キャタピラー(CAT) 企業分析
目次
企業ホームページ
米国企業としては珍しくアニュアル・レポートの日本語版が用意されています。(ほかにも中国語など多言語で用意。)ここまでIRに誠実な企業も珍しいです。
セクター
資本財(農業および建設用機械)
企業状況
世界首位の重機メーカーです。主力事業は資源開発や建設業者向けの油圧ショベル,ブルドーザー,工業用エンジンなどです。部品交換や手厚いサポート体制で長期的な顧客との信頼関係を築くことを重視しています。またディーラーとの関係も重視しています。
セグメントとしてはエネルギー&輸送部門が最大(39%)で,続いて建設産業部門(35%),資源産業部門(16%)の3部門が中心で全体の90%を占めています。
2012年までは好調なエネルギー関係への投資熱で好業績を連発していましたが,2014年以降続く資源・エネルギー価格の下落による影響で,直近の売上は大幅に減少しています。特に資源産業部門は売上半減近くになっています。5000人以上のリストラによる費用削減も行っていますが,売上減少をカバーすることは出来ていません。
2015年に引き続き,2016年もYoY-10%程度売上が減少するとのガイダンスが出ており,見通しは明るくありません。
地域別では,北米43.9%,欧州アフリカ中東24.4%,アジア太平洋19.8%と海外展開に積極的です。海外ではコマツと競合しています。
市場
エネルギー&輸送部門
石油・ガス・発電所などのエネルギー産業向けには,ドリル,ガス・タービン発電機などを販売しています。三菱重工や日立などが競合してきます。
船舶・鉄道などの輸送産業向けには,ディーゼルエンジン,レシプロエンジンを販売しています。こちらはカミンズ(CMI)が主要な競合でしょう。
建設産業部門
油圧ショベル,バックホー・ローダーなど工事現場で使う重機全般を販売しています。コマツが競合ですね。
資源産業部門
主として鉱業や採石業向けのトラックやショベル,採掘機を販売しています。鉱物資源が中心でしょう。
最近のマーケット状況
5年チャート
日足チャート
直近の株価は原油価格の反転に連動して高騰しています。
先四半期のキャッシュフロー
ここ1年間の四半期決算では売上が右肩下がりに減少しています。2015Q4ではついにEPSがマイナスに転落しました。業績としては非常に苦しい状態が続きますが,一方でキャッシュフローは盤石であり,利払いの圧迫も受けていません。配当に関しては問題ないと思います。
直近株価評価
現在の株価は資産価値から考えて割安です。
現状 | スコア | 満点 | |
機関投資家比率 | 67.0% | 10 | 20 |
機関投資家の売買動向 | -2.7% | 3 | 12 |
インサイダーの売買動向 | -0.9% | 9 | 12 |
現在の株価(資産に対する割安度) | $72.84 | 20 | 20 |
現在のPER(Forward) | 20.07 | 5 | 20 |
現在の配当利回り | 4.2% | 16 | 16 |
63点 | 100点 |
10年ファンダメンタル分析
株主還元には非常に積極的です。連続増配22年を記録しており,自社株買いも行っています。
ただし,景気循環株であることから売上・利益の振れ幅が大きく,直近5年で見ると営業CF,EPSはマイナス成長です。
石油メジャーやシェールガス企業は新規投資を行う余裕はなくどこも25%〜50%程度の設備投資削減を発表しています。ここ1年ぐらいは引き合いもあまり期待できないと思われます。
10年ファンダメンタル レーダーチャート
10年ファンダメンタル 得点表
重機は安全性と信頼性・サポートが重視されることから,キャタピラー(CAT)は確固たるブランド価値を築き上げることに成功しています。ただし,競合状況としては厳しく,収益性は余り高くはありません。
5年平均 | 5年スコア | 10年平均 | 10年スコア | 満点 | |
配当株総合評価 | 230点 | 246点 | 500点 | ||
グロスマージン(粗利率) | 27.8% | 30 | 27.7% | 30 | 40 |
営業キャッシュフローマージン | 13.3% | 0 | 14.1% | 0 | 40 |
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) | 19.8% | 10 | 32.5% | 20 | 20 |
収益力評価 | 40点 | 50点 | 100点 | ||
営業キャッシュフロー増加率 | -1.0% | 0 | 1.4% | 10 | 40 |
フリーキャッシュフロー増加率 | 2.0% | 8 | 0.9% | 8 | 32 |
EPS増加率 | -13.9% | 0 | -3.8% | 0 | 28 |
成長力評価 | 8点 | 18点 | 100点 | ||
自己資本比率平均値 | 19.7% | 10 | 16.4% | 10 | 40 |
流動比率(流動資産/流動負債) | 139.4% | 20 | 136.2% | 20 | 40 |
クレジット格付け | 14 | 15 | 14 | 15 | 20 |
財務健全性評価 | 45点 | 45点 | 100点 | ||
平均配当利回り | 2.5% | 21 | 2.6% | 21 | 28 |
自社株買い利回り | 2.0% | 12 | 1.3% | 8 | 16 |
配当金増加率 | 10.3% | 28 | 10.3% | 28 | 28 |
配当性向(増配余地) | 31.2% | 21 | 31.2% | 21 | 28 |
株主還元評価 | 82点 | 78点 | 100点 | ||
ブランド力 | 40 | 15 | 40 | 15 | 60 |
エコノミック・モート | Wide | 40 | Wide | 40 | 40 |
定性的評価 | 55点 | 55点 | 100点 |
10年分析グラフ
優良銘柄の条件
優良銘柄の条件 | 結果 | 判定 | 備考 |
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ | 建設機械ではブランド力あり。品質・サポートに定評。 | ○ | |
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある | 資源分野は短期的に大幅に投資削減されて逆風。 | × | |
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい | バランスはよいが,売上減が響いている。 | △ |