投資家目線での『先進テクノロジーのハイプ・サイクル』

今回は新しいテクノロジーのネガティブな話です。

ガートナー社は,技術(特にITに関して)の成熟度・採用度・社会への適用度を示すハイプサイクルの図を毎年公開してくれています。

「ハイプ(hype)」とは誇大広告・過剰宣伝・ごまかし・いんちきという意味で,一過性のテクノロジーブームに乗せられて社会が一喜一憂するさまをおおざっぱにモデル化したものです。※呼び名としては”サイクル”ではなく,ハイプ・カーブとかハイプ・ウェーブが妥当です。

株で言うところのPERマルチプル(EPSに対する期待度で株価が高値まで買われる)をチャートにしたようなものだと考えればよいでしょう。

ハイプサイクルの5段階

ハイプ・サイクルとは以下のようなサイクルだとされます。

hype-cycle-model

  1. 黎明期:期待バブルで株価高騰
  2. 過度な期待のピーク期:期待倒れで失望売り
  3. 幻滅期:がっかりして忘却の彼方に
  4. 啓蒙活動期:やっと普及のめどが立ち再発見される
  5. 生産性の安定期:実用的な技術として普及し妥当な株価に落ち着く

こう一般化してみると,レオナルド・ディカプリオのキャリアの浮沈とか,高校球児がプロ野球に入ったあとの扱いとかとも大して代わり映えしません。

俳優とかアイドルとかスポーツ選手とかスタートアップとかテクノロジーなどは全てメディアを通じて社会に情報発信されますが,その際に本来は10年スパンの長期的視野で評価すべきものまで,一過性のニュースのように取り上げてしまうところに問題があります。

また,各企業のCEOも在任期間中に他社に先駆けて目新しいことをしたいという名誉欲が強い人物が多く,現場技術者が実現までに時間が掛かると判断しているようなテクノロジーでも,トップダウンでロードマップに載せて社外公表してしまうケースが少なくありません。あと,大学教授なんかも誇大広告が大好きです。小保方さんの名前を出すまでもなく・・・。(本人たちはビジョナリーなつもりなので周りの助言にも耳を貸しません。)

人工知能とかフィンテックとか自動運転とかは将来性が高いとはいえ,”短期的な”期待は裏切られる覚悟で相場に立つ必要があります。

ハイプ・サイクルとテクノロジーの具体例

さて,過去のガートナーが発表しているハイプ・サイクルを見てみましょう。本記事の最後に列挙した画像は2009年から2016年までのハイプ・サイクルの推移です。

たとえば,電子書籍リーダーは2009年にはピーク期でしたが,2011年に幻滅期,そして2016年現在は生産性の安定期に推移したと考えられます。アマゾン(AMZN)のキンドルやその他タブレット端末の爆発的な普及という追い風があったことも勝因の一つでしょう。

こうした成功例がある一方で,3Dプリンターは2009年は黎明期でしたが,2012年にピーク,2015年には幻滅期と推移しています。現在の3Dプリンター市場は企業向けにはほぼ飽和したと考えて良い状況だと思います。樹脂成形品のプロトタイプ(少量生産の試作品)などは,量産用の金型を起こす場合に比べると遙かに短納期でコストが安いという優位性があるためです。一方,一般家庭という意味ではニーズの掘り起こしや使い方の発見に至っておらず,家庭にはほぼ浸透できていません。幻滅と言って良いでしょう。

投資家目線でこの期待値の上下をどう利用するかですが私が注目したのは以下の点です。

  • 一筋縄に普及する技術は少ないことに注意する
    ※例外として電子書籍リーダーなどありますが,音声翻訳などの技術はここ20年ぐらい話題に上れど実用化されていません。対処法として,自分の周囲に普及している技術や自分自身が愛用している技術だけを投資対象に選ぼうと思います。
    「夢」「希望」はプライスレスなので,そうした期待度が過剰な企業の株は買わずに見て楽しむ観葉植物みたいな扱いとします。
    当然,トレンドに乗り遅れるリスクはありますが,それは覚悟の上でということで。
  • 技術の推移を定点観測する
    まさにガートナーがやってくれていることですが,あまり「鳥の目線」で俯瞰的に技術自体の進展や,市場への普及率について考えていませんでした。どちらかと言えば,「虫の目線」で対競合シェアなどに着目していたと言えます。
    今後やるべきは,技術誌などをチェックして,それぞれの技術が何年後にどれぐらいの規模まで普及しそうかというのを調べようと思います。これは1年に1回とか,半年に1回とかのペースでやった方がいいですね。
  • 各企業の収益化戦略を把握する
    前回の人工知能の記事にて各社の収益化戦略が異なると書きました。
    そのときも感じたのですがテクノロジーとは食材なわけです。食材(技術)を調理して料理(製品)として店で出すためには,それぞれのシェフのアイデアと力量が試されます。
    特にハイテク企業では顕著ですが,勝ち馬は一握りでありババ抜きのようなものなので,なおさらCEOの腕の良し悪しは見極めていきたいと思います。
    当然,CEOの腕だけではなく,各企業の伝統的なビジネスモデルというモートも背景として把握しないといけないですが。

ハイプ・サイクル一覧(2009年~2016年)

2009
hype-cycle-2009

2010hype-cycle-2010

2011hype-cycle-2011

2012hype-cycle-2012

2013hype-cycle-2013

2014hype-cycle-2014

2015
hype-cycle-2015

2016

hype-cycle-2016

 

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