エレクトロニック・アーツ(EA) 企業分析
企業概要
エレクトロニック・アーツ(EA)はパソコン,コンソール(Xboxなど),タブレット,スマートフォン向けのゲームを開発・販売している企業です。主要な作品には「FIFA」「NBA」「NHL」などのスポーツゲーム,「バトルフィールド」,「ザ・シムズ」「シムシティ」などのシミュレーションゲームなどがあります。
ゲーム市場の伸び自体は順調に推移しており,YoY+4%の成長が予想されており心配する必要はありません。しかし,長期的に見た場合,現代社会の消費者は忙しく,24時間のうち何分間を自社サービスの利用に割いてくれるかをあらゆる業界が競い合っています。(デイリー・アクティブ・ユーザー数,デイリー・アクティブ・サービス利用時間)
そういう意味では,ゲーム業界の最大の敵は,SNSであるフェイスブック(FB)やインスタグラム,そして,動画コンテンツを放映するアルファベット(GOOG),そしてネットフリックス(NFLX)やアマゾン(AMZN)です。(フェイスブックやグーグルに出しているゲームの広告からのユーザー流入もあるので,一概に敵というわけではなく協力関係にある敵という感じですが。)
こうした消費者のライフスタイルの変化がどれぐらいのペースで進むのかについては常にウォッチし続ける必要があります。
エレクトロニック・アーツの強みはすでにブランド力のあるスポーツゲームタイトルを総なめしていることと,オンライン配信によって集客力・課金率を向上するためのノウハウを身につけていることでしょう。
投資テーマとして関係してくるのは,AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といったジャンルでしょう。エレクトロニック・アーツはAR/VR分野において任天堂のポケモンGOに遅れを取りました。ポケモンGOのヒットによりARの認知度が一気に高まり市場が創出されようとしており,今後はAR/VR用のガジェット(グーグル・グラスのようなヘッドマウントディスプレイ)メーカーと提携しつつ,AR/VRに対応したゲームを増やしていく必要があると思います。
チャート
リーマンショック以降業績が悪化したことから売り込まれましたが,2012年株価は順調に上昇しており新高値をつけています。
企業ホームページ
セクター
情報技術セクター
基本情報
経営陣
CEO:アンドリュー・ウィルソン
規模
従業員数:8400名
拠点:全世界に31箇所(米国,欧州,韓国,中国に拠点あり)
セグメント
販売方法の違いにより,デジタル製品部門とパッケージ製品部門の二つに分かれています。すでにデジタル部門の売り上げが全体の6割を占めておりいずれはパッケージ製品部門はデジタル製品部門に吸収されると考えられます。
収益力
収益力に関して言えば,リーマンショック以降かなり悪化していた収益体質が2015年以降改善しています。グロスマージンは2008年の50%から,2017年の73%まで上がってきており,それに伴いキャッシュフローも潤沢に稼げる体質に変貌しました。
ゲーム市場というのは比較的シクリカルな業種であるものの,近年のエレクトロニック・アーツの利益率が高止まりしているのは,ゲームのデジタル化が背景にあります。
昔のパッケージゲーム売り切り型のビジネスモデルの時代は,販売開始直後が売り上げのピークで,それ以降は徐々に売り上げが減少するというシクリカルな大きな波がありました。
しかし,現在のゲーム業界はすでにデジタル化(オンライン販売,または,ライブサービス)しており,随時ゲーム内容をアップデートしたり,また期間限定のイベントなどを設置することで,常にゲームユーザーの関心を惹きつけ,マネタイズに結びつけることが可能です。従来のような売り上げの波は減り,平準化できているというわけです。
エレクトロニック・アーツは売り上げの三分の一がパッケージ製品であるため,依然としてシクリカルな影響は受けますが,残りの三分の二はデジタル製品です。
以下の例はシムシティ(ライブサービス版)のイベントと課金状況です。こうしたビッグデータを蓄積・研究することで,ユーザーを飽きさせず課金方法を改良できている点が好業績の要因だと言えるでしょう。今後,デジタル化が進むほど,ライブサービスが進むほど,利益率は改善していくと思います。
<シムシティのイベントの例>
・災害イベント(台風や宇宙人襲来などのミッションクリア)
・ビーチイベント(夏季限定の建物アイテム)
・ハロウィーンイベント(秋季限定のハロウィーンアイテム)
市場
市場成長率
世の中の大きなトレンドとして,読書や新聞を読むといった活動が廃れ,娯楽・ショッピングなどに時間を割く様になっています。この傾向はiPhoneなどスマートフォンの普及によって加速しており,今や電車の中でもゲームをする人が大半を占めるようになっています。
ゲームは一度習慣化してしまうと抜け出すのは容易なことではありません。大きなトレンドとしてのゲーム市場の拡大は今後も続くと考えられます。エレクトロニック・アーツの資料ではゲーム市場全体はYoY+4%,デジタル製品市場に限って言えばYoY+9%の成長率が見込んでいます。(差はパッケージ製品市場が縮小しているため。)
競合
市場シェア
ゲーム市場といえば中国のテンセント(騰訊)やNetEase(網易,NTES)や,ソニー,米国のアクティビジョン・ブリザード(ATVI)などがひしめいており競争は激しいです。
競合テンセントはSNSとゲームの融合を狙っており,スーパーセル買収によって「クラッシュ・オブ・クランズ」を獲得するなど買収により次々とゲーム事業を強化しています。買収によりゲーム会社としては世界最大となったテンセントはQQやWeChatといったSNSが本流であり,対人ゲームやコミュニティ型のゲームに強く,SNSとのシナジーを狙っています。
それに対し,エレクトロニック・アーツはどちらかといえば一人でやるゲームに強く,対人ゲームに弱いという弱点がありましたが今後はゲーム・コンペティション開催などを行うことで,コミュニティを強化する予定です。