歴史的バーゲンセール中のチェサピーク・エナジー(CHK)

バーゲン中のバーゲン

おそらく多くの方がすでにフルインベストメントに切り替えて,固唾を飲んで相場を見守っていることだと思います。もしもまだ余力があるなら魅力あるバーゲン銘柄が売れ残っています。現在の株価で試算するとリスク・リウォード=1/3が期待できる優良投資案件,それがチェサピーク・エナジー(CHK)です。

※99%の人には向かない銘柄です。生粋のバーゲンハンター以外は手を出さないでください。

一目見て分かる通り,現在の株式市場の中でもっとも醜いチャートです。

なぜここまでひどい暴落とダウントレンドが続いているかというと,それは米国シェールリグ復活により天然ガス価格が低迷し続けているからです。リグ数は2016年以降増えたり減ったりを繰り返していますが,リグの増加に加えて,2018年の米国が比較的暖冬で暖房用のエネルギー需要が例年より少なめになるとの見通しから叩き売られています。

通常であればこういう業績不安定でコモディティーサイクルに左右される企業はバフェット流分析対象から外しますが,今回は違う視点で見てみようと思います。

まず企業業績ですが,2016年以降のエネルギー価格の低迷の煽りを受けて一時は倒産が危ぶまれるほどの業績低迷に陥っています。2017年には少し持ち直しましたが,かつての栄光は何処へやらで,業績悪化に伴い株価は高値$57から現在の$2.73まで下落してしまいました。10年で1/20もの株価下落です。かつてはEPSも$3出していたのに今や赤字ですから,業績的には見るべきものはありません。

口減らし

では破滅的な業績の中でチェサピークの経営陣は何をしているかというとリストラです。

チェサピークはピークの2011年以降毎年リストラを断行しており,12000人いた従業員数を現在では2900人(25%に圧縮)まで減らすことに成功しました。この水準は2005年相当であり,かなり思い切ったリストラが成功していると言えます。エネルギー産業にはモートが存在しないため,コモディティー価格の変動に合わせてどれだけ強力にリストラできるかで業績が決まります。

天然ガス

また,現在の株価低迷の根源は,叩き売られ続けている天然ガスのせいです。では,今後もさらに叩き売られるのでしょうか?

もちろん,それはドル次第なのですが,テクニカル的には今の天然ガス価格は強固な岩盤の上で跳ね返され,これ以上の下落の可能性はかなり低いでしょう。

以下のチャートを見れば分かる通り,今の$2.56は2015年以来の「超強力レジスタンス」の位置です。当然,投機筋はこの少し下のラインを破ろうと売りを仕掛けていますが,今のところは逆張りの買いが拮抗して横ばいが続いています。出来高も高くなっており,熱戦が繰り広げられています。

左軸のVolume By Priceを見てもらっても分かる通り,2.5$-$3.0が今までの天然ガスの価格レンジであり,ここを割れたのは2016年のサウジアラビアが仕掛けた価格破壊の時だけです。(あの時はサウジアラビアが国を挙げてシェール潰しとシェア拡大に動こうとしていましたが,逆に失敗して国家財政を悪化させ撤収しました。)

サウジという国家レベルが売りを仕掛けてこない限り,このラインより下には下がらないと見ますがいかがでしょうか?

CHK/天然ガス

では,次にチェサピークの株価/天然ガスの比も見てみましょう。

今の対天然ガス比の株価水準は極めて低く,過去最低だった2016年2月に迫っています。歴史的に見ても最低レベルです。エネルギーが今後もさらに売り込まれるのなら,確かに妥当ですが,ドル安に伴って原油価格などが反発している中での天然ガスの過剰な悲観相場なので,センチメント的には行き過ぎと見ます。

CHK/原油

では,比較的好調な原油価格との比率で見るとどうなるでしょうか?

こちらはすでに,2016年のパニックの時よりもさらに低い比率まで落ち込んでいます。世界が度肝を抜いた原油価格暴落ショック時(当時チェサピークは倒産寸前と言われていました)よりも売り込まれるというのは,さすがにチェサピークの石油売上比率が25%しかないとはいえOversold水準でしょう。

リスク・リウォード

バーゲンセール中のバーゲンセールでありリスク・リウォードは過去最高に高まっています。

  • Entry: $2.73
  • Stop: $2.50 (損失: 0.23)
  • Target1: $3.4 (利益: 0.67)
  • Target2: $4.3 (利益: 1.57)

で試算すると,Target1で利食いするとしてリスク/リウォード= $0.23/$0.67 = 1/3。Target2にまで粘るならリスク/リウォード=1/6です。なかなか魅力的な投資案件です。

とは言え,ドルの急変には要注意です。ドル高転換すると資源価格も株価も暴落します。(その場合も,原油や金の暴落ほどは天然ガスは下がらないと見ますがくれぐれもポジションサイジングにはご注意ください。)

IR情報

Chesapeake Energy

決算発表日

2018年2月22日

2016年があまりにひどい1年だったため,エネルギーセクターの大半は売上増・EPS増が期待されていますが,まだ予断は許さない市況です。競合デボン・エナジー(DVN)の決算発表が2月20日ですので,それも参考になるでしょう。

空売り

最悪のチャートを見れば分かる通り,チェサピークの空売りはNYSE第4位の位置につけています。つまり,「現物ホルダーは全員含み損,短期の参加者はショートポジションばかり」と言う状況です。

フロート比でも20%程度のショート比率が続いており空売り天国な状況が続いています。ここ最近の下げでいくらかショートの買い戻しが入り,2018年2月現在は17.22%となっています。

企業概要

チェサピーク・エナジー(CHK)は,オーブリー・マクレンドン氏とトム・ワード氏の二人が1989年に創業した比較的若い天然ガス・石油採掘企業です。当時,マクレンドン氏とワード氏はどちらも29歳で,マクレンドン氏がCEOに,ワード氏がプレジデント兼CFOという役割分担で事業を開始し,オクラホマ州にて採掘を開始しました。

シェール業界きってのビジョナリーであったマクレンドン氏は,創業当時から水圧破砕法や水平採掘法などを次々と導入し,急速に生産量を伸ばしました。こうした技術革新に加え,借入金で財務レバレッジをかけつつ,全米各地の農家から土地の採掘権を借り入れる手法で保有埋蔵量を増やし続け,2008年頃のエネルギー価格高騰後に一気に時代の寵児にまで上り詰めました。2008年にはマクレンドン氏はS&P500企業の中で最高の年俸を稼ぐCEOとなり財界でも名を馳せることになります。

 

この成功ストーリーが暗転するのはそれからしばらくしてからです。

ハリバートン(HAL)やシュルンベルジェ(SLB)などの石油サービス企業はその他多くのシェール採掘企業に技術を提供し,米国は今や世界最大の産油国も狙えるほどの過剰生産国となりました。その結果,原油・天然ガス価格が下落の一途を辿ります。

チェサピークは長らく過剰な設備投資・人的投資による規模拡大を追求してきたためバランスシートがボロボロで,2012年からはリストラと資産売却を始めます。現在に至るまでひたすら資本支出を削減し,バランスシートの改善と,キャッシュフローの黒字化をしようとしています。まだ道半ばですが,2018年中にはキャッシュフローの黒字化の目処がつきつつあるという状況です。

ちなみに,創業者のマクレンドン氏は2016年に自動車事故で亡くなっています。

現在はCEO ダグ・ローラー氏に経営が引き継がれています。

近況

主力商品である天然ガスの価格低下により売上減少に苦しんでいます。天然ガスの採掘時に石油も採掘できるのですが,天然ガスが75%を占めており石油はおまけのようなものです。

したがって,天然ガスが売り込まれている現在は最悪の市況なのですが,そもそもエネルギー産業とは景気循環型であることを考えると,最悪の時期と言うのは投資タイミングとしては悪くありません。反転の時期が数日後なのか,数週間後なのかはこれからのドルや天候に依存します。

現在は約1兆円の社債と長期借入金を7000-8000億円規模に圧縮しようとしています。設備投資も極力抑えており,その経営努力は認めて良いでしょう。ターゲットとなる財務レバレッジは  debt/EBITDA比で2倍とのことです。すでに2012年のピーク期以降,トータルで1.3兆円もの負債の圧縮を行なっており,バランスシートはかなり改善しています。

損益分岐点

決算短信によれば,2017年Q3時点での生産コストは$3.03/BOEです。(BOEとはbarrels of oil equivalentの略称で,石油換算バレルとも呼ばれます。)

実際,コマーシャルズのポジションを見てみると,2018年2月の下落により買いポジションに回っています。大口投機家の暖冬を見越した売りに対し,生産者は買いに回る形で天然ガス価格が拮抗しているというわけです。

競合

ガスの採掘を行う競合には,ライス・エナジー(RICE)を買収したEQTコーポレーション(EQT)やエクソン・モービル(XOM),サウスウェスタン・エナジー(SWN),アナダルコ・ペトロリアム(APC),キャボット・オイル・アンド・ガス(COG),ブリティッシュ・ペトロリアム,アンテロ・リソーシズ(AR),レンジ・リソーシズ(RRC),デボン・エナジー(DVN)などがあります。

競合のうち,$SWN,$RRC,$CHKは2017年以降,50%以上の株価下落となっており厳しい逆風に晒されています。

明らかに売られ過ぎの天然ガス

ドル高により売られ気味の商品先物の中で,現在圧倒的に売られているのが天然ガスです。下図は2018年2月16日のYear To Dateでの商品先物価格変動率です。飛び抜けて下落しています。

まとめ

  • 天然ガスはテクニカルにはレジスタンスのラインまで売り込まれており,このレジスタンスはかなり強力。
  • 商品先物の中でも天然ガスが一番売られており,原油価格などと比べても乖離が広がっている。
  • コマーシャルズは防衛的な買いに回っている。
  • チェサピークは資産売却によって財務体質を改善しつつある。
  • 仮に天然ガスが底打ちすれば,キャッシュフローの黒字化が見えてくる。
  • リスク・リウォードが1/3〜1/6とかなり良い投資案件である。

リスク

  • 急激なドル高による資源価格下落ショックの可能性。
  • 資源のパニック売りが起きると巻き込まれる恐れが高い。

8 thoughts on “歴史的バーゲンセール中のチェサピーク・エナジー(CHK)

  • 2018年2月23日 at 1:46 AM
    Permalink

    すごい分析ですね!ほんと鮮やかです。長期投資を知った時とは別の鳥肌立ちました。
    この記事は、2日前に読んでいたのですが、私は、ちょっと勇気なかったです。
    こういう投資手法もあるのですね。
    バーゲンハントするために、必要な知識とは何でしょうか?
    すみません、思わず書き込んでしまいました!

    Reply
      • 2018年2月25日 at 12:35 PM
        Permalink

        記事にして頂き、ありがとうございました。
        私は投資を始めて日は浅く勉強中ですが、バリュー投資を選好しています。短期的な見通しの悪さで半値以下に暴落した銘柄を見つけては、ファンダメンタルズと期待収益を元に購入しています。昨年は、市況も良かったお陰で、それなりに利が乗りました。
        今回この記事に、コメントさせて頂いたのは、買いのタイミングがあまりにも適切に思えたからです。昨今、投資をしていて悩ましいのは、確かに売られ過ぎているということはわかっても、どこまで売られるのかについては、よくわからないことです。銘柄によっても反転の根拠は変わると思います。例えば、過去につけた配当利回りが基準になるなど…。
        今回のようなバーゲンハントは、記事でも言われている通り、バリュー投資とは全く異なる手法なのだと思います。ただ、過剰に売られている特殊な状況という点では一致しているので、非常に興味を持ちました。投資家として、洗練されていくためにも、テクニカルをもう少し勉強してみたいと思います。
        ありがとうございました!

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        • 2018年2月25日 at 7:29 PM
          Permalink

          >CADWAKIさん
          こんにちは。
          今年は2017年とは逆で,相当にボラティリティーの高い1年になると思っています。
          2017年の低ボラ相場で愚鈍になった投資家は,決算チェックもせず勘で投資先を選び,下がれば押し目買いという名のナンピン買いをするパブロフの犬状態になっています。
          したがって,上がる時には極端に上がる(2018年1月)し,下がる時には極端に下がる(いつになるかは明らかではないですが,いずれ来ます)という
          「需給の歪み」「「センチメントの行きすぎ」というチャンスが何度も訪れるでしょう。

          しっかり準備できた人にとっては2018年,2019年は最高に面白い1年になると思うので頑張りましょう。

          Reply
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