徹底調査VS直感,レバレッジ,長期保有VS損切り

①徹底調査
②レバレッジ
③長期保有

というと株式投資のスタイルと思われるかもしれませんが,『ピーター・リンチの株で勝つ』の中の住宅投資と株式投資の比較の中で書かれている”住宅投資が優れている点”のことです。

ウォール街の誰もが言っているように”家はよいもの”なのである。したがって株式投資を始める前に,家を買うことをあなたは考えるべきである。家は究極的にはほとんど誰でも成功する投資の一つである。

(中略)

住宅投資に関しては天才的な人が,株式投資になると全くどうしようもなく下手であることも珍しくない。住宅の場合は住宅のオーナーに有利なことが多く,銀行は20%もしくはそれ以下の頭金でローンを組んでくれるため,目の覚めるような結果となる。(株で信用取引をする場合には,50%の保証金を要求されるし,株価が下がるたびに保証金の積み増しをしなければならないが,家の場合は不動産価値が下がっても頭金の積み増しを要求されることはない。)

(中略)

家は株と同じように,長期に持っていることが成功につながる。これ(家)は株の場合と違って,大体平均して7年間,同じ人が所有しているが,株の場合には,ニューヨーク証券取引所の例では,株の所有者の87%が毎年変わっている。

(中略)

最後になるが,家を買うとなると,ほとんどの人は地下室から屋根裏まで実際に見て,的確な質問をして調査するし,子供の時から,両親が,学校は近いか,下水は,税金は,などとチェックしている姿を見ている。

(中略)

これだけ徹底して調査するのだから,住宅投資はうまくいかないはずがない。ところが家を買うためには何ヶ月もかけるのに,えてして株式投資は数分間で決めてしまう。ほとんどの人は,株式投資より電子レンジを買うことの方に,より多くの時間をかけるのである。

出典:『ピーター・リンチの株で勝つ』

この一節には投資に関する重要なヒントが数多く盛り込まれています。

① 徹底した調査 VS 直感

第一に,投資で成功するには,家だろうと株だろうと「徹底的に調査するべき」であるということです。私の場合,一銘柄を調べるのにおよそ5時間から20時間ぐらいかけていますが,それでも調べられるのはせいぜい直近の10年のことにすぎませんし,競合調査などとなると対象銘柄だけを調べても分からないことが多く,ギブアップすることも多いです。はっきり言って調査不足でしょう。

ですが,ピーター・リンチが言っているように,家を買うとなると通常は,物件を隅々まで調べ,さらに近隣の似たような物件と比較し,数カ月から数年の歳月をかけて選ぶのではないでしょうか。

そもそも,住宅を買うには銀行の住宅ローン与信を申請する必要があり,そうした手続きをしているだけでもあっという間に時間が過ぎていきます。いくら良い物件があったとしても,拙速に頭金を現金で支払うなんてそもそもあり得ませんし,損しようがないのです。

なぜ株式投資に時間をかけないのか?

ピータ・リンチの指摘はもっともです。もっと株式投資に時間をかけろと。確かに。

株式投資の判断に時間をかけないのは,「電子レンジ」といった具体的なものに比べて,株式というのは数と種類が多過ぎて比較が難しいからだと思います。

株を買うときに,「保険会社の株が欲しい」「鉄道会社が欲しい」といった調べ方をする人は少ないでしょう。多くの人は「”高配当な”株が欲しい」「”上昇中の”株が欲しい」など調べ方をします。こうした高配当・上昇中のようなキーワード自体,直近のEPS,株価の影響をもろに受け,冷静な判断がしづらいということでしょう。

デパートの売り場でいうと常設売り場ではなく,催し物売り場(大丸の7階あたり)で何かいいものないか〜と探し回る姿に似ています。欲しいものを決めてからデパートに買いに行くのではなく,「欲しくなるものをデパートに探しに行く」のでは良いものは買えません。(たまに,バーゲンセール品に出会えるかもしれないので,買い物直後の満足感は高いと思いますが。)

逆に,「保険会社の株が欲しい」といった一部の狭いセクターに絞った調査方を採用するのであれば,電子レンジを品定めするのと同じように,保険会社間での競合比較や業績比較を徹底できます。普段からデパートに足を運んで品定めをした上で,たまたまバーゲンの日に安売りしていたら目的の品物を買うというスタイルに改める必要があります。

ピーター・リンチは「株式投資は科学ではなく芸術だ」と言っており,これはハワード・マークスの言葉と奇しくも一致します。(ピーター・リンチの方が先に言ってそうですが。)企業の分析はデータに頼るのではなく,実際に足を運んだり,妻の意見を聞いたりして確実に成長すると思える割安株を評判やモメンタムを気にせずなんでも買うというスタイルです。たとえ,それが機関投資家やアナリストが見向きもしないような低位株・ボロ株・新興株でも気にしません。

こうした徹底調査のスタイルは,ピーター・リンチが最高のファンドマネージャーだと呼ぶジョン・テンプルトン卿の影響を受けてのことでしょう。テンプルトン卿は常時100個の指標をチェックしてバーゲン・ハンティングしていたということですから。バーゲン・ハンターも楽ではありません。ピーター・リンチの場合も,直感で銘柄を探しはするが,それぞれの銘柄について業績や事業の健全性に関して裏付けを取ることはサボっていません。これがテクニカルなトレーダーとは異なる点です。

まず先に良い銘柄を見つけてから、バリューを判断するのであり、いきなり”バリュー(割安感)”を見て探すようではいけないということです。

② ハイ・レバレッジ VS ノーレバ

次に,物件選びで入念に時間をかけて家を買ったということは,その物件はリーズナブルな価格で良い立地・良い状態の家だということですから,基本的に価値が上昇します。(米国の場合)

仮に10年で20%住宅価格が上昇したとします。全て現ナマで買った場合は,住宅価格上昇分のリターンしか得られませんが,住宅ローンで5倍のレバレッジがかかっていれば,利息分の支払いを差し引いたとしても数十%のリターンとなります。

株式投資ではレバレッジ(信用取引)はあまり投資家に有利な制度となっていません。かけられるレバレッジはせいぜい2倍ですし,時価評価で保証金を積むことを要求されるために,大きな株価の下落の際には不本意ながら株を売ってキャッシュポジションを増やさざるを得ないのです。

というわけで,基本,株式投資での信用取引は不都合なので使いものになりません。自分で投資するならばノーレバ,または知人からの借金,で済ませるしかないようです。もちろん,バフェットクラスであれば,保険会社を買収してそのフロート(浮動資金)をレバレッジとして使えるのですが。

 

③ 長期保有

ピーター・リンチによると,株式投資の投資家に聞いて見ると,ほぼ100%長期投資家しかいないそうです。(自分で短期投資家を名乗る人はほとんどいないという意味。)ですが,実際には売買を高頻度で行なっている人が多いのではないでしょうか?

それに対して,住宅を短期で買って,売って,また買って,・・・というようなライフスタイルの人は少ないでしょう。そもそも手続きに時間がかかるのでなかなかできないのです。結果として住宅投資の場合は,短期的な景気の波の影響を受けることはあり得ません。長期的な住宅価格上昇の恩恵を預かることができ,それが時間が住宅オーナーに有利に働く理由です。

では,株式の長期投資家の場合はどうでしょうか?

私もそうですが,株式投資の場合は,「損切り」という厳格なルールがあります。損切りは法律のようなもので守らなければいけません。(守れないなら法律を変えるしかありません。2016年2月の大暴落でほぼ全ての銘柄が損きりラインを超えるという事態が発生し,損切りライン(法律)を緩めました。)

では,住宅は?というと,住宅にはありがたいことに損切りルールはないのです。そのため,住宅ローンが支払えなくて家を手放した人はいても,住宅価格下落によって家を追い出されたとか,家を売ってしまったという人はいないと思います。

損切りしないという選択肢は株式市場では企業の倒産によって価値がゼロになる恐れがあるため必要なルールですが,住宅の場合は土地という固定資産だけは残るため不要です。住宅の場合は、災害などのリスクはあれども、最終的には時間が味方となり、長期的に持つことが報われやすい投資です。

結論

ピーター・リンチがいうように住宅投資は極めて有利な投資商品であることが分かります。株式投資に向いていない場合は住宅投資に切り替えるというのが無難な選択肢に思えます。それに対し,住宅であれば時間が味方であり,たとえ高値を掴んだとしても自分で住んでしまえば損はしません。

それに対し,(米国外在住の身だと)米国株は調べれば調べるほど難易度の高さに唖然とさせられるばかりです。万人向けとは言えません。また,毎日ミセス・マーケット(イエレンやヒラリーなど)に煩わされ最近では,アンダー・アーマー(UA),ノボ・ノルディスク(NVO),フィットビット(FIT),などコンセンサスをわずかに下回っただけでも大幅に売り込まれる銘柄が増えています。

投資家としての引き出しを増やすという意味で,資産の一部を住宅投資に振り向け,自分の得手不得手を確認しておくのが良いのかもしれません。

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