『ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則』感想

ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則』を読みました。

普段から経営者の自伝や企業の創業 記が大好きで,ウォルマート,ナイキ,ホーム・デポ,グーグル,マイクロソフト,IBM,スターバックス,マクドナルド,アムジェン,エクソン・モービルなど片っ端から読んできましたが,いわゆるバフェット本は私の好みに合わなかったので一冊も読んでませんでした。もちろん,株主への手紙はバフェット自身の言葉なので読んでいますが。というわけで,今回の本が初めてのバフェット本となります。

著者の桑原晃弥氏は,トヨタからアップル,グーグルまで,業界を問わず幅広い取材経験を持つ経済・経営ジャーナリストの方だそうです。バフェットへの直接インタビューが出来ていないと思われるのが唯一残念な点ですが,編集と要約の巧みさ,また翻訳書とは違って日本人に読みやすいように気を遣ってある点が本書の秀逸な点で読みやすいです。

私が今まで意識していなかったのがバフェットの生い立ち・幼少期についてです。少なくとも1990年代以降のバフェット流の投資術はいろいろな書物で目にしましたし,バフェット流(after 1990)は理解した気でいました。しかし,それはとんでもない勘違いでした。

バフェット幼少期〜20代

バフェットは父親が株式ブローカーであり,後に父親の投資会社に就職しています。つまり,今で言う二世投資家,投資家サラブレッドでした。その優位性に甘んじず,幼少期から自らビジネスを興して資金を貯め始め,11歳から株式投資も始めています。その当時から数えると,現在キャリア75年,その間ずっと雪だるまを転がし続けているのです。ちょっと常人には理解できない持続力です。

しかも,チャーリー・マンガーをして「バフェットは学習マシーン」と呼ぶほどの株マニアであり,一日10時間ぐらい本を読んだり企業を調査したりするのが当たり前の生活です。多くの投資家は,未だにバフェットと比べて投資に割く時間が少ないのではないでしょうか?

だとすると,投資知力というものがあるとすれば,バフェットと一般投資家の投資知力の差は,今日でも開き続けています。

また,尊敬するベン・グレアムに対する思い入れの様はストーカーそのものです。幼少期にベン・グレアムの『賢明なる投資家』に感銘を受けたバフェットは,ベン・グレアムが教鞭を執るコロンビア大学大学院に入学し,ベン・グレアムが経営する投資会社グレアム・ニューマンに入社するため何回断られても手紙を送り続け,ニューヨークまで直談判に訪れたりもしています。最終的にそれが実って,就職させてもらえたので結果オーライでしたが。

20代前半当時はバフェットは熱狂的なグレアム信者であり,グレアムの買った銘柄を追従して買うと言うコバンザメ投資家でした。まだ,独力で企業価値を計算し,自主的に投資するという段階には至っていなかったのですが,この行動力は常軌を逸していると言うべきでしょう。

以上のようなエピソードは今まで全く知りませんでした。

オマハの賢人と呼ばれるようになるまでには,
① 株に対する情熱の持続力(75年間)
② 学習マシーン(e.g. 1日10時間調査しても苦ではない)
③ 尋常ならざる行動力(e.g. グレアムへのストーカー)
といった,属人的要素が重要だと言わざるを得ません。

決して,投資で楽して儲けようとか,一攫千金を夢見るとかいうことはなく,「どれだけ知力と時間を注ぎ込んでも惜しくないゲームに熱中する」”非効率な”投資家であることを楽しんでいるようにさえ見えます。

たとえるなら,羽生名人が将棋やチェスをいくら研究しても苦にならないのと似ているでしょうか。むしろ,難しいゲームの方が情熱の炎を燃やしやすいというか。

バフェットの投資方針の変遷

次に面白かったのが,バフェット流の変遷です。私は上にも書いたように1990年代以降の,優良銘柄のバイ・アンド・ホールド×レバレッジのことをバフェット流と考えていました。しかし,それもまた間違いでした。バフェット流は75年の年月をかけてブラッシュアップされて今の様相になっていたのです。

  1. ビジネスへの投資で種銭を増やす『スモールビジネス』
    例:農場経営や新聞配達経営など
  2. グレアム信者となりグレアムの買った銘柄をすかさず買う『グレアム・コバンザメ』
    例:マーシャル・ウェルズ
  3. グレアムの教えにより売られすぎのボロ株(資産価値>市場価値)を買う『グレアム流有形資産重視のバーゲン買い』
    例:ホクスチャイルド・コーン(老舗百貨店)
  4. チャーリー・マンガーとの出会いにより,経営力やブランド力,競争力などの無形価値も重視するようになる『有形・無形資産重視のバリュー投資』
    例:
  5. バークシャー・ハサウェイ買収の失敗により,すぐれた経営者のいるすぐれた企業を安価に買う『有形・無形資産・経営陣重視のバリュー投資』
    例:USエアー
  6. USエアーへの投資失敗により,経営者の過ちや環境の激変に耐える復活力の強い企業を理想とし『ワイド・モートのあるすばらしい企業をそこそこの値段で集中投資』
    例:コカ・コーラ
  7. 市場のセンチメントにより価格と価値の間の歪みに便乗する『市場の急変を活用するタイミング投資』
    例:ペトロ・チャイナ,ゴールドマン・サックス

現在,バフェットが行っているのは上記の6『ワイド・モートのあるすばらしい企業をそこそこの値段で買う投資』と7『市場の急変を活用するタイミング投資』の二つです。

リスクを極端に嫌う

リスクがなければリウォードもないというのが株式投資の世界では言われますが,一方で不要なリスクは避けたいものです。バフェットはその点,偏執的とも言うべきリスク嫌いな性格でありり,ソニーの盛田会長が出した日本食にはほとんど手を付けず,ポップコーンとアイスクリームが食べたかった言うほどの食わず嫌いです。

「食べ慣れた味ならリスクがないから,同じ店の同じメニューでよい。ハムサンドなら2ヶ月間続けて朝食出されてもいい。」

私にはこのバフェットの価値観は理解できませんが,でもこれが後に,ハイテクバブルにも投資せず,『ワイド・モートのあるすばらしい企業をそこそこの値段で集中投資』へと繋がっていると考えれば納得がいきます。

個人的な収穫と感想

本書には書かれてない内容ですが,本書を読み進めるうちに私の個人的な疑問が徐々に氷解してきたので今の考えをまとめてみたいと思います。

前回の記事でバフェットが2倍のレバレッジを活用してリターンを嵩増ししていることを書きましたが,その際に大きな疑問が生じました。

私の疑問は以下のようなものです。

「バフェットほどの天才的な投資の腕を持ってすれば,コカ・コーラのような低成長銘柄に集中投資せずとも,もっと成長率の高い企業を選別できるはず。なのに,なぜしないのか?」

実際,S&P500,S&P Mid Cap400,S&P Small Cap600を精査し,キャピタルゲイン+インカムゲインを調査もしてみました。しかし,バフェット銘柄のリターンは上位に食い込んできません。上位銘柄はといえば,プライスライン(PCLN),アマゾン(AMZN),ネットフリックス(NFLX)などです。いわゆるグロース株ばかりですね。

これらの銘柄でポートフォリオを組み,レバレッジ2倍で運用すれば,ここ10年で言うと,だいたい年率60%程度のリターンが得られたはずです。なのになぜ?

結論はと言えば,既にお分かりのように,バフェットはリスクと予測不可能性が極端に嫌いだからです。盛田会長が用意した最高級の日本食でさえ手を付けないんですから。日本食と書いていますが,たぶんスペイン料理だろうと,中華料理だろうと一緒で,バフェットにとっては新しい料理よりはマクドナルドの食べ慣れた味が遙かに良いのです。

ここ数日,悩んで馬鹿らしい思いをしました。

バフェットは”バフェットの精神衛生上”,最も安泰で堅実でローリスクな銘柄を選んでいただけなのです。シンプルと言えば極めてシンプルです。バフェットが若い頃は避けていた「楽して儲かる」システムが完成しつつあるからです。

ただし,バフェットらしいところが,こうした「ローリスク銘柄はローリターンである」ことについては受け入れようとせず,(バークシャー・ハサウェイ傘下の保険会社のフロートを活用し)レバレッジを高めることで「ローリスク銘柄×ハイリターン」にしたこと。また,このポートフォリオから得られる収益は,今後20年だろうと30年だろうとじわじわ増え続けることが予想されることから,自走雪だるま製造マシンを作ったに等しいことも分かります。

最早構造的にバフェットは必勝態勢になりつつあります。目先の株価値動きがどうであれ,ポートフォリオ全体がローリスクなワイドモート銘柄なのですから時間が味方なわけです。

個人投資家が逆立ちしてもバフェットに追いつくのは極めて難しいことだけは理解しました。個人がバフェット同等のハイリターンを目指すにはどうしてもハイリスク銘柄にならざるを得ないため,確率的に不利だからです。

これは不動産投資でいうと,三菱地所が丸の内一体のエリアを占有している状態と同じだと書けば,日本の投資家にも伝わりやすいと思います。他の不動産屋が三菱地所に勝つなんて(戦争や地震が無い限り)不可能です。バークシャー=”株式市場における三菱地所”だとすれば,バークシャーは何も苦労せずとも100年企業になるでしょう。

ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則』を読んで,バフェット流に対する疑問が解消したと同時に,個人投資家としてのどうやってリターンを増やそうかという現実的な悩みは増えました。頭を冷やしてアーリーリタイヤまでの投資戦略を練り直すことにします。

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