ルール2: PERはバリュエーション評価に使用しない

PERはバリュエーション評価に使用しない,企業を一枚岩に数字だけで分析しがちな自分に対する戒めとしてルールに含めます。

PER=単年度の利益/現在の株価

という数式で定義されますが,PERが割安感を表すとされたのは今から半世紀以上も前の話です。

PER頼みの割安逆張りはリスキー

現在の米国株投資家はPERよりもビジネスの質そのものに着目するようになっており,単純にPERだけをみて割安度を判断すれば,大多数の市場参加者とは逆の動きになりやすいというデメリットがあります。(「誰もそんな指標見てませんよ〜」というパターン。)

企業の栄枯盛衰の激しい米国では,長期的に見て一回限りで花が散ることも多く,逆張りはリスキーです。というのも,人材の流動性が異様に高く,ストックオプションがインセンティブの大きな割合を占める米国では,ピークを過ぎた企業からは急速に優秀な人材が抜けていきます。そして,新たなベンチャーへの渡り歩いて行き,世間の注目はそちらに移って行きます。

よって,一度ピークを過ぎて株価が下落し出すと,後追いで企業の能力も低下してしまい,他社にボコボコにやられるということがあまりに多いのです。

バーゲンハンティングは私も好んでいますが,指標としてはPERのような年単位の遅行指標よりも,テクニカルのオシレーターなどの短期指標を使った方が精度が高いと感じています。(PERは長期低迷を予測できず,塩漬けのリスクが高い)

イノベーションの息が長くなった

また,ITバブル以降は米国発のスタートアップの質が向上しており,ベンチャーキャピタルもエンジェル投資家もマネタイズを急がなくなりました。ここ数年で言えば,フェイスブック(FB)の上場もかなり遅く,同社がSNS市場シェア最大の企業になってから上場を果たしました。何でもいいから上場ゴールの時代とは変わったのです。

これはアマゾン(AMZN)やネットフリックス(NFLX),テスラ(TSLA)に象徴される新時代の企業の成功実績が背景にあります。短期的な利益(EPS)を稼いで配当を出すということをせずに,キャッシュフローを全て資本支出に回し,市場シェアを拡大・売り上げ極大化に専念する戦略が成功していることを受けて,株価も素直に上昇する。そして,上昇した株価で新たに増資をして資金調達を行うというサイクルです。

この「利益を出さずに,売り上げを極大化する」無限資金調達スタイルがここ数年で確立され,イノベーションの息が長くなったことが,米国株投資家,すなわち我々の投資に対するスタンスを変えつつあります。

「よい企業とは何か?」と問われた時に,「絶えず新たなイノベーションに投資し続ける企業」だと答える投資家が増えたというのは,起業を支援するという本来の投資の意味に近づいています。

まさに米国投資新時代と呼んでいいでしょう。

※バリュー投資全盛時代には「支出=悪」という考え方が支配的でした。しかし,今の時代はあらゆる事業分野でイノベーションが必要とされており,イノベーションにおいて後手に回った企業は売り上げを落とし苦しい戦いを強いられる結果になっています。(#化石のように事業統合によるコストダウンしかしてこなかったタバコ業界でさえも,今や電子タバコなどへの研究開発費用を投じています。)

バフェットがアップル(AAPL)を大量保有していることからも分かる通り,従来重視されてきた指標があまり価値を持たなくなり画一的な企業分析が難しくなっていく一方,「どれだけ早く変化に適応できるか」といった数字にあわられない企業力が重視される時代になっています。

指標の寿命

PERはすでに「6割の企業の評価には役に立つが,4割の企業の評価には全く役に立たない」中途半端な指標になり下がりました。

もちろん,企業設立後30年以上経過した老舗企業であればPERはまだまだ有効です。しかし,PERを判断基準に加えることで,超成長株を見落とすような機会損失が発生するようではいけません

ルール

  1. PERは企業のバリュエーション評価指標から外す
    ※赤字企業(鉱物採掘などのシクリカルなセクター)や超成長株(アマゾンなど)にはPERが通用しないため。
  2. バリュエーションはPSR(売り上げ/株価)などの代替指標で判断する。
    ※PBRも重厚長大な企業以外ではあまり役に立たず,知的財産中心の企業(ファブレス半導体やバイオなど)に通用しないため使わない。

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