「1月効果」は2016年に消滅した

1月効果は登竜門

季節のアノマリーとして最も有名なものに「1月効果」があります。

マネックス証券,楽天証券,SBI証券ほか多数のコラムを持っているmarket hackの広瀬隆雄さんのブログでは,毎年恒例の記事として「1月効果」「1月のアノマリー」などの記事名で紹介されており,ご覧になった方も多いのではないでしょうか?こんなに記事があります!

舗道に落ちている金貨を拾い上げる日:2011年12月15日
あなたは舗道に落ちている金貨を拾い上げましたか?:2012年01月20日
一年で一回だけクソ株を買って良い時期とは?:2013年12月28日
タックス・ロス・セリングとは?:2014年12月14日
タックス・ロス・セリング:2015年11月08日

そして,残念ながら多くの株式投資初心者が「1月効果で楽して儲ける」実験で大失敗し,投資家として賢くなっていく登竜門的なイベントになりつつあります。

「1月効果」記事で得するのは証券会社

広瀬隆雄さんは毎年毎年なぜ1月効果を取り上げるのでしょうか?

理由は簡単です。広瀬隆雄さんは優秀な投資家である以上に,優秀な「証券会社営業マン」だからです。特にインターネットを駆使して,株を買わせるのがうまい営業マンです。

弊社は顧客との対話をたいせつにします。対面コミュニケーションこそが最上の対話形態だと考えます。それに加えて、最近たいへん便利になっているインター ネットなどによるコンテンツ・デリバリー・ツールの積極的な活用を常時検討し、それらが顧客とのコミュニケーションの向上にとって適切であればどんどん採 用します。

出典:Contexual Investments LLC

1月効果の歴史

「1月効果」は今から遡ること30年前の1983年,ドナルド・ケイム博士がJournal of Finance誌上で報告したことで有名になりました。([The anomalous stock market behavior of small firms in January : Empirical tests for tax-loss selling effects, Journal of Financial Economics, Volume 12, Issue 1, June 1983, Pages 89-104.])

当時マーケットは効率的だという神話があったため,「マーケットが異常な動きをする」というアノマリーは意外でした。タックス・ロス・セリングにより一時期だけ市場の効率性が崩れるから1月効果が発生するんだ云々のストーリーの面白さと,そしてノーリスクで儲かるという神話がかみ合って瞬く間に投資家の間で有名になりました。

その後,株式市場では多数のアノマリーが発見されていますが,言ってみれば,1月効果の発見はアスピリンの発見に続いて多数の医薬品が見つかったのに似た偉大な発見だったわけです。

しかし,医薬品業界と株式市場では大きな違いがあります。それは,医薬品は普遍的な科学的根拠に基づく発見であり繰り返し効果が再現するのに対し,株式市場はあくまで人間の行動のマクロな動きから発生するため効果が再現するとは限らない点です。つまり,人がどう行動するかでアノマリーは生まれもするし消えもします

1月効果が有名になった途端,何が起こったかというと,機関投資家のファンドマネージャーが1月効果の先手を打って買いに入るようになりました。そして,12月の下落率と1月の上昇率もマイルドになりました。これを平準化と呼びます。アノマリーは多くの人に知られた時点で消える儚い運命にあります。

データでも1月効果の平準化が顕れています。

1925年〜2006年の小型株の1月成績:+6.07% (VS 大型株の1月成績:+1.57%)

1990年〜2007年の小型株の1月成績:+1.36%(VS 大型株の1月成績:+0.70%)

90年代以降,1月効果は明確に弱まっているのがデータからお分かりでしょう。考え方によっては12月に前倒しになっただけで,辛うじて残っているという見方も出来ますが,本来の1月効果はそんな弱々しいものではありません。

1920年代〜1930年代は大恐慌のため相場環境は最悪でしたが,小型株だけを見ると1930年に+13%,1931年に+21%,1932年に+10%(いずれも1月の月次上昇率)と圧倒的な強さを見せていました。1月効果が無名だった当時はまさに必勝法と言えるほど強力なアノマリーだったのです。

では,2016年1月の結果はどうでしょうか?相場環境が年初来最悪という意味では1930年代に匹敵しますが,ほとんど小型株は反応しませんでした。それどころか,小型株の方が下落率が高いケースも多々ありました。小型株指数も大きく下落しています。

結論としては,「2016年に1月効果は消滅した」と判断してよいと思います。

証券会社にとっての「1月効果」

投資家にとっての1月効果は消滅しました。

では,証券会社にとってはどうだったのでしょうか?

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お見事です。DOW30種を押しのけて,シェイク・シャック(SHAK),ゴープロ(GPRO),3Dシステムズ(DDD)などが売買高上位にランクインしています。果たして1月効果期待なしで,これらの銘柄がここまで出来高が増えるでしょうか?

そうです。証券会社にとっての「1月効果」は健在であり,1月の小型株はまさに広瀬さんの言う「舗道に落ちた金貨(売買高急上昇)」そのものです。ただし,投資家にとっては「舗道に落ちたクソ」です。(敢えて下落幅の大きい決算の出来の悪い銘柄に手を出すという意味で。)

ファンダメンタルが期待できる,製品やサービス・ビジネスモデルに惚れ込んだなどの理由無しに下落中の株に手を出すのですから長期保有できる投資家はいません。少し上がれば売り抜けたいデイトレの猛者がチキンレースする厳しい相場です。

ただし,初心者でこうしたクソ株に手を出すのは悪い話ではありません。アノマリーを信じて買うのは「ストーリーを買う」投資手法であり,1月効果で痛手を被った投資家は二度とストーリーで買うことはないでしょう。ほかのアノマリーと同じく,1月効果で損切りするのは脱初心者には必要なプロセスなのだと思います。

※広瀬隆雄さんの記事やセミナーは全て無料で配信してもらっています。証券会社の発行するひも付きの情報は,「顧客が儲かるネタ」よりも「証券会社が儲かるネタ=顧客に売買させる」を多く含みます。広瀬隆雄さんは株マニアとしても営業マンとしても一流なので,個人投資家としては目利きをしていきましょう。

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