地球温暖化30年戦争

ランダムな動きに相関を無理矢理見いだして「理解した気になる」のは投資ではもっとも避けるべき悪弊です。私も気がつけば陥ってしまう罠ですが,こうした認知バイアスは投資家に留まらず,政治家や科学者やアクティビスともついつい嵌ってしまうようです。

地球温暖化の30年戦争

いまだに科学者の中でも結論の出ていない政治的イシューとして『地球温暖化とCO2排出量』に相関があるのかというテーマがあります。

投資ブログなのになぜ温暖化の話を書くのかと言われそうですが,エクソン・モービル(XOM)やシェブロン(CVX)をはじめとするエネルギー産業にとっての最大の頭痛の種が『エネルギー産業悪玉論(地球温暖化の原因は化石燃料の使いすぎ)』問題だからです。

古くからエネルギー株に投資されている方はご存じの通りエネルギー産業バッシングは1979年代にさかのぼります。NASAの宇宙物理学者ジェームズ・ハンセンが温室効果ガス悪玉論を唱え始めました。(下のリンクは2012年にTEDにて講演を行うジェームズ・ハンセン)

言ってみれば,アル・ゴアをはじめとする環境保護団体とエクソン・モービルをはじめとするエネルギー産業の30年戦争なわけです。環境保護団体の根拠となったのが以下のチャートです。たしかに産業革命以降,人類の活動によるCO2排出が激増しているのが目にとまります。また,それと同じタイミングで気温が上昇しているようにも見えます。

   この二つの動き(CO2と気温)の間に相関を見いだすか否か?

この問いは,投資家が日々抱えている「売上増で株は上がるか?」「利上げで為替はどう動くか?」といった問いと同じく,科学者としての力量を試すための踏み絵のような問いです。

 

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議論をフェアにするために私の立場を先に明らかにしておくと,
・CO2の排出量増加により大気中のCO2が増加しているのは明白
・地球全体が温暖化はしているかどうかは分からない(ランダムな動きすぎて分からない)
・北極・南極の温暖化はおそらく進んでいる(氷河の溶解により判断)
・CO2の排出と極地温暖化の相関があるのかは分からない
・したがって,CO2排出量規制は温暖化対策としては直接効果があるとは考えていない
・よって,CO2排出権取引はもってのほか(日本は不利益を被るだけのため)
・ただし,CO2排出を抑制する技術開発が化石燃料の消費削減に繋がるのは明らかなので,CO2排出量の削減目標は国策でやるべき
という感じです。私は日本在住なので,環境保護よりもエネルギーの安定供給の方が国策的に優先されるべきだというベースに立っていることをご理解ください。

予測は科学者でも難しい

温室効果ガス悪玉論を提起したジェームズ・ハンセンは1988年にNASAとともに「ハンセンモデル」と呼ばれる将来の気温予測シナリオを発表しました。今日ではCO2排出量と気温の実測値データが得られているので,それを重ねると次のチャートになります。

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結果はご覧の通り,ハンセンの提示したベストケースシナリオ(CO2が1988年比で大幅に削減されるというもの)よりもさらに実測気温は低いものとなりました。少なくとも今日の時点では,CO2と気温の相関は一見すると弱まっているように見え,環境保護団体は学問的にもロビー活動的にも苦しい立場に置かれています。

以上のことから分かるように,将来の予測(今回のケースは株価の予測ではなく地球科学的な予測ですが)は極めて難しく,一方に賭けるのはリスキーだと言うことです。

環境保護団体は負けたか?

本記事の最初に「ランダムな動きに相関を無理矢理見いだすのはNG」と書きましたが,現時点ではハンセンやIPCCは政治的目標達成のためにこうした愚を犯し,逆にエネルギー産業は学問的に勝利したように見えます。しかし,予想というのは常に外れるものであり,今後数年で急激に気温上昇が見られれば一気に環境保護団体が勢いづき,エネルギー産業への規制強化が行われるかも知れません。

こうした未来予想の勝負には完全なる勝利も完全なる敗北もないものです。

エクソン・モービルやシェブロンの経営陣はリスクを完全に排除するのは不可能だと理解しており,「企業としての生き残りのために最善を尽くす」ために,地球温暖化問題で優勢な立場にある現在も学者を雇い,研究やロビー活動を休まずに続けています。いずれ再び猛威をふるうであろうバッシングに備えて…。

教訓

環境保護団体とエネルギー産業の30年戦争から,投資家として学べる点がいくつもあります。

・予測は不完全なものである(NASAの研究者グループでさえ大きく気温予測を外した)
・ランダムな動きに相関を無理矢理見いだそうとしない(ハンセンシナリオより)
・仮説を過信すべきではない(株で言うと,所有バイアス。自説をひいきしてはいけない)
・短期的に仮説が実証されたとしても,未来永劫続くと考えてはいけない
・平時もリスクに警戒し続けること(エクソン・モービルは平時でもあらゆるリスクを洗い出し,リスクを低減することに力を注いでいる)

現在のS&P500は新高値を達成し続けており油断が蔓延していますが,こうしたタイミングでこそ警戒を怠らず,相場環境の変化を機敏に捉えたいものですね。

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