ウォルト・ディズニー(DIS) 企業分析

ウォルト・ディズニー(DIS)は世界最大のエンターテインメント企業です。ディズニーはメディア・テーマパーク・映画など多角的経営を行っているだけあって,10年分のアニュアルレポート分析には大変苦労しました。

最近の株価は低迷気味で,個人的には買いのチャンスだと思います。狙っている方は参考にしてください。

企業ホームページ

The Walt Disney Company

Walt Disney Company 2015 Annual Report

セクター

一般消費財(メディア)

企業状況

放送・映画・音楽・ゲーム製作・テーマパーク運営など幅広く展開する総合エンターテインメント企業です。ミッキー・マウスほか人気キャラクターを活かし,映画・グッズ販売・テーマパーク集客などの相乗効果を利用して稼ぐビジネスモデルです。定期的にテーマパーク入場料を値上げすることで売上を伸ばしてきましたが,昨今は古参客からの批判も強くなってきています。

かねてより買収を重ねて事業ポートフォリオを強化することで有名です。ピクサーやマーベルなどを傘下に収めています。また,2015年にはルーカス・フィルムの映画「スター・ウォーズ」の最新作を公開し興行成績は好調です。また,2016年には上海ディズニーリゾートが開演予定です。

事業の主力はメディア・ネットワーク部門であり,ディズニー・チャンネル,3大TVネットワークのABCやスポーツ専門放送のESPNも保有しています。最近では売上の1/4を占めるESPNの契約者数が減少しており,業績の足を引っ張るのではないかという懸念から売り込まれています。

また,北米での売上高が77%を占める内需型企業です。(欧州12%,アジア太平洋8%,等)
世界的に展開しているテーマパーク・映画のおかげで知名度は抜群ですが,事業のコアをよく見ると北米のメディア・コングロマリットだと言えるでしょう。

従業員数は2015年10月の時点で18万5000人に上ります。

セグメント

1.メディア・ネットワーク部門

ABC,ESPN,ディズニーチャンネルなどのテレビやラジオなどを含みます。収入源としては,視聴者が支払う視聴料(affiliate fee),広告主が支払う宣伝費(ad sales),テレビ番組販売の売上(program sales)などで構成されています。

その中でも柱となっているのはやはり視聴料でしょう。人気スポーツチャンネルであるESPNなどでは莫大な広告宣伝収益が入ってきますが,固定収入という意味では視聴料の方が大きいです。また,ディズニーの制作するコンテンツは,ネットフリックス(NFLX),アマゾン(AMZN)に卸したり,DVDで販売したりしています。

ESPN

米国最大のスポーツチャンネルであり,NFLフットボールやカレッジフットボール,NBAバスケットボール,MBAメジャーリーグ,ウィンブルドン,マスターズゴルフなどそうそうたるスポーツ番組放映権を持っています。要するに米国のお茶の間の主役なわけです。

2015年以降,視聴契約者数が減り,業績への影響が不安視されています。個人的にはESPNの保有するコンテンツ自体は強力なので,今後も莫大な富を生み続けると思います。ただし,従来通りの「視聴料」に依存した体制は見直す必要が出てくると思います。そういう意味では過渡期ですね。

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ディズニーチャンネル

ディズニーチャンネルは,163カ国で34の言語に翻訳されて放映されています。アニメ番組だけかと思いきや,子供向けに算数などを教える教育番組的ディズニー・ジュニアやiOS,Androidで聞けるディズニーラジオなどのチャンネルも持っています。

ABC

 

ABCはニュース番組などを放映しているケーブルテレビ局です。ABCの収益の大半は広告宣伝費です。(ad sales)広告宣伝費の特徴として,季節柄,秋に高収益となり,夏には収益が低下する傾向があります。

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2.テーマパーク・リゾート部門

日本でおなじみなのはオリエンタルランド経営のディズニーランドの方でしょう。直営テーマパークとしては,フロリダのディズニー・ワールド・リゾート,カリフォルニアのディズニーランド・リゾート,ハワイのディズニーリゾート&スパ,ディズニー・パリスなどがあります。日本の場合は直営ではなく,知的財産を使用しても良いというライセンス契約ですね。

3.スタジオ・エンターテインメント

こちらも日本でおなじみの映画部門です。ディズニーが傘下に収めるクリエイティブ・スタジオは,ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ,ピクサー,マーベル,ルーカスフィルム,タッチストーンなどがあります。

代表的な作品は,
ピクサー:トイ・ストーリー,ファインディング・ニモ,カーズ
マーベル:スパイダーマン,ファンタスティック4,X-Men
ルーカスフィルム:スターウォーズ
などです。

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競合状況

ディズニーの主力事業であるメディア部門にとって最大の脅威は,個別の企業と言うよりはアメリカ人のライフスタイルの変化です。かつては余暇と言えば,テレビの前に座ってスポーツ番組を見ていた人々が,タブレットでYoutubeなどの動画サイトを見るようになったり,ゲームをして過ごすようになりました。

あえて言うならメディア部門の主要な競合は,MTVなどを運営するViacom(VIA), タイム・ワーナー(TWC), 21st Century Fox (FOX), CBS (CBS),コムキャスト(CMCSA)などが該当します。

10年間のセグメント別売上・利益の分析

セグメント別売上

セグメント別の売上高で言うとメディア・ネットワーク部門が約半分を占めています。

さらにメディア・ネットワーク部門の中をよく見てみると,2008年までは広告宣伝費(Advertising)が過半を占めていましたが,2009年以降は視聴料(Affiliate Fees)が最も大きな割合を占めるようになりました。

これはスポーツチャンネルESPNの契約者数が順調に増加してきたことによるものです。2006年〜2015年までの10年間のAffiliate Feesの平均成長率は年率8%でした。

一方で,広告宣伝費は頭打ちとなりここ10年ほとんど成長していません。

ディズニーの決算でアナリストが一番注目するのがESPNの契約者数ですが,その理由はこの数字からも明らかです。Affiliate Feesが頭打ちになるとなれば,業績に直結してしまうわけです。

セグメント別利益

営業利益の約6割をメディア・ネットワーク部門が稼ぎ出しています。ディズニーの花形部門である映画やディズニーランドは全体の2割ずつ程度しか稼げていません。メディア部門の高収益体質におんぶにだっこ状態です。

特に2008年頃の不況期に着目してください。映画やテーマパークへの出足が遠のき収益が圧迫された一方で,メディア部門はほとんど無傷でした。それもそのはずで,不況だからと言って,ケーブルテレビを解約してスポーツを見ないようにする人なんてほとんどいないからです。

そういう意味で,ディズニーにとってメディア部門は「社内のディフェンシブ部門」と言えます。逆にテーマパークや映画,コンシューマー向け製品は景気や人気の変動を受けやすい「循環部門」と言えます。

設備投資と減価償却費

設備投資・減価償却費ともに,テーマパーク・リゾート部門が8割程度を占めています。稼ぎ頭であるメディア・ネットワーク部門はほとんど投資が不要ですが,テーマパーク・リゾート部門はそうはいきません。土地の仕入れや設備の更新など莫大な投資が必要です。

ただし,ディズニーのブランドイメージは映画やテーマパークで築き上げられたものです。そういう意味では,たとえ費用がかかったとしてもテーマパークに設備投資を行うのは戦略として正しいです。ロイヤリティの高いファンを獲得するための布石として,また「のれん」価値を高める投資として有効です。

最近のマーケット状況

長期チャート

ディズニーがABC(およびESPN)の親会社であるCapital Cities Communicationを買収したのは20年前の1996年です。当時は米国史上最大の買収金額である$19Bでの買収でした。今となってみれば当時のABC,ESPNがディズニーの営業利益の6割をたたき出しているわけであり,先見の明の光る投資となりました。

当時のCEOであるマイケル・エイスナー(Michael Eisner)は,ABCの陰に隠れていたESPNの価値を見抜いており,ディズニーのテーマパークで大々的にESPNを宣伝しつつ,海外展開も行いました。現在ではESPNの米国外から得られる視聴料収入が$11Bに上っています。

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5年チャート

2011年以降株価は4倍に上昇しましたが,昨年からは停滞しています。

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日足チャート

出来高からすると$90あたりが直近の抵抗線となります。

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先四半期のキャッシュフロー

配当は利回り1.4%と少ないですが,利回りで3%近い自社株買いを行って株主還元をしています。

10年ファンダメンタル分析

10年ファンダメンタル レーダーチャート

圧倒的なブランドで定性評価は高いですが,ワイドモート企業である割にグロスマージンは20%前後とあまり高くなく,収益性には疑問符がつきます。ただし,成長力という意味では営業CF,フリーCFともに安定成長を続けており,自社株買いの効果も相まってEPS増加率は10年平均で11%を超えており優秀です。

10年ファンダメンタル 得点表

5年平均 5年スコア 10年平均 10年スコア
配当株総合評価 339 304
グロース株総合評価 非該当 非該当
グロスマージン(粗利率) 21.0% 16 19.4% 8
営業キャッシュフローマージン 20.0% 14 17.5% 7
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) 14.7% 5 14.2% 5
有機的成長率(ROE x 内部留保率) 11.7% 3 11.4% 3
無機的成長率(BPS成長率) 6.5% 2 5.7% 2
収益力評価 40 25
営業キャッシュフロー増加率 9.3% 20 6.1% 20
フリーキャッシュフロー増加率 14.1% 32 3.4% 16
EPS増加率 14.2% 28 11.6% 28
成長力評価 80 64
自己資本比率平均値 53.1% 40 53.1% 40
流動比率(流動資産/流動負債) 113.8% 10 109.0% 10
クレジット格付け 16 15 16 15
財務健全性評価 65 65
平均配当利回り 1.2% 14 1.2% 14
自社株買い利回り 2.2% 12 1.9% 8
配当金増加率 35.2% 28 21.0% 28
配当性向(増配余地) 20.7% 0 19.8% 0
株主還元評価 54 50
ブランド力 92 60 92 60
エコノミック・モート Wide 40 Wide 40
定性的評価 100 100
機関投資家比率 63.0% 4 63.0% 4
機関投資家の売買動向 -1.4% 2 -1.4% 2
インサイダーの売買動向 -0.4% 6 -0.4% 6
現在の株価 180.6% 0 180.6% 0
現在のPER(Forward) 16.52 8 16.52 8
現在の配当利回り 1.4% 8 1.4% 8
(配当+自社株買い)利回り 4.0% 12 4.0% 12
疑似債権成長率 12.8% 4 12.8% 4
直近株価評価 44 44

10年分析グラフ

ESPNの成長に足並みを揃えつつ売上・利益を伸ばしてきました。ただし,足下の収益性という意味では,EPS>フリーCFという逆ざや状態になってしまっており,高EPSを維持し続けられるかは四半期ごとの決算で確認していく必要があります。

利益率は2010年以降着実に改善を続けており,このトレンドをどこまで引っ張れるか楽しみです。

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優良銘柄の条件

優良銘柄の条件 結果 判定 備考
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ ディズニーブランドは圧倒的。
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある エンターテインメント市場は,発展途上国にも拡大の余地大きい。
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい  2014年,2015年はEPS>フリーCFでした。やや投資CFが多く,不安の残る業績です。

2 thoughts on “ウォルト・ディズニー(DIS) 企業分析

  • 2016年5月10日 at 7:56 PM
    Permalink

    面白い記事でした

    Reply
  • 2016年5月10日 at 7:56 PM
    Permalink

    面白い記事でした。ありがとう

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