トランプ政策

ドナルド・トランプ大統領のホームページ www.donaldjtrump.comには,トランプ大統領の政策について詳細に書かれています。米国株に投資する立場としては,①政府(大統領)による政策と②FRBによる金融政策の二つは注視しておく必要があります。

ざっくり読んでみましたが,米国に拠点を構えるグローバル企業に投資する身としては,かなり業績面で不利になりうる条件が揃っています。

トランプの目玉政策の一つに「Buy American and Hire American」(アメリカ製品を買い,アメリカ人を雇うべし)というものがあります。このバイ・アメリカン政策を実現する手段として有力なのが貿易協定の改革です。

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『公平な貿易協定を締結するべく交渉することにより,米国の雇用を増やし,米国民の給与水準を引き上げ,米国の貿易赤字を縮小する。』

そのための,7つ道具が以下の政策案です。

1. Withdraw from the Trans-Pacific Partnership, which has not yet been ratified.

一つ目はTPP(環太平洋パートナーシップ)からの撤退。
これは日本は影響を受けますが実現していない貿易協定から撤退するという意味では影響は軽微に止まると思います。土壇場になって,米国は,自国に不利な条約は批准しないと言ってドタキャンを繰り返してきた国なので,実際に締結するまでは無いものと同じです。

2. Appoint tough and smart trade negotiators to fight on behalf of American workers.

二つ目は米国雇用者のためとなるような貿易協定を結ぶというもの。これもスルーしましょう。

3. Direct the Secretary of Commerce to identify every violation of trade agreements a foreign country is currently using to harm our workers, and also direct all appropriate agencies to use every tool under American and international law to end these abuses.

三つ目はやや抽象的になってきます。他国が貿易協定に違反して米国労働者に不利益を与えたという言い分ですが,これを商務省主導で是正していくということのようです。具体的には「違反」とは何を示しているのでしょうか?もし本当に違反であれば,わざわざ政策にせずとも取り締まりは可能です。

4. Tell NAFTA partners that we intend to immediately renegotiate the terms of that agreement to get a better deal for our workers. If they don’t agree to a renegotiation, we will submit notice that the U.S. intends to withdraw from the deal. Eliminate Mexico’s one-side backdoor tariff through the VAT and end sweatshops in Mexico that undercut U.S. workers.

やっと具体的な政策が出てきました。NAFTA(その中でも特にメキシコ)との協定を見直して,米国労働者にとって有利な条件に改定する。そして,NAFTAが交渉に応じない場合は,NAFTA脱退も辞さないという強気の姿勢で臨むと。

5. Instruct the Treasury Secretary to label China a currency manipulator.

これは要するに,ドル安誘導政策ですね。強引に為替水準を引き下げると。

財務省主導で中国を為替操作国監視リストに入れる。その後のペナルティーはどうなるのか?

Wikipediaによると「アメリカ財務省は、1988年から毎年2回議会に対して為替政策報告書を提出している。それに基づき、対米通商を有利にすることを目的に為替介入し、為替相場を不当に操作している国に対してと議会が為替操作国と認定する。為替操作国に認定された国は、アメリカとの間で二国間協議が行われ通貨の切り上げを要求される。またアメリカは必要に応じて関税による制裁を行う。また為替レートの影響が大きい財界から財務省に対して認定を要求することがある。」とあります。

通貨切り上げ(日本でいうとプラザ合意のようなもの)が主力なペナルティーのようですね。

また,最近よく騒がれる関税の引き上げもこのペナルティーの一環でしょう。

普通に関税を引き上げるということは,自由貿易諸国のリーダーを標榜する米国にとっては自己矛盾を意味し実施は難しいです。しかし,あくまで「世界の警察,世界の貿易摩擦を是正するリーダー」として一時的に中国に罰を与えるという立場であれば,関税引き上げを正当化する政策的根拠となるかもしれません。

6. Instruct the U.S. Trade Representative to bring trade cases against China, both in this country and at the WTO. China’s unfair subsidy behavior is prohibited by the terms of its entrance to the WTO.

通商代表部により中国を,助成金によって米国に不利益を与えたとして米国内の裁判所とWTOに提訴すると。

これは具体的に提訴されて勝訴した後にどういうペナルティーが課されるのかは分かりませんが,中国側の対応は明確です。

必ずや米国製品の税関通貨拒否が来ます。(日本製品やフィリピンのバナナなどが意図的に港に放置されるという事態が発生したのは記憶に新しいと思います。)

あと,米国民の入国拒否や米国人の中国駐在員の不当逮捕も必ずや起きるでしょう。報復的な訴訟というか,見せしめの嫌がらせですね。(日本の商社マンなども胡錦濤政権時代にこうした嫌がらせを受けました。)

どちらにせよ,訴えた時点でかなりの報復が見込まれます。泥沼ですが,やるのでしょうか?

7. Use every lawful presidential power to remedy trade disputes if China does not stop its illegal activities, including its theft of American trade secrets – including the application of tariffs consistent with Section 201 and 301 of the Trade Act of 1974 and Section 232 of the Trade Expansion Act of 1962.

中国の違法な活動を止めるために法的手段を辞さない云々とありますが,これも上記と同じく,中国側も報復の手段を辞さないのが目に見えています。

以上を見る限り,主要なターゲット国は2か国です。メキシコと中国。

この2か国に主要な生産拠点を置くような企業からは距離を置いた方が安全だと思います。

メキシコは幸いにして付加価値の低い製品が中心なので影響は軽微だと思います。例えばですが,トレーナーなどの服飾の生産拠点はいつでもアジアに移すことができます。

一方で中国と関係がこじれた場合は厄介であり,現在では比較的高付加価値の組み立て工場は中国に移って来ています。例えば,iPhoneの組み立てなどもそうですね。

単に技術水準だけで言えば,移転先は色々ありますが,低賃金かつ豊富で均質な労働力かつ技術水準が一定以上となると,ちょっと移転先探しは難しそうです。アップル(の下請けの鴻海精密工業(Foxconn))やデルはどうするのでしょうか。以下のような米国へのリップサービス的な工場移転話もありますが,果たして成功するかは疑問です。

鴻海、トランプシフトの生産再編 米中に液晶工場(日経新聞)

台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が世界戦略の再構築を急ぐ。米中で液晶パネル工場を建設する構想を表明。「米国第一」を掲げるトランプ大統領の登場という新局面に素早く対応し、製造業の立て直しに躍起な両大国に条件闘争を迫るしたたかさも見せる。電子機器生産の外部委託の波をとらえ、中国で集中的に組み立てることで急成長したが、昨年は1991年の上場以来初の減収。限界に達した成長モデルの転換に挑む。

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