IBM(IBM) 企業分析

※米国時間1月19日 17:00にIBMの2015q4決算が発表されます。

2015Q4決算コンセンサス

決算発表の前にYahoo FinanceやNasdaq等でコンセンサスを確認しておきましょう。

コンセンサス
EPS($) $4.81
今期売上高($) $22.04B
ガイダンス (コンセンサス予想)
2015通年EPS:$14.93(IBM発表中間値より低め)(2015Q3でのIBM側の発表では以下の通り)
2015通年 Operating EPS:$14.75-$15.75
2015通年 フリーCF:YoverYでフラット

企業状況

IT関連サービス。1950年代よりメインフレームやパソコンを開発し半世紀以上にわたって強固なブランド力を築き上げてきました。しかし,マイクロソフト(MSFT)の台頭や,社内の非効率化によって1991年には創業以来初の赤字を計上するなど深刻な業績不振に陥りました。その後,ルイス・ガースナーによる改革によって2000年代には再びITサービスの盟主として復活しました。

ところが、ガースナーは企業分割を拒絶した。安易な企業分割に走るのではなく、「IBMが情報技術の最強のインテグレーターとして、高い価値を提供できる」と信じ、その道を突き進んでいく。それは、ガースナーが耳にした顧客の生の声にも合致するものだった。

まず、従来の閉鎖的な垂直統合モデル自体は手放して、サービス重視の観点からオープン化を進めた。顧客の要望に合わせて他社製品も推薦し、総合的なソ リューションを提案していくサービス事業を強化したのである。この新しいモデルは成功を収め、サービス事業だけで93年から2001年までに200億ドル 以上の売り上げ増をもたらした。全社の売り上げ増250億ドルの80%を占めたことになる。(出典:日経BP)

現在のIBMはガースナーが中興の祖として改革した後のIBMです。最近ではクラウド,ビッグデータ分析,ソーシャルメディア,モバイル,セキュリティ,人工知能といった戦略分野に力を入れています。中期経営計画では2014年に250億ドル(全売上の27%)だった戦略分野の売上を2018年には400億ドル(全売上の40%)まで拡大する目標を立てています。この目標に到達しようと思えば,年率13%のペースでの戦略分野の売上拡大が必要です。

戦略分野の強化のために,IBMは40億ドルを投じて2015年中に以下の企業を買収しました。主としてクラウド関連やデータ解析関連の企業や資産であり,中長期的に活用することを視野に入れているようです。

Clearleap クラウド・ビデオサーバー
Gravitant ハイブリッド・クラウド
Meteorix コンサルティングサービス
Weather Company’s digital assets 気象関係のビッグデータ,データ解析(気象予知)
Cleversafe オブジェクト型のストレージソフトウェア
StrongLoop オープンソースでのエンタープライズ向けS/W開発用API

 

最近のマーケット状況

IBMはウォーレン・バフェットが2010年以降重点的に投資している企業の一つです。ここ最近の14四半期連続で売上高が減少しており,市場の注目は「いつIBMの売上高が増加に転じるのか」の一点に集まっています。

IBMがStrategic Imperatives(戦略分野)と呼ぶクラウド,ビッグデータ分析,ソーシャルメディア,モバイル,セキュリティ,人工知能は,2015Q3にはYoverYで+17%の伸びを見せました。2015Q4も二ケタ成長が期待されています。まあ,まず二ケタ成長の数字を外すことはないでしょう。

戦略分野の分析

クラウド分野の競合状況

競合としては,パブリック・クラウドセクターではアマゾン(AMZN)やマイクロソフト(MSFT)が強く,IBMが優位に立っているのはプライベート・クラウドやハイブリッド・クラウドのカテゴリーです。恐らくIBMはB2Bでの企業内のクローズドなクラウドを構築するのが得意ということでしょう。なんせ,米国の超大手企業の大半がIBMのサービスを何らかの形で使っており,社内システム更新という形でクラウド導入が進んでいると考えられるからです。

恐らくIBMの戦略分野の大本命は,売上の面から言っても手堅いクラウド分野でしょう。

Hybrid-cloud-synergy

ビッグデータ分析分野

ビッグデータとしてIBMが力を入れている分野の一つが,天気予報プラットフォームです。わざわざ気象関連のビッグデータ・分析ノウハウを買収してまで力を入れています。(IBM the weather company

顧客としては保険会社,政府や自治体,エネルギー企業や公益企業をターゲットとして想定しているようです。要は天候不良による影響をリスクヘッジできるプラットフォームを提供しようと言うことでしょう。

天気プラットフォームは運輸産業や航空産業,また農作物の先物取引業者などとは相性がよいと思います。たとえば,Fedexなどでも毎年「大雪で宅配が遅れた〜。クリスマスに間に合わなかった〜。」といった騒ぎが起きていますし,天候不良で穀物価格が変動なんて日常茶飯事ですから。

ただし,まだビジネスとして始動すらしていない実験的な試みだということをお忘れ無く。

2015-ibm-weather-company-logo-clouds

ソーシャルメディア分野

ソーシャルメディア分野では,ソーシャルメディアのアクセス解析を通じた顧客の行動分析という意味で,ビッグデータ分析に似た話です。これはアマゾン(AMZN)やGoogle(GOOG)がすでに検索プラットフォーム等に組み込んでビジネス化しているので,大して目新しいことはありません。

IBMならではというのはWatson(コグニティブ・コンピューティング)の名前を銘打っている点でしょうか?(IBM Watson Analytics for Social Media)

個人的にはIBMでなくても良いと思います。

モバイル分野,セキュリティ分野

これらの分野も主としてiPhoneやiPadといったモバイル機器の専用アプリを提供するサービスを指すのだと思います。だとするならば,アップル(AAPL)やGoogle(GOOG)といったモバイルOSを提供している企業の上に乗っかる形で顧客に適したアプリを提供すると言うことなので,IBMとしての独自性を発揮できる余地があまりないと思います。また,モバイルアプリ程度なら中小ソフトハウスでも作れてしまうので以下に社内システムと統合されたパッケージだとしても高い利益マージンを得るのは難しいでしょう。

これもIBMでなくても良いと思います。

以上,IBMの戦略分野を俯瞰しましたが,IBMの決算書では呼び名が分かりづらいので注意してください。上で述べた戦略分野と,事業名は一対一対応はしていません。

・GBS(Global Business Services):いわゆる昔ながらの情報システム,ITソリューション提供事業です。
・GTS(Global Technology Services):クラウドサービスやセキュリティーなど戦略的事業が含まれています。
・Softare:顧客に合わせたアプリケーション開発やモバイルなどの戦略的事業が含まれています。

10年ファンダメンタル分析

ibm-10yr-analysis

ibm-10yr-point

優良銘柄の条件 結果 判定 備考
条件1:株主価値を重視する優秀な経営者がいる 配当・自社株買いに積極的
条件2:ワイド・モート(経済的な壕)が深い ブランド価値99点/100点 本サイト指標
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ 一部製品において○ 全社的にはまだ事業変革の途上
条件4:機関投資家の買いが入っている 機関投資家比率:60% × 個人比率が高いのが重荷
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある コア事業(GBS)は×
戦略事業は○
2018年頃まで戦略事業は成長余地あり。
コア事業の縮小と相殺か。
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい 棒グラフ  美しいバランス
条件11:営業キャッシュフローがコンスタントに増加している +1.2%(10年平均)
-2.9%(5年平均)
× 2011年以降は営業CF減少中
条件12:フリーキャッシュフローがコンスタントに増加している +1.4%(10年平均)
-3.0%(5年平均)
× 2011年以降はフリーCF減少中
条件13:EPSがコンスタントに増加している +9.3%(10年平均)
+0.7%(5年平均)
2014年通年決算がNG
条件14:グロスマージン(粗利率)が15%〜35%で推移している 40%〜50%
条件15:ROE(またはセクターによってはROA)が20%以上で安定して推移している ROA:11.5%(10年平均)
ROE:67.2%(10年平均)
財務レバレッジの効果大
条件16:財務が安定している(流動資産>流動負債) 流動資産:42.05%
流動負債:33.69%
条件17:自己資本比率が高い 10.1%(2014年末) 財務レバレッジがやや過剰
条件21:配当利回りが高い 4.0%(2016/1/15)
条件22:配当がコンスタントに増加している 年率11.8%の増配
条件23:自社株買い利回りが高い 年率平均4.7%の自社株買い
条件24:PERがコンスタントに低い 9倍〜16倍 2016年はここ10年で最低PERに近い

定性分析

IBMは定性的な条件については,99点という極めて強固なブランド力や,高配当・高自社株買いから読み取れる株主還元への意識の高さなど,投資家目線では優秀な企業だということが分かります。

一点ケチを付けるとすれば,コア事業であるGlobal Business Servicesが2011年以降足を引っ張っており,戦略分野の成長力を相殺している点です。ただし,2018年頃には戦略分野が十分に売上の柱に成長する見込です。長期的な展望としては,いかにダメージを少なく事業改革できるか期待を持って見守ればよいと思います。

定量分析

今のIBMの業績で圧倒的に良くないのが,14四半期連続の売上減です。

売上減→営業CF減少(5年平均年率-2.9%)→フリーCF減少(5年平均年率-3.0%)の負のスパイラルから抜け出せていません。EPSの原資はフリーCFであるため,フリーCFの減少が止まらなければ,今のEPS,配当,自社株買いはどれも維持することは不可能です。(借金(財務CF)という奥の手でまかなえば別ですが。)

ファンダメンタル分析のセオリーにしたがえば,株価が反転するのは営業CF,フリーCFの底打ちを確認してからになるでしょう。いかに定性的な条件が素晴らしくても,よい数字が出てくるまでは手出し無用な局面が続くと思われます。(注:既存ホルダーの方ごめんなさい。私の場合はPERや配当よりもキャッシュフローを重視するスタンスということです。)

また,目下の業績は悪いながらも,グロスマージンは50%と驚異的な高水準を維持できており,価格決定力は依然として残っています。「IBMのプライドにかけても叩き売りはしない」誇りが感じられますので,2四半期程度連続で業績の底打ちが確認されれば株価も上昇基調に戻るのではないでしょうか。

 

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