聴者に伝送できる時代になりました。一回手に入れればいくらでも無償でダビング販売できるというのに近いわけで,視聴者を多く獲得すればするほど,コンテンツのコストは安くなるわけです。(頭数で割ればよいので)

既存のNBAやNHLなどの放映権はのどから手が出るほど欲しくても,アマゾンがいきなり活用できるインフラが整っているわけではありません。今のところケーブルテレビ・ネットワークの方がアマゾンのプライム会員向けのインターネットインフラよりも強力・確実なわけで,こうしたコンテンツを獲得するのはまだ時期尚早です。

そこで,手始めに「手ごろな価格だが,アマゾンの他の部門とシナジーの高い」ミスター・オリンピアを獲得したのでしょう。これで成功すれば,ほかの単発イベントのコンテンツ獲得に動くのは間違いないと思います。(コンテンツは採らなければ奪われるものです。オリンピックの放映権と同じですね。)

まとめ

今回は一般論と言うより,個人的な趣味(ボディビル)をベースに銘柄の先行きを分析してみました。投資家は一人一人価値観や時間の使い方が違うので,同じ銘柄を見ても見通せる距離が異なります。(たとえば,バフェットは最初に飲んだジュースがコカコーラで,最初に契約した自動車保険会社がGEICOだったから株主になったというようなコメントを出しています)

投資家個人の生活者の目線で見てみると,銘柄の筋の良し悪しがよく分かるというものです。私は趣味ベースではスポーツ関連(ナイキやアンダーアーマー),仕事関連ではヘルスケア関連・資本財関連・ハイテク関連に強みがあると言えます。

皆さんの強みはどのセクターでしょうか?

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