ファクトセット・リサーチ・システムズ(FDS) 企業分析

ファクトセット(FDS)は投資・分析の情報およびツールのプロバイダーとして急成長している企業です。直近8年間で売上は2倍に増えています。(2007年→2015年)

とはいえ,ブルームバーグやトムソン・ロイターなどの大手からすれば吹けば飛ぶような弱小シェアしか持っていません。ファクトセットの競争優位は情報量というよりは分析ツールの利便性の方にあるように思います。

 

企業ホームページ

FactSet Reaserch Systems

セクター

金融セクター(ビジネス・サービス)

企業概要

ファクトセット(FDS)は1978年創業の投資情報会社です。

金融業界のプロフェッショナル(アナリスト・ポートフォリオ・マネージャー,インベストメント・バンカー)向けに,金融・資本市場に関連する各種データおよび分析ツールを提供しています。個人投資家向けの製品は提供していません。

ファクトセットの分析ツールはこんな感じのもので,一画面でニュース,チャート,出来高,セクター分析などを行うことができるもののようです。個人投資家向け製品がないのが残念です。

fds-analysis-tool

世界50カ国2976社の顧客を有しており,ユーザー数は6万2000人です。

年間購読料(“ASV”, Annual Subscription Value)売上の8割がBuyサイドの機関投資家,2割がM&Aなどを行うSellサイドの投資銀行です。

経営陣

CEO:フィリップ・スノウ

規模

従業員数:7360名
拠点:21カ国,38オフィス
地域別売上:米国が67.4%,海外売上比率が32.6%です。海外での成長率がめざましいため,海外売上比率は上昇しています。。

従業員数(地域別)

なぜか下表のようにアジア太平洋地域で大量に従業員を雇用しています。売上比率・営業利益の比率どちらを見てもアジア太平洋地域はまだまだ小さいのですが。

Employees 2015
U.S. 2238
Europe 832
Asia Pacific 4290
従事する仕事別従業員数

情報収集が半分を占め,分析ツール等の開発部隊が全体の1/4という割合です。

Employees 2015
情報収集 54%
製品開発 24%
営業・コンサル 19%
総務 3%

近況

コンテンツ増強のための買収を行っており,2000年以来10件の買収を行い,うち7件はコンテンツ・プロバイダーの買収でした。

また,ファクトセットのプラットフォームでは,追加ロイヤルティを払えば競合他社含めたサードパーティのコンテンツを取り扱うことができるようにもなっており,トムソン・ロイター,スタンダード&プアーズ,ダウ・ジョーンズ,バークレイズ,モーニングスター,ラッセルなど競合他社のデータを使えます。

地域別売上成長

全体の購読料(ASV)成長率は10年平均で10%程度ですが,米国外で見ると年率30%と健闘しています。

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市場

2015年のファイナンシャル情報市場の規模は$26.5Bで,2014年比で4.1%成長しました。

 

競合状況

競合はブルームバーグ,トムソン・ロイター,スタンダード&プアーズ傘下のキャピタルIQなどがあります。はっきり言ってファクトセット(FDS)のシェアは低いです。この5%未満の弱小仲間にモーニングスター,ダウ・ジョーンズ,ブラックロックなど多数の企業がひしめいています。

企業 2015年シェア
ブルームバーグ 32.0%
トムソン・ロイター 25.9%
キャピタルIQ 3〜5%
ファクトセット 3〜5%

一次情報のコンテンツとしての価値はコモディティ化しており,過去と比べると「情報を持っている」だけでは商売にならない時代だと考えられます。また,速報性やデータ量では大手であるブルームバーグなどの方が遙かに由比に発っていると考えられます。(Yahooなど大手への情報提供を行っているのは大抵トムソン・ロイターなどです。)

こうした厳しい競争環境の中で,ファクトセットなりの競争優位はどこかというと,顧客のニーズに合わせてオプティマイズされた分析ツールを用意するという点にあるようです。機関投資家のアナリストは日々,大量のデータ間の相関を分析したり,企業のサプライチェーンを解析したりするわけですが,そうした作業を簡便に行えるようなツールを提供しているようです。(FactSet Enterprise Data Governance)

 

シナリオ(SWOT)

機会 脅威
強み  大手との競争激化(価格競争)

オンライン上のフリー情報

機関投資家の業績向上(債権・株式市場などの高騰)

弱み  機関投資家の業績悪化(債権・株式・商品市場の低迷など)

 

最近のマーケット状況

25年チャート

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5年チャート

2015年11月の決算にてEPSが-2.0%のネガティブサプライズとなり,また市況が悪化したことから調整局面を迎えています。。$160〜$170に大きな出来高があり,上値抵抗線となっています。

fds-5yr-chart20160513

日足チャート

$140〜$160の狭いボックスレンジ(上値抵抗線が$160)で保ち合いが長く続いており,力を蓄えている段階です。

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先四半期のキャッシュフロー

配当利回りは1.3%と低いですが,EPS増加ペースに合わせて増配を行っています。自社株買いもコンスタントに実施しています。

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10年ファンダメンタル分析

10年ファンダメンタル レーダーチャート

ファクトセット(FDS)で際立っているのが,その収益力の高さです。グロスマージンが65%,営業CFマージンが30%と高く,安定しています。財務も安定しています。成長性に関してはやや鈍化が見られますが,それでもここ5年平均の営業CF増加率が8.1%であり,EPS増加率も9.6%と十分に高いと言えるでしょう。

10年ファンダメンタル 得点表

5年平均 5年スコア 10年平均 10年スコア
配当株総合評価 284 294
グロース株総合評価 非該当 非該当
グロスマージン(粗利率) 64.3% 32 66.3% 32
営業キャッシュフローマージン 28.8% 21 30.8% 21
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) 36.3% 20 31.8% 20
有機的成長率(ROE x 内部留保率) 25.7% 12 24.1% 9
無機的成長率(BPS成長率) 2.4% 0 5.8% 2
収益力評価 85 84
営業キャッシュフロー増加率 8.1% 20 9.7% 20
フリーキャッシュフロー増加率 9.6% 24 11.2% 32
EPS増加率 9.6% 21 13.3% 28
成長力評価 65 80
自己資本比率平均値 78.4% 40 78.4% 40
流動比率(流動資産/流動負債) 249.7% 40 257.1% 40
クレジット格付け 0 0 0 0
財務健全性評価 80 80
平均配当利回り 1.3% 14 1.2% 14
自社株買い利回り 2.2% 12 1.9% 8
配当金増加率 10.7% 28 22.4% 28
配当性向(増配余地) 29.1% 0 27.7% 0
株主還元評価 54 50
ブランド力 0 0 0 0
エコノミック・モート None 0 None 0
定性的評価 0 0
機関投資家比率 96.0% 8 96.0% 8
機関投資家の売買動向 -7.6% 2 -7.6% 2
インサイダーの売買動向 -1.7% 6 -1.7% 6
現在の株価 134.0% 6 134.0% 6
現在のPER(Forward) 21.27 4 21.27 4
現在の配当利回り 1.3% 8 1.3% 8
(配当+自社株買い)利回り 3.4% 8 3.4% 8
疑似債権成長率 27.0% 4 27.0% 4
直近株価評価 46 46

10年分析グラフ

ROEが

fds-10yr-analysis

優良銘柄の条件

優良銘柄の条件 結果 判定 備考
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ データ自体は価値減少(フリー情報増加のため)
分析ツールは競争力あり
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある 機関投資家の情報解析ニーズは今後も高まると考えられる。
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい  営業CFマージン,フリーCFマージンが極めて高く健全なプロポーションとなっている。
投資CFを必要とせず,売上増がフリーCF増・EPS増に直結する体質。

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