スナップ・オン(SNA) 企業分析
安定成長銘柄のスナップ・オン・インコーポレイティッド(SNA)について取り上げます。
スナップ・オン(SNA)は,工具メーカーとして世界的有数の企業です。近年,米国では車は「買い換えるもの(使い捨て)」から「修理して長く使うもの」という意識に変わりつつあります。(後述のデータ参照)そのお陰で,自動車メンテナンス産業は活況を呈しており,オライリー・オートモーティブ(ORLY)で部品を購入して,スナップ・オン(SNA)の工具を使って車のメンテナンスを行うといったことが盛んに行われています。
スナップ・オンの工具は永久保証を謳っており高価なだけあって顧客はプロが中心です。料理人が包丁にこだわるのと同じく,プロは道具にこだわるためスナップ・オンの高い品質・保証体制・ブランド力を活かしたマーケティングは成功を収めています。
将来的に見た場合,自動車文化が廃れることはまずあり得ないですが,自動車の構造自体は変化していくことが考えられます。例えば,エンジンはモーターに置き換わり,メカニカルな部品が電子部品+マイコンに置き換わるといった具合です。現在は過渡期に相当し,車の修理のうち半数以上の箇所は専用の診断ツールを使わないと不具合箇所が特定できないといわれており,昔と比べてそれだけ複雑化しています。こうしたニーズを巧くとらえ,新製品をリリースすることでスナップ・オンは好業績を維持しています。当然時代について行けなければブランド価値が剥落するわけで,継続的に市場ニーズの変化にキャッチアップしていくためにR&Dが要求されます。
目次
企業ホームページ
セクター
資本財(工具)
企業状況
1920年創業の老舗企業で,プロ用の高級工具を販売しています。ソケットレンチの発明を始め,レンチの新製品が軍などのコア顧客のニーズにマッチし発展しました。2000年代には買収により欧州の老舗ブランドを多数参加に収めました。車両店舗による「バン・セリング」と無期限保証でマニアに高いブランド力を誇っています。
1939年以降配当を出していますが,減配や無配に転じたことはありません。(ただし,増配率は極めて低いですが。)安定した経営基盤を築いています。
保有ブランド
セグメント
主なセグメントは以下の三つで,それぞれが30%程度の売上を占めています。
(1) スナップオン・ツールズ・グループ
主な顧客は自動車修理工です。
(2) コマーシャル&インダストリアル・グループ
主な顧客は,プロのエンジニア(航空産業やプラントエンジニアリングなど含む)です。
(3) リペアシステムズ&インフォメーショングループ
主な顧客は,自動車修理ショップなどです。
成長市場
米国での平均的な自動車の使用年数は1980年には7年間だったものが,2015年には11.5年間まで伸びています。この背景としては,自動車自体の性能・品質の向上による耐用年数の向上もありますが,基本的にはエコ意識の高まりを始めとして,長く使おうという意識が普及したということが挙げられると思います。不況を機に一時的に買い控えをしているというようなものではなく,長期的なトレンドです。
こうした耐用年数・使用年数の延長は,新車販売台数にはネガティブですが,自動車メンテナンス産業としてはポジティブです。スナップオンは当然このトレンドの追い風を受けます。
競合状況
主要な競合は日本のマキタ,エマーソン・エレクトリック(EMR),スタンレー・ブラック&デッカー(SWK),インガソール・ランド(INGERRAND)などが相当します。
マーケットシェア
ソケット等の工具や故障診断ツールに関しては圧倒的なシェアを保持しています。
最近のマーケット状況
5年チャート
ここ5年間見事に押し目無しで上昇していましたが,2016年に入ってから大きな調整を迎えました。
日足チャート
直近ではカップ型のベースを形成しています。
先四半期のキャッシュフロー
直近株価評価
資産の成長率に対して株価は割高だと思います。(PERは15.4倍とそこまで高くはないですが。)
現状 | スコア | 満点 | |
機関投資家比率 | 86.0% | 15 | 20 |
機関投資家の売買動向 | -2.8% | 3 | 12 |
インサイダーの売買動向 | -14.4% | 3 | 12 |
現在の株価(資産に対する割安度) | $152.8 | 0 | 20 |
現在のPER(Forward) | 15.43 | 10 | 20 |
現在の配当利回り | 1.6% | 8 | 16 |
39点 | 100点 |
10年ファンダメンタル分析
10年ファンダメンタル レーダーチャート
高い成長を維持しています。これは自動車メンテナンス産業全般の地合いの良さに加えて,欧州ブランドの買収戦略が当たっているためです。
10年ファンダメンタル 得点表
営業CFマージンはやや低めですが,グロスマージンは48%とこの手のメーカーとしては非常に高いです。高いブランド力・マーケットシェアに守られているお陰だと言えます。2008年のリーマンショック以降,売上・利益共に打撃を受けましたが,それでも赤字になることはなく着実な成長を続けています。
5年平均 | 5年スコア | 10年平均 | 10年スコア | 満点 | |
配当株総合評価 | 287点 | 267点 | 500点 | ||
グロスマージン(粗利率) | 48.0% | 40 | 46.6% | 40 | 40 |
営業キャッシュフローマージン | 11.1% | 0 | 9.7% | 0 | 40 |
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) | 18.9% | 10 | 18.1% | 10 | 20 |
収益力評価 | 50点 | 50点 | 100点 | ||
営業キャッシュフロー増加率 | 31.0% | 40 | 9.4% | 20 | 40 |
フリーキャッシュフロー増加率 | 44.1% | 32 | 10.5% | 32 | 32 |
EPS増加率 | 11.5% | 28 | 17.0% | 28 | 28 |
成長力評価 | 100点 | 80点 | 100点 | ||
自己資本比率平均値 | 48.9% | 30 | 45.0% | 30 | 40 |
流動比率(流動資産/流動負債) | 262.3% | 40 | 238.8% | 40 | 40 |
クレジット格付け | 0 | 0 | 0 | 0 | 20 |
財務健全性評価 | 70点 | 70点 | 100点 | ||
平均配当利回り | 1.7% | 14 | 2.6% | 21 | 28 |
自社株買い利回り | 0.0% | 4 | 0.0% | 4 | 16 |
配当金増加率 | 11.1% | 28 | 7.4% | 21 | 28 |
配当性向(増配余地) | 26.9% | 21 | 28.9% | 21 | 28 |
株主還元評価 | 67点 | 67点 | 100点 | ||
ブランド力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 60 |
エコノミック・モート | 0 | 0 | 0 | 0 | 40 |
定性的評価 | 0点 | 0点 | 100点 |
10年分析グラフ
ここ10年でじわじわと利益率が上昇しています。売上についても今後も安定した成長が見込まれます。
優良銘柄の条件
優良銘柄の条件 | 結果 | 判定 | 備考 |
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ | 無期限保証が大きな差別化ポイントですが,機能的に特別というわけではありません。 | △ | |
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある | 軍・自動車・航空産業の裾野産業と言えます。 | ○ | |
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい | EPS>フリーCFとなっている年が多いのが懸念点です。 | △ |