原油価格下落の行方

ピクテ投信投資顧問の2014年12月の資料に,各国の推定採算ラインが掲載されていました。今読み返してみても秀逸な内容で,原油価格の下落を正確に予言していた資料だと言えると思います。

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このグラフのように主な産油国の国家予算を維持しようとすると原油価格が90ドル以上である必要があります。今の原油価格30ドル前後というのは,ロシアの油田でさえ採算が採れないレベルの低価格です。ロシアとサウジアラビアが派手なパフォーマンスを行って,原油底打ちを演出しようとしているものの,まだ底打ちはしていません。

シェールオイル革命

今回の原油価格下落の主要因は,シェールオイル革命であり米国の急激な原油増産です。(下図の黄色の部分がシェールオイルです。米国のシェアは小さいものの,需給バランスを壊すには十分な量でした。)

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そして,この原油増産を支えているのは,シュルンベルジェ(SLB)やハリバートン(HAL)を始めとする企業のテクノロジーです。いまやシェールガス・シェールオイルの掘削は,フラッキング(水圧破砕)や水平堀りなどの新技術が多用されており特許技術開発競争の様相を呈しています。

現在の特許数ではシュルンベルジェが首位ですが,ハリバートンはベイカー・ヒューズを買収予定であり,肉薄する見込です。

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2005年〜2012年にかけてシュルンベルジェ(SLB)の特許出願数が突出しています。それに続いて,ハリバートンも特許を多数出して追走しています。出典:Competitive Intelligence

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下図はハリバートンの様々な水平堀技術ラインナップ

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こうした技術開発によるコストダウンが招いたデフレは克服が難しいのは,半導体のナノスケール技術競争を見れば分かります。最終的にはコスト競争の中で大量淘汰が発生し,優れたいくつかの企業に統廃合され,市場が寡占化して初めて価格が安定するでしょう。

直近では一旦原油価格が底打ちしたとしても,企業の設備投資再開→生産量急増→再度価格下落,というサイクルがしばらくは続きます。基本的にはエネルギー業界は10年〜数十年スパンでの投資と回収を行う業界であり,10年前は「エネルギー業界は過去の遺産の上にあぐらをかいて過小投資に陥っており,生産性の改善が見られない」という指摘があったことを思うと,今の技術革新は隔世の感があります。

2000年代には行って劇的にエネルギー業界の技術革新が進んだ背景には,エネルギー価格の高騰により投資資金がエネルギー業界に大量に流入したことがあります。豊富な資金と高騰するエネルギー価格の将来像を見て,シュルンベルジェやハリバートンは時計の針を2倍速・3倍速で回してしまいました。

以上のような背景を考えると,当分の間,米国の採掘可能埋蔵量が増え続け,また算出コストも低下し続けます。どこで底打ちになるかというと,やはりシェールオイル企業の連鎖倒産により「埋蔵量はあるがリグが動かせない」状態になるところまでは低迷し続けると思います。要は淘汰と再編待ちということです。

以下の図にあるようにシェールオイル油田の中でも採掘コストには大きな開きがあり,最も損益分岐点が低いのはイーグル・フォード(テキサス南部)で1バレル46ドルです。今の1バレル30ドルでは,全てのシェールオイル油田の損益分岐点を下回っていることから,財務体力的にあと何ヶ月持ちこたえられるかが見物です。

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原油価格の底はまだしばらく先だと思いますが,一方,エネルギー企業の株価は先に底打ちになると思います。底打ちの順序としては,株価の底(パニック)→原油価格の底→エネルギー企業の業績の底打ち,という順を予想しています。

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