Investor’s Business Daily

「Investor’s Business Daily」とは成長株投資の神様と称されるウィリアム・オニール氏が発行した新聞をベースとしています。現在は主にオンラインサブスクリプションが主流となっており,記事は全てブラウザやiPhoneアプリで読むことができます。もちろん,新聞スタイルをお好みの方は新聞のフォーマットのPDFで読むこともできます。

https://www.investors.com/

ウィリアム・オニール

ウィリアム・オニールの「成長株投資発掘法」をご存知の方は多いと思いますが,投資というのはタイミングが命です。ウォーレン・バフェットが「絶対に損をしない」ことをモットーに投資しているのは有名ですが,ウィリアム・オニールも以下の名言を残しています。

私の投資哲学は「全ての株式は悪だ」ということだ。株価が上がらない限り,いい株式なんてものは存在しない。もし株価が下がったら素早く損切りせよ。損を放ったらかしにするのは,多くの投資家がやってしまう最も重大な過ちだ。

私はパン・ローリングの出版する翻訳本から洋書まで含めて多数の投資本を読んできましたが,少なくとも”トレーダー”を自認する投資家でオニールを知らない人は誰もいないというほどの成長株投資の神様です。多くのトレーダーはオニール流を試し,マスターした後に徐々に我流のエッセンスを加えてオリジナルなエッジを極めていっています。

オニール流というのは

①売り上げ・利益成長率の高い企業をスクリーニングし,
②チャートの形と出来高を見て,機関投資家のアキュミュレーションを見抜き
③ブレイクアウトで高値を買い
④失敗に備えて7%の下落で損切りを入れる

というごくシンプルな投資法ながら,1960年代から多くの投資家の基本戦術として効果が実証されてきました。ただ,使いこなすのは非常に骨が折れる投資法で,日々企業業績をウォッチし,機関投資家の動きを監視し続けるのは大変です。そこで,この日々の業績チェックやブレイクアウトのモニタリングに一役買っているのが上で紹介した「Investor’s Business Daily」です。

投資家の誰もが大好きな”ATNH”(All Time New High = 新高値)を日々紹介してくれおり,それぞれの企業の業績成長率を1〜100までの数値で定量化してくれているだけでも,負担軽減に役立ちます。もちろん,私は長期投資が基本スタイルなので,実際に投資する際には各企業の数年分のAnnual Reportを読みますが,そこにたどり着くまでのスクリーニングの精度を高める上で欠かせない情報サイトだと思います。

長所

①業績スクリーニングのカバレッジが広い:Zacks.comなどと異なりアナリストではなくコンピューターが採点しているためカバレッジ100%である。

②買いポイントが明らか:BUY POINTとして各種のブレイクアウトのタイミングを知らせてくれる。また,ファースト・ステージ,セカンド・ステージなど相場の波の回数をカウントしてブレイクアウトの成功率も教えてくれるのが良い。

③売りポイントが明らか:GOLDEN SELL RULEとして「7%損切り」を定めている。どんな値段で買ったとしても-7%。通常,買い煽りだけで売り方を指南しないサイトが多い中,売りポイントやショートのポイントを紹介しているのはさすが。

④読み物が面白い:特に一般消費財系の企業についてはIBDは広くカバーしており,企業買収ニュースや新興の伸び盛りの企業を発見するのに役立つ。

⑤セクターの強弱が分かる:合計197のカテゴリーのランキングが日々更新されるため,強いセクター・弱いセクター・伸びているセクターが一目でわかる。

欠点

長所ばかり書いても面白くないため,欠点も書いておきましょう。

IBDの推奨する投資ルールの欠点は,汎用的な投資スタイルを求めるあまり,損切りルール,買いポイントが硬直化している点です。

①損切りルール

多くのトレーダーが”純粋な”オニール流を採用していない最大の理由が「7%損切りルール」です。
ストップロスを入れることすら知らない初心者に必ず損切りをさせるという意味でいい手本になりますが,7%という数字はチャブついた相場や値動きの激しい成長株には不向きで,実際には銘柄に合わせた柔軟な対応が必要です。(毎日プラスマイナス10%動くような株もあるわけで。)

その結果,熟練したトレーダーになればなるほどATR(Average True Range:日々の平均値幅)の外に損切りを置いたり,移動平均などのレジスタンスの下に損切りをおく,心理的節目の価格からずらすなど工夫に工夫を重ねています。ロスカットの入れ方だけでも語りつくせないほど多種多様な方法があり,オニール流を卒業した投資家のトレードスタイルが如実に現れます。

②買いポイント

IBDではBuy Pointとして,カップ・ウィズ・ハンドルのハンドルを1セント超えた高値,ギャップアップ時の寄り付き,10日移動平均線タッチ,3週間のタイトな値幅を超えたとき,など数種類紹介されていますが,「ブレイクアウト」したタイミングが中心なので「False Breakout(ブレイクアウト失敗・騙しのブレイクアウト)」に弱いという弱点があります。

この弱点を補うために,熟練したトレーダーは意識的にベース形成期(ブレイクアウトより数週間〜数ヶ月前)に買ったりという手法で安全圏を確保しているケースがあります。オニールの業績スクリーニング(売り上げ成長率・利益成長率)を用いて企業を選別しつつ,買いのタイミングはオニール流ではなく我流で早めに動くというやり方ですね。ここまでくるともはやオニール流とは言えないレベルにまで改造されていますが,これもブレイクアウト投資術が必ずしも万能ではない証左です。

③相場観がない

IBDの長所でも短所でもあるのですが基本的に社会・経済全体のファンダメンタルズにはそれほど注意を払っていません。(対照的に私はテクノ・ファンダメンタリストなのでFEDやマクロ経済重視派です。)

IBDのスタンスはどちらかと言えば効率的市場仮説に近い考えで,あらゆる情報は株価に織り込まれるので「相場のことは相場に聞け」と言わんばかりのチャート原理主義です。株価が上がれば青信号・株価が下がれば赤信号という相場観は,短期的には正解ですが,長期的には必ずしも正解とはならないことも多く,IBDだけに頼るとチャブついた相場では振り回されがちになります。

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