テサーロ(TSRO) 企業分析

余命4ヶ月と宣告されたら…テサーロのニラパリブを投与すれば余命を1年ほど買えるかも知れません。

テサーロ社は2010年創業の比較的若いバイオベンチャーです。創薬研究開発部門に特化しており,ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)などのメガファーマに対して薬の知財をライセンス提供するビジネスモデルです。(売上の96%がライセンス売上です。)大手からすれば株主からの売上増プレッシャーを受ける中でパイプラインはのどから手が出るほど欲しいものですし,新薬開発は10年の歳月と100億円以上の莫大な費用が掛かる上に承認を得られるとも限りません。そこでライセンスフィーを払ってでもライセンスを買うわけです。

業種は違いますが業態は先日ソフトバンクが買収したARM社に近いですね。ARM社は半導体の開発・設計情報をテキサス・インスツルメンツ(TXN)などのOEM先に提供し,相手先のブランドで販売しています。そのため,ARM社は自社で製造設備などの固定資産を保有する必要が無く,無形資産とのれんの塊のような企業です。

バイオベンチャーという企業形態自体がテサーロのような知財特化型が多いため珍しい訳ではありませんが,強力なパイプラインを有するベンチャーはギリアド・サイエンシズ(GILD)のような大量のキャッシュを保有する大手の買収ターゲットにされます。そうした『思惑』を読みながら投資する楽しみがある企業の一つです。

ただし,ろくに売上も利益も出てない青田刈り企業ですので,よほどの根気強く見守れる方以外にはおすすめしません。

企業ホームページ

TESARO

セクター

ヘルスケア

企業概要

テサーロ社は米国のバイオファーマ企業です。2008年1月にMGIファーマがエーザイに買収された後,旧MGIファーマの経営陣が2010年に独立して,テサロを設立しました。現在のテサーロCEOロニー・モウルダーほか理事会の面々の多くがMGIファーマからの移籍組です。

2017年には化学療法に伴う悪心嘔吐予防薬ヴァルビ・ローラピタント(VARUBI Rolapitant)や卵巣癌・前立腺癌抗がん剤ニラパリブ(Niraparib)などの上市を予定しています。

経営陣

CEO:レオン(ロニー)・モウルダー

規模

従業員数:100名

近況

2016年8月現在は,嘔吐予防薬ローラピタントはFDA承認申請(Registration)のフェーズまで進んでいます。

卵巣癌抗がん剤ニラパリブはフェーズ3です。

tesaro-pipeline-2016Aug

製品概要

ローラピタント(VARUBI rolapitant)

フェーズ:IV(静脈投与薬)がFDA承認申請中

フェーズ:経口薬はFDA承認済み。販売中。

化学療法に伴う悪心嘔吐予防薬ローラピタントは,脳内の嘔吐中枢にあるニューロキニン(NK-1)受容体に対して活性があるとされています。強力な抗がん剤による悪心や嘔吐は癌患者の85%が経験するほどポピュラーな副作用です。嘔吐によって脱水症状や体重減少,栄養失調などに陥るケースも多いようです。

そのため,経口薬と一緒に嘔吐予防薬を合わせて処方することで,患者の負担を減らすことが治療効果の改善のためにも必要不可欠です。ローラピタントはほかの制吐剤との併用も可能です。

ブランド名としてはローラピタントではなく,ヴァルビ(VARUBI)です。

http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm460838.htm

市場規模としては,化学療法を受ける患者数は米国内で500万人に上っており,テサーロのパイプラインの中では最も広範に売れそうな製品となっています。

tesaro-pipeline-phase-2016Aug

ニラパリブ(Niraparib)

フェーズ:フェーズ3,新薬承認を2016年Q4に計画

ニラパリブはPARP阻害剤と呼ばれる抗がん剤です。PARP阻害剤は一部の遺伝子変異が見られる乳がんおよび卵巣癌に対して有望な抗がん活性が示されています。癌とは異常なDNA修復能力を持つ悪性新生物ですが,このDNA修復を助けるPARPタンパク質の活性を阻害することでがん細胞の増殖を阻止する効果があります。

類似の薬品としてはアストラゼネカ(英国)のOlaparib,アッヴィ(ABBV)のVeliparibなどのPARP阻害剤があります。これらはどれも,DNA修復箇所のPARPタンパク質を捕まえて不活性化するタイプの薬品ですが,テサーロのNiraparibはその中でも強力な抗がん作用(がん細胞に対する毒性)があるということで期待の大きい製品です。

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ニラパリブは現在臨床のフェーズ3まで進んでおり500名以上の患者にて臨床試験を行い,効果が認められています。ニラパリブの主な副作用は血液凝固が遅くなることと,貧血です。まあ問題ないでしょう。

製品化までもうあと一歩ですね。

卵巣癌の怖さ

さて,卵巣癌(Ovarian cancer)はなぜ致命的な癌だと言われるのでしょうか?

それはやはり体内奥深くにあり,乳がんのように自分で触診して分かるようなものではないからです。検査によって卵巣癌が発覚した頃には時遅し。80%の患者は確定診断時にステージ3まで進行してしまっており,発覚から死亡までの期間が平均でわずか3.8ヶ月〜5.5ヶ月(卵巣癌の種類による)と極めて短いものでした。

ニラパリブを投与された患者の平均余命は,5.5ヶ月→21.0ヶ月,3.8ヶ月→12.9ヶ月と癌の種類によりますがだいたい8ヶ月から15ヶ月ぐらい癌の進行を遅らせることができています。根本的な治療薬ではないですが,余命4ヶ月と診断された患者からすれば大きな医療の進歩だと思います。

ニラパリブが効果を持つのは以下の円グラフの右上のBRCA系の部分なので全卵巣癌患者の約30%と言ったところでしょうか。米国では毎年22,000名が新たに卵巣癌と診断され15,000名が死亡しています。(日本では卵巣癌と診断されるのは10,400名,死亡は4,800名。出典:国立がんセンター)

市場規模としてはそのうちの3割と考えると,決してターゲット患者数は多いわけではなく,新薬で爆発的に売上が伸びそうと言うわけではありません。しかし,余命わずかの患者を助けることのできる貴重な薬と言うことで応援投資がぴったりな銘柄だと思います。

ovarian-cancer-type

研究開発状況

 

R&D費用を見る限りローラピタントの開発は2013年時点でピークを過ぎており,2015年,2016年は抗がん剤のニラパリブやImmuno-oncology Platformに経営資源を集中させていることが読み取れます。

テサーロの2013年〜2015年の資本支出内訳

Year Ended December 31,
2013 2014 2015
Rolapitant Expenses
Acquired in-process research and development $  — $

5,000

$  —
Research and development

42,685

33,017

25,799

Rolapitant total

42,685

38,017

25,799

Niraparib Expenses
Acquired in-process research and development

1,940

900

 —
Research and development

15,742

46,694

60,982

Niraparib total

17,682

47,594

60,982

TSR-011 Expenses
Acquired in-process research and development  —  —  —
Research and development

3,524

6,014

4,313

TSR-011 total

3,524

6,014

4,313

Immuno-Oncology Platform Expenses
Acquired in-process research and development  —

19,000

2,000

Research and development  —

5,726

20,384

Immuno-Oncology Platform total  —

24,726

22,384

Personnel and Other Expenses

13,774

26,974

43,912

Total $

77,665

$

143,325

$

157,390

 

 

競合状況

制吐剤(NK-1受容体阻害剤)市場

メルク(MRK)のEMENDやHelsinnとエーザイのAKYNZEOが主な競合製品です。メルクの決算資料によるとEMENDは$53.5M(53億円)を売り上げています。経口薬と静脈注射薬の両方を出していますが,静脈注射薬が80%以上を占めると言われています。

(※そのため,現在FDA承認申請中の静脈注射タイプのローラピタントは重要と言うことです。現在,テサーロは経口薬タイプのローラピタントしか製品化できていないので,上市すれば約5倍の売上が見込めます。)

emend akynzeo-10

卵巣癌抗がん剤(PARP阻害剤)市場

2014年に承認されたアストラゼネカ(英国)のLYNPARZA(Olaparib)が現時点では主要な競合製品です。アッヴィ(ABBV)のVeliparibやClovis OncologyのRucaparibなど多数のPARP阻害剤が開発中ですが,フェーズ1からフェーズ3までさまざまであり,その中ではテサーロはフェーズ3終盤であり進んでいる方です。

こうした新薬の開発競争激化は投資家にとってはありがたくないものですが,患者のことを考えるとありがたいですね。

シナリオ(SWOT)

機会 脅威
強み 新薬のFDA承認
メガファーマによる買収
弱み 新薬の承認却下
競合製品の新薬承認

 

最近のマーケット状況

5年チャート

tsro-5yr-chart20160816

日足チャート

2016年6月30日のプレスリリースにて,ニラパリブの臨床フェーズ3がうまくいっていると報じられたことで株価が2倍以上に高騰しました。出来高が$50〜$80までは真空地帯ですので,しばらくは$80〜$90の値幅で出来高をこなしつつ地合固めをしていくと思います。

tsro-daily-chart20160816

10年ファンダメンタル分析

10年ファンダメンタル レーダーチャート

バイオベンチャーでまだまだこれからの企業ですが,2017年以降はこれまで開発してきた製品が続々と上市される見込みであり,売上の柱ができつつあります。5年〜10年スパンで見守りましょう。

10年ファンダメンタル 得点表

5年平均 5年スコア 10年平均 10年スコア
配当株総合評価 非該当 非該当
グロース株総合評価 170 150
グロスマージン(粗利率) 0.0% 0 0.0% 0
営業キャッシュフローマージン 0.0% 0 0.0% 0
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) -136.4% 0 0.0% 0
有機的成長率(ROE x 内部留保率) -136.4% 0 0.0% 0
無機的成長率(BPS成長率) -2.7% 0 -1.3% 0
収益力評価 0 0
営業キャッシュフロー増加率 69.3% 40 30.1% 40
フリーキャッシュフロー増加率 70.2% 32 30.4% 32
EPS増加率 30.0% 28 14.0% 28
成長力評価 100 100
自己資本比率平均値 47.0% 30 0.0% 10
流動比率(流動資産/流動負債) 1080.4% 40 253.3% 40
クレジット格付け 0 0 0 0
財務健全性評価 70 50
平均配当利回り 0.0% 7 0.0% 7
自社株買い利回り -31.3% 0 -14.6% 0
配当金増加率 -100.0% 0 -100.0% 0
配当性向(増配余地) 0.0% 0 0.0% 0
株主還元評価 7 7
ブランド力 0 0 0 0
エコノミック・モート None 0 None 0
定性的評価 0 0
機関投資家比率 105.0% 8 105.0% 8
機関投資家の売買動向 -1.9% 2 -1.9% 2
インサイダーの売買動向 0.0% 8 0.0% 8
現在の株価 386.0% 0 386.0% 0
現在のPER(Forward) N/A 0 N/A 0
現在の配当利回り 0.0% 4 0.0% 4
(配当+自社株買い)利回り -12.5% 0 0.0% 4
疑似債権成長率 0.0% 4 0.0% 4
直近株価評価 26 30

10年分析グラフ

2016年以降やっと売上が立ちつつあります。それでも赤字の解消はまだまだ先であり,新株発行によって当座の資金をやりくりする必要があります。おそらく2020年頃までは黒字化できないのではないでしょうか。

バランスシートとしては,圧倒的に流動比率が高いです。それもそのはずで,社員数100名でほぼ研究開発に特化しており,製造設備は持たずサードパーティーへのライセンス供与するだけだからです。

まだまだ製品開発に費用が掛かる時期ですが,ベンチャー・キャピタルからまだまだ資金は引っ張れている状況ですので資金繰りの懸念はないと思います。

tsro-10yr-analysis

優良銘柄の条件

優良銘柄の条件 結果 判定 備考
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ 新薬=差別化可能 (○)
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある 抗がん剤・制吐剤どちらも高齢化社会では成長市場
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい ろくに売上・利益が出ていない ×

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