配当・自社株買いを評価する

自社株買い

日本企業と比べて米国企業は株主への利益還元意識が高く,フリーCFを使って自社株買いを行います。一方,経営陣からすると自社株買いは配当に比べると「おまけ」「ボーナス」みたいな扱いであり,配当ほど重視すべきでないという意見もあります。(ジェレミー・シーゲル『株式投資 第4版』)

果たして私たち個人投資は,自社株買いをどう評価すればよいのでしょうか?自社株買い単体で評価しても意味がないので,その他の株主還元方法と比較しましょう。

一般的には,株主への還元方法は3種類あります。

(1) 配当(フリーCFを株主にそのまま返す)
(2) 自社株買い(フリーCFを使って株主資本比率を減らす。)
(3) 株価上昇(営業CFを全て投資CFとして使うことで企業の資産価値を増やす)

企業の成長ステージによって(1)〜(3)のどれが適すかは変化します。それぞれの違いを見てみましょう。

自社株買いは景気の影響を大きく受ける,配当は景気の影響を受けない

配当も実は景気の影響を受けます。配当と自社株買いで大きく異なるのは,「景気変動によるボラティリティが,圧倒的に自社株買いの方が大きい」ということです。

dividendbuyback

この15年チャートを見ても分かる通り,S&P500の配当利回りは2%固定だと見なせます。増えたりも減ったりもほぼしません。(リーマンショックの頃,株価が大幅に下落したため一時的に配当利回りが4%近くになっていますが,これは一時的な現象なので長期トレンドから外れた例外とします。)棒グラフの部分が配当の原資ですが,15年で約2倍になっていますが年ごとの変動はほぼありません。好景気でも不景気でも配当原資は変動しないとうことです。企業経営者は「不景気であっても配当原資には手を付けない」のがボトムラインだとしてたたき込まれているのです。業績が悪いからと言って脱税しないのと同じです。一方景気がよいからと言って,将来の空手形を切るような大型増配もしないのです。

以上のことから,「配当はサラリーマンにとっての基本給」のようなものだと考えれば良いでしょう。

一方,自社株買いの方は棒グラフの方が大きく変動しています。2007年と2009年を比較すると約-75%もの大幅な予算カットです。その後業績が回復企業の乗ると,再び自社株買いを積極的に行うようになりますが,最大で75%カットされる恐れが常にあると言うことです。

つまり,「自社株買いはボーナス,しかも,歩合制で変動大」と考えてください。

ただし,自社株買いの良い点は,歩合制ボーナスと同じく経営者の判断で+20%や+50%などの上乗せが可能だということです。一方,不況のときはゼロでも文句言えません。ここ数年の株式市場では「自社株買い=当たり前の権利」のように捉えているふしがありますが,経営者にとっては吹けば飛ぶようなものです。

無配当戦略

上場してまだ間もないグロース株の大半は無配当で,営業CF,財務CFを全て成長のために再投資します。例を挙げると,アマゾン(AMZN)やアンダーアーマー(UA)などが相当します。無配当で自社株買いも行わないとなると,株主にとって酷い会社に思えますが,実際はそうひどいものでもありません。

老舗企業で言うとバークシャー・ハサウェイ(BRK-B)なども無配当ですが,配当を出すよりも,その金を資産価値増大に振り向け,配当利回り以上の株価上昇利回りを実現しています。よって,「無配当は将来の株価上昇で利益を還元するストックオプション」と言えます。そして,こうしたストックオプション企業は,配当・自社株買いのような直接還元は行いません。行うフェーズにないという方が近いですが。

ただし,どんな企業であっても永久に資産価値を増大させることは不可能です。どこかの時点で資産価値増大(投資重視)をあきらめ,直接還元せざるを得ない時期が来ます。アップル(AAPL)やギリアド・サイエンシズ(GILD),スターバックス(SBUX)はすでに2%程度の配当を出していますが,配当企業に仲間入りしたが最後,再び無配当の高成長戦略に戻ることはほぼあり得ません。退屈な大型企業の誕生です。

そして万が一,配当企業に仲間入りした後の100%減配が発生した場合は,経営者がダメダメか,あるいは経営者の経営能力を超えたトラブルが発生したと考えて間違いありません。どちらにせよ売りです。

株主還元3種類比較

(1) 配当=基本給
(2) 自社株買い=ボーナス
(3) 無配当=ストックオプション
に近いと分かりました。私たち個人投資家としては,(1)〜(3)の判断材料をごちゃまぜにしないことが大切です。

特に(1),(2)と(3)の間には大きな隔たりがあります。

(1) 配当=基本給
(2) 自社株買い=ボーナス
———— 一度渡ると戻れない三途の川 —————
(3) 無配当=ストックオプション

皆さんもExcelやGoogle Spreadsheetなどで企業分析をしていると思いますが,配当の有無ではっきり戦略を切り分けてください。

配当企業(配当ありという意味)の評価

配当企業は,配当利回り・自社株買い利回り・成長余地の三点から業績およびリターンを判断します。

本記事のタイトルにある配当・自社株買いの評価法ですが,
(1) 配当は景気の影響を受けない
(2) 自社株買いは景気の影響を受ける
ことから,私の場合は次のような総合利回り判定を行っています。

総合利回り=配当利回り+(好況期の自社株買い利回り x 60%)

※ 60%という数字は,現在の好況期を100とすると不況期は25(約1/4)になるため,平準化しようとして出した数字です。期待値として,好況期の自社株買い利回りの60%(逆の見方をすると,不況期の自社株買い利回りの200%)は期待できるというわけです。

無配当企業(配当無し・高成長企業)の評価

今回の記事の範疇ではないので省きますが,グロース株の場合は,私は売上高と営業CFで企業の価値を判断します。(フリーCFやEPSは使える場合もあるが,使えない場合もある。)それらの数字が順調にコンセンサス以上の成長を見せるかどうかが最重要ポイントです。

逆に,売上高と営業CFがコンセンサスを下回るようなら,夢のような成長ストーリーが完結したと判断して売りです。その後,自社株買いをしたり配当を出したりするような中成長企業に移り変わっていきますが,全く別の評価基準となりますね。

 

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