逃げ足

今更ながら春山昇華さんの「現金100%へ至る記録」を読んで感銘を受けました。

相場観

私は現在の相場に対し暴落は来ないという基本スタンスながらも,相場のちゃぶつき具合に対してはかなり警戒ししています。今までの経験上,直観でかなりまずいと感じる相場が今年に入ってから少なくとも3回ありました。

結果論としては,そうした大きな下げ相場は,単なるミスター・マーケットのくしゃみであり,先週もS&P500,Nasdaq共に新高値を更新して波乱なく終わっています。いってみれば不安は杞憂に終わったわけですが,果たして不安を無視していいものか,それとも直感に従うべきか,かなり悩みました。

投資家というのは事前に定めたルールに従って行動します。セクター選択,売り買いのタイミング,ポジションサイズ,増し玉などを決めて動くわけですが,それでも実際の相場に取り組むと,ルールが通用しないと感じることも多々あります。

それは相場にはルールとして明文化できない部分が多いからです。

例えば,小型株が軒並み6%〜10%ぐらい下落した先日のロシアゲートの日も悲惨な下げでした。長年投資をやっていても,こうした複数銘柄の同時下げに出くわすのはそう多くありません。こうした異常事態はミスター・マーケットからのメッセージであり,無視すべきではないというが私の考えです。(結果論として,くしゃみだとしても。)

驚異の判断速度

そうした中,春山昇華さんのようなベテラン投資家は,4月3日〜4月6日までのわずか4日間の間に,持っていた米国株100%のポジションを解消し,100%現金化したとのこと。これは為替の急激な円高と株安という,二つの相場が発するシグナルを,地政学リスクの上昇だと判断しての行動です。

もちろん,その後,相場が復調したことから考えると,不要な現金化だったかもしれません。

しかし,プロ級の投資家は相場の異常事態を絶対に無視しないということが分かっただけでも大きな収穫でした。

要するに「不安なら現金100%にして,先に行動した後に頭を冷やして様子を見る」「ポジションを持った状態で思考停止にならない」という2点を徹底しているのです。

判断を常に微修正し続ける

もう一つ春山昇華さんの投資判断で素晴らしいと思ったのは,判断の細やかな更新です。

当初,4月4日の時点では,「株ポジション100%→60%、現金40%を決断した」そうです。★判断修正1

しかし,翌4月5日には「日本株、後場に入り様相が悪化した。これを見て、現金を40%→60%にすることを決めた」とのこと。★判断修正2

さらに4月6日には「日本株、大幅に下がった現金比率をさらに引き上げようと決めた。80%か、100%か、、まだこの時点では決めていなかった★判断修正3

そして,4月6日の夜になると「NYが開いた。そして、100%現金化を決めた★判断修正4

という経緯を経て,全部の株ポジションを売り払っておられます。またこの一連の行動を振り返って,「3月中旬の高値で撤退すべきだった」という感想も。

こうした相場の変調時に,判断を変更・修正し続けるというのは誰でもできることではありません。

超予測

この「判断を変更し続ける・微修正を続ける」というのは,実は超予測者と呼ばれる天才的な予測能力を持つ人々にとっては当たり前の行動です。

超予測者とは誰を指すのかというのは『超予測者 不確実な時代の先を読む10カ条 (早川書房) 』という本に詳しいですが,人口の上位2%程度しか存在しない,卓越した予測能力を持つ人々を指します。彼らはコンスタントに精度の高い予測を出し続けることが予測コンテストの中で実証されており,まぐれ当たりではなく,「予測能力」を持つとされています。

予測の精度が高い人というは,一度自分の下した判断に固執せず判断を日々変更することに躊躇しません。彼らは大局的に事実・現象を捉え,さらに予測の精度を高めるために情報蒐集を続け,自分の判断の誤りを見つけて修正することに執念を燃やし続けられる人々です。1%〜5%単位で予測の精度を微修正するほどです。

投資をする上でも超予測者の行動パターンは役立ちそうだと思っていましたが,実際に春山昇華さんの行動を見ていると見事にできていますね。正直,唖然とさせられました。

戦略は戦術に勝る

改めて投資をする上で感じることがあります。

長期投資や永久投資というのは戦術(tactics)であり,戦略(strategy)ではありません。

私にとっての投資戦略とは,絶対に損をせず,また損をするにしても絶対に大損せず,小さな儲けの機会も逃さず,永久に相場に立ち続けることです。

これを唯一の戦略とするなら,長期投資・配当投資・永久投資・短期投資という戦術へのこだわりは捨てるべきだと感じました。今までは薄っすらとですが,ウィリアム・オニールやバフェット,ジェレミー・シーゲルなどの投資法をミックスしてやってきましたが,こうした著名な投資術でさえも所詮は手段です。日々,戦略を守るために,新しい効果的な戦術(投資法)をトライし続けないといけません。

そして,それ以上に重要なのが,相場に対する素直な感性です。

人は誰しも判断を間違います。それは個人投資家だろうとバフェットだろうと,あるいは相場に立つ全員が同時に判断を間違うかもしれません。ですが,そうした「誰がどれぐらい判断を間違ったのか分からない」ときは,清く「自分が間違っている可能性」を認めて,手数料を払って相場を降りる素直さが必要だということです。

春山昇華さんはベテランでありながらも,頑固にポジションにしがみつく様が微塵も感じられません。

こうした姿を見ていて,相場で生き残る逃げ足というのは一朝一夕で身につくものではなく,超予測者並みの柔軟で高速な思考回路があった上で初めて身につくと感じた次第です。

下げ相場から無傷で逃げる技術は買いのタイミングを図る以上に難しいですが,春山昇華さんを参考にして今年中に身に付けたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です