バフェット流 大量解雇銘柄に投資する

アーリーリタイヤしてウォーレン・バフェットやジョージ・ソロスのような「専業」の永久投資家になるというのは,多くのサラリーマン投資家の皆さんの共通の夢だと思います。その夢のためにも,目の前の仕事は歯を食いしばってこなし,会社にしがみつかないといけないというのが,サラリーマンとしての定めです。

一方で,投資家の一人としては,社員の大量解雇というニュースは非常に魅力的です。なぜなら社員は株主のために価値を生んでくれる金の卵を産む鶏である一方で,大飯喰らいの鶏だからです。

「会社という貴重なパイを少ない人数で分け合う」という意味では,自社株買いによる株数削減と大量解雇による社員削減は同じ効果があります。自社株買いと大量解雇の違いは,配当という形で分け前をとる株主が減るか,給料という形で分け前をとる社員が減るかの差です。

そして,自社株買いと大量解雇をこよなく愛するのがウォーレン・バフェットです。バフェットが企業のどこをチェックしているかというと「株主一人当たりの会社の資産価値が向上していること(BPSに相当)」「社員一人当たりの生産性が向上していること(利益/社員一人に相当)」の2点です。

大量解雇が自社株買いよりも効果が大きいのは,新陳代謝効果でしょう。例を挙げると,IBM(IBM)は戦略的分野への改革に取り組んでおり,2015年にクラウド分野やWatson分野に関する買収で70000人程度を新規雇用する一方で,全世界で72000人程度を解雇することに成功しました。その結果として,モルガン・スタンレー(MS)によるアップグレードに繋がりました。

また,ヒューレット・パッカード(HPQ)やシュルンベルジェ(SLB)は業績不振からですが2015年中に大量解雇していますし,ウォルマート・ストアーズ(WMT)やメイシーズ(M)もつい最近,数十〜数百店舗閉鎖や数万人規模の大量解雇を発表し,2016年に入り株価が反転しています。

良い大量解雇(Mass Layoffs)とは?

ダイエット(株数・社員数)は基本的にマーケットにとっては善です。ただし,効果の出方としては,一度の解雇の規模が大きければ大きいほど良いです。解雇というのは一度にやるから市場にショックを与え,底打ちの期待を生みます。だらだらと長期的にやっているようでは,引き当て費用ばかりが嵩む割に,ショック効果も薄れます。

大量解雇銘柄

ここ20年間の大量解雇銘柄には,次のようなものがあります。一目見て分かる通り,古参の大企業ばかりです。(若いグロース株はそもそも事業拡張するからグロース株なのであって,雇用数は純増するのが普通です。)そして,大量解雇を行う企業の経営陣は「株主>社員」という意識があるため,高配当銘柄も多いです。(AT&T(T)やIBM(IBM),ボーイング(BA),キャタピラー(CAT)など)

Date Organization Industry Number of Layoffs
Jul-93 IBM Computer 60,000
Nov-08 Citigroup Financial 50,000
Jan-93 Sears Roebuck & Co. Retail 50,000
Sep-11 United States Army Government 50,000
Feb-09 General Motors Automotive 47,000
Jan-96 AT&T Telecommunications 40,000
Dec-05 United States Air Force Government 40,000
Jan-02 Ford Motor Co. Automotive 35,000
Jan-03 Kmart Corp. Retail 35,000
Jan-09 Circuit City Stores Retail 34,000
Sep-01 Boeing Co. Aerospace/Defense 31,000
Sep-11 Bank of America Financial 30,000
Mar-10 United States Postal Service Government 30,000
Aug-09 United States Postal Service Government 30,000
Jan-02 United States Postal Service Government 30,000
Dec-98 Boeing Co. Aerospace/Defense 28,000
May-12 Hewlett Packard Co. Computer 27,000
Jan-01 Daimler Chrysler Automotive 26,000
Apr-03 Alameda School District Government 25,000
Jun-05 General Motors Corp. Automotive 25,000
Dec-08 Merrill Lynch (Bank of America Merger) Financial 25,000
Sep-08 Hewlett-Packard (EDS) Computer 24,600
Aug-01 Lucent Technologies Telecommunications 24,428
Jan-06 Ford Motor Company Automotive 23,200
Aug-02 Ames Department Stores Retail 22,000
Mar-02 Kmart Corporation Retail 22,000
Jun-05 Winn-Dixie Retail 22,000
Jan-09 Caterpillar Industrial Goods 20,000
Jan-09 Pfizer (Wyeth) Pharmaceutical 19,425

2015年に限ると以下の通りです。

2015-layoffs-update5

大量解雇の効果

大量解雇の効果をまとめると以下の通りです。

対メディア・対投資家のプレゼンス

最も直接的な効果は,会社への投資家の信頼を取り戻せることでしょう。

大量解雇を行うことで,新しい分野にシフトしていることを投資家に示すことができ,経営陣への評価も高まります。また,機関投資家によるアップグレード効果で株価が上昇することも期待できます。

対社内政治

また,一般的に大企業で古株の企業となると,衰退期に入った分野であるにもかかわらず,社内政治的に声の大きい分野というのが存在します。保守的な人材を取り除くことで,社内改革をスムーズに進めることが可能です。例えば,スティーブ・ジョブスは独裁によって,不要分野を切り捨てアップル(AAPL)を立て直しました。

大量解雇のデメリット

短期的な売り圧力

一方で,大量解雇にはデメリットもあります。何事も口コミの時代であるため,TheLayoff.comなどで「IBMに35年勤続して評価も高かったのに,突如解雇された。」といった悪評が書かれます。日本IBMの外資流の解雇のやり方は不評です。

また自社株を保有している社員が解雇されれば恨まれて売り払われます。優良な長期ホルダーを失うことで売り圧力が高まります。

この売り圧力も一見するとマイナスである一方で,なかなか出てこなかった売り物がバーゲンセールで出てくるという意味では投資家にとってはプラスです。

社員の士気低下

いつ解雇されるか分からない企業というのは,勘がよい優秀な人材は寄りつかないものです。また,社内でも士気低下・生産性の低下に繋がります。こればかりは,マイナスの影響しかありません。

解雇情報

解雇情報を眺めていてもたいていは数十〜数百人程度でサプライズの無いものが多いですが,たまに数千人〜数万人規模の解雇情報が出てきます。Mass Layoffs, Major Layoffs で検索すると直近の解雇情報がいろいろ見られるため便利です。

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