ユニバーサル・ディスプレイ(OLED) 企業分析

ユニバーサル・ディスプレイ(OLED)は有機ELに使われる世界最大手の燐光材料メーカーです。といっても,工場を持たず,ファブレスでの素材販売と,大量に抱える知的財産に基づくライセンス収益をコアとする高度に知識集約型の企業です。

決算 2017 Q1

2017年Q1の業績はYoY +450%というとんでもない滑り出しでした。

「2017年当初に想定したよりも有機EL市場が急拡大しており,売上のガイダンスを$260Mから$280Mへと引き上げる。YoY成長率も30%から40%への引き上げる。」(2017年5月4日)

という発表からも分かる通り完全にアナリストのコンセンサス予想を上回る内容でした。

昨年のエヌビディア(NVDA)のポジティブサプライズ連発も素晴らしかったですが,今年はユニバーサル・ディスプレイが目が離せません。

oled_2017q1_earnings

項目 2016 Q1 2017 Q1 YoY
売上 総計 $29.7M $55.6M +87%
(素材) $24.3M $46.6M +92%
(ロイヤルティー) $5.3M $7.0M +32%
営業利益 $2.5M $12.1M +384%
純利益 $1.9M $10.4M +447%
EPS $0.04 $0.22 +450%

チャート

2017年2月(2016年Q4決算発表)で$75の高値をブレークアウトしたのちしばらくぐずついていましたが,2017年5月(2017年Q1決算発表)で$110の大台を付けています。出来高も通常の5倍に迫る勢いで買われており,目下売り圧力は全くありません。ファンダメンタルも絶好調である上に,相場全体(S&P500, ダウ平均,ナスダック)の環境もよく,さらにテクニカル的にもカップ・ウィズ・フラットベースと3拍子揃って盤石です。

oled_20170505_weekly oled_20170505_daily

有機EL

有機ELとはテレビや照明機器などで使用される発光材料のことで,近年になり液晶の時代を担う材料として急成長しています。最近では新型のMacBook Proでも有機ELが採用され,さらに新型のiPhone8では有機ELの採用が囁かれたりなど市場が急速に拡大しています。

もともとは1987年にイーストマン・コダック(KODK)が最初の有機ELを発明しました。その後,各社が有機ELを開発しましたが栄枯盛衰が激しく,事業撤退や買収によって当初の企業の多くは姿を消し,現在は住友化学,出光興産,メルク(ドイツ),ダウ・デュポン(DOW),LG,サムスンなどへと吸収されています。

類似の技術である液晶との違いは,液晶は背面のLED照明を液晶素子で偏光や透過させることで色を出すのに対し,有機ELは素子自体が発光するため構造がシンプルであり,薄型にしたり曲面に沿わせたりすることも可能な点です。特に照明機器のように意匠が必要な機器や,ウェアラブル端末のようにフィット感が重要になる機器に向いています。

最終製品としては,サムスン電子のスマートフォン・ギャラクシーシリーズや,同じく韓国LGのテレビや照明機器などが有名です。依然として韓国企業が有機EL市場の命運を握る構造は変わっていません。有機EL自体が技術的に優れたニッチで終わってしまうのか,アップルの参入によって爆発的に市場拡大するのか大きな転換点に差し掛かっています。

覇権

現在は東軍(液晶メーカー)と西軍(有機ELメーカー)のどちらが将来的にテレビ・ディスプレイ・照明市場の覇権を巡って争っています。

有機ELメーカー同士は憎き敵である液晶潰しという旗のもと団結しており,事業提携やライセンス提携に積極的であり,競合間での厳しい争いというのは起きていません。おそらく今後数年はテクノロジー覇権を巡る争いに忙しく,有機ELメーカー間の関係は競合というよりは連携が重視されるでしょう。

ただし,その後有機ELが順調に市場拡大して行くと話が変わってきます。

「材料+知財」の川上を抑えるユニバーサル・ディスプレイと,最終製品を製造販売するサムスン・LG・アップルなどのWin-Winの関係が,収益のぶん取り合戦である訴訟合戦へと突入する可能性があります。

最近ではクアルコム(QCOM)とアップル(AAPL)の争いがヒートアップしていますが,市場が大きくなれば知財戦争が起きるのは自然の摂理です。ユニバーサル・ディスプレイとしては,無風状態の今のうちに網羅的な知財パイプラインを獲得しておく必要があります。

参考:曲面を形作ることのできる有機ELの特性を活かしたテレビと照明

LG-OLED-flex-tv-medimg_oledlight_03

企業ホームページ

Universal Display(OLED)

決算:2017年1Q

セクター

セクター: 情報技術

業種 : 電子装置・機器・部品

企業概要

ユニバーサル・ディスプレイ(OLED)は1985年にペンシルバニアで操業し,1995年に上場しました。

有機ELの材料メーカーとして大手というだけではなく,燐光材料に関する特許を多数保有しており,近年も競合他社から知的財産権を多数買収しています。

有機ELを発明したイーストマン・コダック社(KODK)はすでに有機EL事業から撤退しており,サムスンやLGに特許を譲渡しており,現時点では「有機ELの基本特許といえば,ユニバーサル・ディスプレイ(UDC: Universal Display Corporation)」と言える状態になっています。

例えるならば,電波業界におけるインター・ディジタル社(IDCC)が,3Gや4G(LTE)などの無線電波技術の知的財産権を大量に保有し,ライセンス収益を事業の核としているのに似ています。インター・ディジタルの場合,売上の9割がライセンス収益という知財の塊ですが,ユニバーサル・ディスプレイも徐々にそうした知財路線へと舵を切っています。

すなわち,有機EL市場が拡大すれば,直接自社製品が売れなくても,ライセンス収益という形で市場拡大の恩恵を受けることのできる事業体質へ。このストーリーが実るのか,それとも弾けるのか投資家としては目が離せません。

もちろん,このような(ユニバーサル・ディスプレイにとっては)どう転んでも儲かる状態というのは,材料の供給を受けたりライセンス供与を受ける立場のサムスンやLGからすると面白くありません。イーストマン・コダックの事業撤退後の知的財産は,サムスンやLGがかき集めており,現時点ではユニバーサル・ディスプレイの優位性は揺るがないものの,数年後には知財を巡る環境が変わっていることが予想されます。

現在保有している特許は2020年ごろから特許切れを迎えることから,今後数年間は収穫期が続きます。2020年以降は新たな特許を獲得して補充していく必要があります。

経営陣

CEO:スティーブン・エイブラムソン

規模

従業員数:203名

わずか200名で数百億円相当を売り上げるというのは,優れた経営戦略と事業ポジショニングの賜物であり,有機ELというニッチ市場においてはワイドモートです。

半ば棚ぼたではありますが,ニッチであるがゆえに過当競争を嫌った富士フィルムやBASF,イーストマン・コダックなどと言った競合はすでに事業撤退しています。

そうした中で,ユニバーサル・ディスプレイ寡占化された市場における残存者利益という果実を貪ることができており,再び市場への参入企業が増えてくるまでは追い風が続くとみて良いでしょう。

近況

2012年には,富士フィルムから1200件の特許を買収しています。主として燐光材料や有機ELを使用したデバイスに関する特許です。ユニバーサル・ディスプレイの近年の知財買収案件の中では最大規模のものでした。

2016年にはドイツの化学メーカー大手BASFから500件に上る有機ELに関する知財を買収しています。特許の中心は,燐光材料に関するものであり,ユニバーサル・ディスプレイのもともと持っていた3600件に500件がプラスされて,4100件の特許件数となっています。

知財というのは,製薬メーカーが新薬をパイプラインと呼ぶのとほぼ同じと考えれば良いでしょう。ヘルスケア産業における医薬品原薬=有機EL産業における燐光材料であり,意識的に川上(材料)から川下(デバイス)までの特許を包括的に抑える戦略です。

oled_patent_growth

特許の出願・取得件数に成長率というものがあるとすれば,ユニバーサル・ディスプレイは件数ベースで10年で5倍の特許を獲得しています。パテント・グロース株だと呼んで差し支えありません。

セグメント

ユニバーサル・ディスプレイの売上の中心は依然として素材そのものですが,ライセンス収益を拡大する戦略が功を奏しておりライセンス収益は6年間で20倍にも増加しています。(下のグラフの赤棒)

これも現在のスティーブン・エイブラムソンCEOらの経営陣(2008年〜から現職)の長期的な戦略の賜物でしょう。

素材というのは市況の影響を受けて売上が乱高下するものですが,ライセンス収益は自社単体の売上ではなく,市場全体の拡大の恩恵を受けることができるため(市場が拡大し続ける限り)確実に成長し続けます。

いずれはライセンス収益の方がコア,素材販売の方がおまけ,となって行くと思いますが,そのためには研究開発への投資と,知的財産買収への投資を続ける必要があります。ただ,これまでの事業拡大の経緯を見る限り,経営陣のテクノロジー選球眼・ビジネス戦略眼は確かなものがあり,安心して見ていられるでしょう。(もちろん,景気循環の影響を大きく受けることには変わりありませんが,単なる素材メーカーではないという点が強みとなります。)
oled_sales_segment

 

市場と競合

燐光材料の市場ではユニバーサルディスプレイは世界最大手ですが,日本の出光興産やダウ・デュポン(DOW)などの競合に晒されており,必ずしも材料メーカーとしての優位性は確実なものではありません。

下図でユニバーサル・ディスプレイは左端のUDC(Universal Display Corporation)と表記されています。通称はUDC,ティッカーシンボルはOLEDであり異なります。

oled_material_market_2016

 

ただし,これら競合との関係は単なる敵対的なものではなく,これらの多くの企業と燐光材料製造に関する事業提携やライセンス供与を行なっています。特にLGや出光などからは多額のライセンスフィーを得ています。

One thought on “ユニバーサル・ディスプレイ(OLED) 企業分析

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です