バフェット流『配当×成長』複利リターン率早見表

配当株がよいか成長株がよいかという議論を定量的に行うために複利リターン率早見表を作りました。(本記事末尾)

ウォーレン・バフェットは配当と成長のベストミックスを計算する術をどうも持っているように感じられてなりません。私のようなアマチュアではバフェットほどの勘が働かないので,手を動かして計算してみて複利の効果,さらにはバフェット流のベストミックスの極意を見極めようと思います。

計算条件は以下の通り。

複利リターン計算条件

  • 計算期間は10年とする
  • 配当は必ず年末に再投資し,株式購入に充てる(配当株は再投資しないと成長株に負ける)
  • PERは初年度から10年目まで20倍固定とする(バリュエーション不変)
  • EPS(一株あたりの利益)成長率とDPS(一株あたりの配当)成長率は等しいものとする(たこ足配当を避けるため)

たとえば,初期配当利回り3%,EPS/DPS成長率5%,株価$100の銘柄に,初期投資額$10,000で投資すると以下のような計算結果になります。

EPS/DPSは同じ成長率なので配当利回りは3%で変わらず,PERも20倍固定なので,EPS成長率と同じ成長率で株価も上昇するという仮定で計算しており,10年目のリターンは2.2倍となります。株式数は1.33倍に増えており配当再投資の効果が多少出ていますね。

投資年数 0年目 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
利益 $5.00 $5.25 $5.51 $5.79 $6.08 $6.38 $6.70 $7.04 $7.39 $7.76 $8.14
株価 $100.0 $105.0 $110.3 $115.8 $121.6 $127.6 $134.0 $140.7 $147.7 $155.1 $162.9
配当 $3.00 $3.15 $3.31 $3.47 $3.65 $3.83 $4.02 $4.22 $4.43 $4.65 $4.89
配当利回り 3.00% 3.00% 3.00% 3.00% 3.00% 3.00% 3.00% 3.00% 3.00% 3.00% 3.00%
年末時点資産
株式数 100株 103 106 109 112 115 118 122 125 129 133
獲得配当 $300 $324 $350 $378 $408 $441 $476 $514 $555 $600 $648
総資産 $10,300 $11,124 $12,014 $12,975 $14,013 $15,134 $16,345 $17,652 $19,065 $20,590 $22,237

早見表

このような計算をマトリックス化して,「初期配当利回り」×「成長率」を軸にとって本記事の最後に早見表としました。リターンとは元本が何倍になったかを%表記しています。

バフェット流の配当利回り×成長率を探る

バフェットは年平均20%のリターン(Birkshire HathawayのBPSベースで1965-2015 CAGR 19.5%)を稼ぎ出しており,10年リターンに直すと「1.2の10乗=619%」あたりがバフェット流の基準値となります。下の早見表を見てもらうとごく一部の成長企業でなければとても無茶な数字ですね。ですが,バフェットがそういうベンチャーキャピタル的な投資をしたとは聞いたことがありません。

この37年間にわたって平均20%という異常な高リターンの背景にはからくりがあります。それは,バークシャー・ハサウェイ傘下には,GEICOのような自動車保険やジェネラル・リなどの損保を含んでおり,そうした保険会社の負債(フロート)をレバレッジとして活用しているためです。フロートは保険加入者を債権者とする,低金利の長期借入金みたいなものですから。フロートはバフェットの株主への手紙の中でもしばしば言及される富(キャッシュフロー)の源泉です。

では,バークシャー・ハサウェイの財務レバレッジはというと,ざっくり言って平均2倍程度(株主資本≒負債)だと思います。よって,財務レバレッジを割り引いたリターンは,20% ÷2=10%として再計算すると,10年リターン: 2.59倍あたりがバフェット流の目標値となります。

そこで,259%前後を黄色く塗ってみました。

ずばり,これがバフェット流の配当×成長投資のベストミックスラインです。この斜めのラインを覚えておいてください。

どんな銘柄がバフェット流の基準を満たしているかは企業分析で調べていただくとして,私たち個人投資家とバフェットの大きな差が明らかになりました。

それはレバレッジの差です。レバレッジによるリターンも『複利効果』で効くことは皆さんもご存じだと思います。それは定量的に言えば,1.1の10乗=2.59倍(ノーレバ)と1.2の10乗=6.19倍(レバ2倍のバフェット)の差です。バフェットのコバンザメをして同じ銘柄を同じ価格で買っても,バフェットとは10年で2.38倍もの差が開きます。

バフェットは手堅い保守的な銘柄を選んでおり,「なぜそんな銘柄であんなリターンが???」という疑問があると思いますが,その魔法の鍵はレバレッジです。

残念なことに,私たち個人はバフェットを目指す以上,バフェット以上のリスクを取って,高配当または高成長な企業に投資する必要があります。それが難しいなら投資ファンド会社を自分で興して融資を募る(財務レバレッジをかける)という作戦がありますが,日本在住ならこちらの方がより難しいと思います。結局は,どういう形でリスクを取るかです。バフェットはリスクの取り方がうまい(財務健全かつ成長性の高い保険会社を買収した)ことが”バフェット流モート”になっているのでしょう。

バフェット流をマスターするには身を削る覚悟でリスクを取って相場に臨まないといけませんね。頑張りましょう。

複利リターン早見表

10年での複利リターンを「初期配当利回り」×「成長率(EPSとDPSが同率で成長すると仮定)」でマトリックスにしています。表内のリターンの数値は元本を含みます。(元本が何倍になったかを%表記)

黄色セル:バフェットの目標とする水準(レバレッジ2倍を前提)
青色セル:個人投資家がバフェット同等のリターンを得るために目標とすべき水準(レバレッジなし)

初期配当利回り
0.00% 1.00% 2.00% 3.00% 4.00% 5.00% 6.00% 7.00% 8.00% 9.00% 10.00%
成長率(EPS&DPS) 0.00% 100% 112% 124% 138% 154% 171% 190% 210% 233% 258% 285%
1.00% 110% 123% 137% 152% 169% 188% 209% 231% 256% 283% 312%
2.00% 122% 136% 151% 168% 186% 207% 229% 253% 280% 309% 342%
3.00% 134% 150% 166% 184% 205% 227% 251% 278% 307% 339% 373%
4.00% 148% 165% 183% 203% 225% 249% 275% 304% 335% 370% 408%
5.00% 163% 181% 201% 222% 246% 272% 301% 332% 367% 404% 445%
6.00% 179% 199% 220% 244% 270% 298% 329% 363% 400% 441% 485%
7.00% 197% 218% 241% 267% 295% 326% 360% 397% 437% 481% 529%
8.00% 216% 239% 265% 292% 323% 356% 393% 433% 476% 524% 576%
9.00% 237% 262% 290% 320% 353% 389% 429% 472% 519% 570% 626%
10.00% 259% 287% 317% 350% 386% 425% 468% 514% 565% 621% 681%
11.00% 284% 314% 346% 382% 421% 463% 510% 560% 615% 675% 740%
12.00% 311% 343% 378% 417% 459% 505% 555% 609% 669% 733% 804%
13.00% 339% 374% 413% 454% 500% 550% 604% 663% 727% 796% 872%
14.00% 371% 409% 450% 495% 544% 598% 656% 720% 789% 864% 945%
15.00% 405% 446% 490% 539% 592% 650% 713% 782% 856% 937% 1024%
16.00% 441% 485% 534% 587% 644% 706% 774% 848% 928% 1015% 1109%
17.00% 481% 529% 581% 638% 700% 767% 840% 920% 1006% 1099% 1201%
18.00% 523% 575% 632% 693% 760% 832% 911% 997% 1089% 1190% 1299%
19.00% 569% 625% 686% 752% 824% 902% 987% 1079% 1179% 1287% 1404%
20.00% 619% 679% 745% 816% 894% 978% 1069% 1168% 1275% 1391% 1516%
21.00% 673% 738% 808% 885% 969% 1059% 1157% 1263% 1378% 1503% 1637%
22.00% 730% 801% 877% 959% 1049% 1146% 1251% 1365% 1489% 1622% 1767%
23.00% 793% 868% 950% 1039% 1135% 1240% 1353% 1475% 1607% 1751% 1905%
24.00% 859% 941% 1029% 1124% 1228% 1340% 1461% 1593% 1734% 1888% 2053%
25.00% 931% 1019% 1113% 1216% 1327% 1448% 1578% 1718% 1870% 2035% 2212%
26.00% 1009% 1102% 1204% 1314% 1434% 1563% 1702% 1853% 2016% 2192% 2381%
27.00% 1092% 1192% 1302% 1420% 1548% 1686% 1836% 1997% 2172% 2359% 2562%
28.00% 1181% 1289% 1406% 1533% 1670% 1818% 1979% 2151% 2338% 2539% 2755%
29.00% 1276% 1392% 1518% 1654% 1801% 1960% 2131% 2316% 2516% 2730% 2962%
30.00% 1379% 1503% 1638% 1784% 1941% 2111% 2295% 2492% 2705% 2935% 3182%

4 thoughts on “バフェット流『配当×成長』複利リターン率早見表

  • Pingback: 『ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則』感想 – 永久投資家の米国株投資物語

  • 2016年11月19日 at 10:19 AM
    Permalink

    バフェット流の分析、いつも参考にさせていただいています!
    最近、バフェット自身のリターンとレバレッジについて、詳しく知りたいと思い、諸々調べています。バフェット程のレバレッジは難しくても、レバレッジを1,2~1,4倍(シーゲル参考)かけて、無理な配当成長銘柄を出来るだけ避けられないかと思っています。
    このリストに、バフェット銘柄やダウ構成銘柄などを配置したら、どんな分布になるのか興味が湧いてきました。
    すみません、ただの感想です…。

    Reply
    • 2016年11月19日 at 8:00 PM
      Permalink

      CADWAKIさん
      コメントありがとうございます。
      バフェットの資金運用の原則は『安く資金を調達して,手堅く運用する』というシンプルなものです。
      バフェット銘柄というと,部分保有企業(ウェルズ・ファーゴなど)と完全子会社化した企業がありますが,
      子会社化した企業を見ると小魚というよりは大魚になった企業が多く,
      (上振れも含めて)業績の変動が小さく,先が読みやすい企業を好んでいます。
      やはり①資金源(低利の融資元)と②投資先(業績の波)の両輪をコントロールしたというのが,
      バフェットがここ40年間大きな失敗を避けて資産を増やし続けてきた最大のポイントだと思います。
      個人ではバフェット流を目指すなら素直にバークシャー(BRK.B)を買うか,
      バフェットより不利な条件で銀行から融資を引き出して投資に回すか,ですね。リスキーですが。
      ちなみに,本多静六は銀行の預金を担保に融資を引き出し,それをレバレッジとして使っていたらしいです。
      私の財産告白

      Reply
      • 2016年11月20日 at 9:58 PM
        Permalink

        詳しい説明、ありがとうございます。
        半年ほど前から、ひたすら投資本を読み漁り、自分なりの投資哲学を作りたいと思い勉強中です。
        私も本多静六さんの本を読んで、4分の1貯蓄法を実践しています。(ほとんど2分の1に近いですが)
        ただレバレッジに関する記述は見落としていました。かなりの高利で借りていたのですね。そこまでの自信を持って投資できる本多静六さんは、やはりすごい投資家ですね。

        バフェットモートに関する記事、ありがとうございます。
        投資って楽しいですね。。。

        Reply

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