サイクル

くねくね相場

2017年7〜8月の決算をウォッチして来ましたが,全般的に高業績に対して反応が悪く,ガイダンスが少しでも悪いと叩き売られる厳しい相場環境となりました。特にひどいのがNasdaqやラッセル2000などの小型株・ハイテク株です。

今年のNasdaqは高値を更新しつつもボラティリティーが高くなっており,1日で1.5%以上の下げを記録した日が3月以降で5回に上ります。Nasdaqが-2%下がる日は,小型株は-5%〜-10%の下げになることが多く,長期上げトレンドの中で地獄を見ている方も多いかと思います。くじけず頑張りましょう。

Nasdaq2017_fall

少なくとも,2017年4〜5月ごろの相場は,好業績・好ガイダンスに必ず反応していました。それはウェイボー(WB)やSina.com(SINA),アプライド・オプトエレクトロニクス(AAOI)などの株価に現れています。良い決算=20%以上のギャップアップ,という「素直な」相場です。

しかし,2017年7〜8月は,EPS・売り上げ・ガイダンスの全てにおいてコンセンサス予想を上回る銘柄でさえ売られるケースが散見されるようになりました。ウェイボー(WB)やSina.com(SINA)は予想通り,いや予想以上の好決算を出してきましたが売り込まれ,nVidia(NVDA)もまた好決算にも関わらず売られ,ショックでした。

もちろん,スイッチメーカーのアリスタ・ネットワークス(ANET)やマシン・ビジョンメーカーのコグネックス(CGNX)や外食サービス業のYelp(YELP)といった銘柄は,決算発表当日に20%以上の上昇で新高値をつけており,一見すると相場は堅調にも見えます。しかし,これらはむしろラッキーな例外と言ったほうがいいでしょう。

特に気持ち悪いのが,Sina.com(SINA)やnVidia(NVDA)の決算にはケチをつける要素はほとんどなく,明白な下げの理由が見当たらないことです。

好決算なのに株価が下がる理由

この決算発表の良さと株価の低迷というデカップリングの原因は,株価が業績に対して3ヶ月〜1年程度,先行する指標であることから説明できます。

すなわち,今年5月の時点で今後半年〜1年先の好業績は織り込んでしまっており,8月の決算ではコンセンサス以上に実際にはアナリスト・投資家の期待が高まって買われていたということです。(#内心で期待しているコンセンサス>公表されたコンセンサス)

おそらく,多くの投資家(機関・個人含めて)はまだフル・インベストメントを続けていると思います。よほど保守的な投資家以外はすでに買いポジションで待っていたということでしょう。すでに買われすぎていた株が,好業績に反応しないのは当然で,買いポジションの利益確定売りの勢いが,これから買い出動しようとする新規買いの資金力を上回ったと見れば,一応は説明がつきます。

こうなってくると相場は厄介で,バフェット流のファンダメンタル分析が通じなくなります。

ファンダメンタルがどれだけ良くても,株価は上には反応しづらく,下にはよく反応する。こうしたパターンが今年のNasdaqの5回の暴落パターンから透けて見えます。2017年後半は高まりすぎた投資家の期待をどう飼いならしていくかに焦点を当てて注意深く動く必要があります。

残念ながら,グッドニュースが出たらすぐに利食いという逃げ腰な投資家が有利な環境になりつつあると思います。

例えば,アップル(AAPL)なんかも昨年末から株価が1.5倍になっていますが,これは今年の業績を反映しているだけではなく,今年の秋に発売予定のiPhone8による売り上げ増をかなりの程度織り込んでいます。

もちろん,アップルのみならず,工業用レーザーメーカーのコヒレント(COHR)やアプライド・マテリアルズ(AMAT)などのアップル関連企業も同様です。コヒレントも,売り上げが昨年同期比で2倍に伸びていながらコンセンサス割れをしたために叩き売られる大惨事となってしまいました。下のチャートに示すように,コヒレントのような半導体製造装置セクターは依然として業績そのものは輝いていても,株価はすでに輝きを失いつつあります。




相場観

さて,今後の投資についてですが,基本的に上昇相場自体は続くと見ています。

その主な根拠としては,半導体セクターには30年ぶりの巨大なシリコンサイクルが到来しており,全く衰える気配が見えないことが挙げられます。

セミコン・ポータル

『9ヶ月連続の$30 billion超え、四半期および月次販売高が最高に』
米国Semiconductor Industry Association(SIA)から恒例の月次世界半導体販売高が発表され、この6月について$32.6 billionで前月比2.0%増、前年同月比23.7%増、そして4-6月第二四半期について$97.9 billionで前四半期比5.8%増、前年同期比23.7%増という内容である。6月および4-6月ともに最高の月次販売高および四半期販売高を記録しているとのこと、通例後半の新製品打ち上げが引っ張る販売高の増加傾向を入れると、年間$400 billion超えが真に迫ってくるし、これで$30 billion超えも9ヶ月連続となって、引き続く熱い活況および関連する動き、展開ぶりに目が離せないところである。

このシリコンサイクルは,全世界的にあらゆるビジネスがモバイル化・クラウド化しつつあり,この実需を背景に,アマゾン(AMZN)やマイクロソフト(MSFT)をはじめとする巨大IT企業による設備投資が続いていることを裏付けています。

モバイル化・クラウド化は単なる短期的なブームには終わらず,二の矢,三の矢としてフィンテック(金融のIT化),不動産テック(不動産のIT化)などを巻き込んで急速に進展しており,消費者の生活を現実的に変化させつつあり,この流れは今後10年ぐらい続く大きな潮流になると見ます。

一方で,懸案もあります。

それは景気サイクルにおいて,欧州や米国が徐々に景気拡大期から離脱しつつあることが明らかになっている点です。

BusinessCycle2017June

東京オリンピック2020や北京冬季オリンピック2022など,日本や中国は中期的に見てまだまだ箱物含めた景気拡大が続くので安心していいでしょう。(特に日本,中国の内需関連銘柄は安心。)

しかし,英国やカナダなどは徐々に景気後退期にさしかかっており,油断できない状況になりつつあります。

2008年のリーマンショックは全世界を不況に陥れましたが,その結果,全世界が足並みを揃えて2010年以降に景気回復し,今の8年間に及ぶ長期の好景気が続いているという事実を忘れてはいけません。2008年に一度は揃った景気サイクルの足並みが徐々にずれてきており,今後は各国バラバラに景気動向を見ていく必要があります。

この点はジャネット・イエレンFRB議長やドラギECB総裁なども警戒しており,昨今のバランスシート縮小や利上げによる金利マージンの確保と言った話に繋がってきます。

まとめ

2018年以降はトランプによる法人税減税などの景気刺激策が軌道に乗らなければ相場は荒れると予想します。しかも,厄介なことに業績に素直に反応しない相場になる恐れがあり,その場合はバフェット流投資術が裏目に出ることも想定しないといけません。

バフェットの最大の特徴はファンダメンタルを重視して優良企業を買うという点ですが,裏を返せばテクニカルが苦手で,短期的に大きく相場環境が変わったときに損が膨らむことになります。今年のようにボラティリティーの高い相場ではバフェット流投資術だと買い持ちなので特に不利。むしろ,短期トレーダーの方が安全かもしれません。

また,高成長が期待される(実際に好業績を叩き出している)Nasdaq銘柄よりも,低成長と思われるダウ平均銘柄の方が最近は上昇率が高く,逆転現象が起きていることも気がかりです。

長期的に見れば小型成長株がもっとも高いリターンを叩き出すということに疑いの余地はないですが,短期的には必ずしも真とは言い切れません。小型株だと1ヶ月に1回のペースで-10%以上の下げに見舞われて逆指値に引っかかり,翌朝見てみるとポートフォリオから消えている・・・ということもザラです。これが小型株の怖いところです。

相場全体を見回してみると,トランプ政権が何も決められないうちは,ダウ平均などの大型株に資産を退避しておく方が安全と言えるでしょう。トランプ減税やトランプ・ヘルスケアプランなどの大型の政策が決まりそうになってから各テーマに適した小型株に戻るというのがノーリスクだと思います。

また,今のところ長期的な上昇基調が崩れたことは確認されていないので,今のように株価が低迷しているタイミングでのバーゲンハンティング戦略もあるにはありますが,好業績銘柄が叩き売られる今の相場ではあまりお勧めできません。

株価低迷の理由が業績不調によるものではなく,純粋に上昇パワーが足りていないから,というのがバーゲンハンティングに不向きな理由です。

バーゲンハンティングは,今年前半のようにインデックスがどれも新高値をつけていて相場環境が極めて強い時の,”一瞬の下落”を狙うのが醍醐味であり,相場が弱まりつつある8月現在はそのまま適用できそうには思えません。(例えば,トランスダイム(TDG)は2月,3月の下げから急回復して30%程度上昇し,バーゲンハンティングがうまくいくパターンにハマりましたが,これと同じようなことがアプライド・オプトエレクトロニクス(AAOI)でも起きるかどうかは保証できません。)

3月ごろから急回復して新高値をつけたトランスダイム(TDG)

TDG_20170811

現在進行形で低迷しているアプライド・オプトエレクトロニクス(AAOI)

aaoi_20170811

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です