年寄りの戯言(ゴルフの思い出)

私の投資哲学の一つに『バブルには絶対に手を出さない』というものがあります。

50代〜70代の投資家の方なら覚えていることと思いますが,かつて日本のバブル期にはゴルフ会員権が家一軒分の値段で売買されていました。当時の日本円で4000万円〜5000万円です。

なぜゴルフ会員権という「預託金または株式形式=所定のゴルフ場でプレーする権利」に額面からかけ離れた価格がついたかというと,端的に言えば日本銀行による金融緩和の行きすぎが原因でした。ゴルフ会員権の半分は土地の値段という担保に基づいて額面が決まっており,さらに供給が限られ流動性が低かったために,売り手がいなくなると簡単に値段が釣り上がり,上昇が新たな買いを呼ぶというスパイラルを招きました。(#どこかで見た構図です。)

当時の日本銀行・大蔵省は1985年のプラザ合意による円高危機を乗り切るため,1986年以降,利下げに踏み切っており,金融緩和は1988年まで続きました。プラザ合意は日本だけをターゲットにしたものではなく,対米貿易黒字が巨額に膨れ上がっていたドイツも当然のことながらターゲットとされ,同様に通貨高不況対策で利下げに踏み切っています。

プラザ合意という米国からの外圧によって外需依存から内需拡大路線に舵を切ったタイミングであり,立場が弱い日本に他の選択肢があったとも思えませんが,資産価格全般(株式・不動産・ゴルフ会員権など)が”全て”後から見れば破格の値段にまで高騰していたことを思うと非常に残念です。

日本

ドイツ

教訓

中央銀行が持っている政策目標実現の道具は,金利の上げ下げとQE/QTという二つのツールであり,これらだけで①雇用の維持,②物価インフレ率2%,③資産バブルを抑える,という異なるベクトルの目標を同時に実現するのは不可能です。

となると次に考えるのは,何を犠牲にするか?です。

日本銀行はバブルに火がつき始めた1987年当時に資産価格がバブルの兆候があることを明らかに認識していました。しかし,外交レベルでの約束事(正確には米国から脅されてサインしたプラザ合意)に基づく,貿易黒字の圧縮(すなわち内需拡大による輸入拡大を最優先する)を最優先のミッションとし,資産バブルを放置するという判断を三重野総裁など当時の日銀理事たちが下したことで,1990年の放物線状の資産価格上昇,そしてその後の日本の失われた25年へと繋がっていくことになります。

 

さて,当ブログは米国株専門なので日本のことは置いておいて,米国の話に戻します。

FRBグリーンスパン議長以降を見る限り,FRBのマネタリー・ポリシーの中で「③資産バブルを抑える」ことは常に後回しされてきました。もちろん,資産価格は物価とは異なるため中央銀行が積極的に介入しないといけない直接の”義理”はないわけですが,結果としてバブル形成・崩壊を放置するというプロセスが蔓延してしまい景気サイクルの振れ幅が過剰に大きくなる副作用が生じています。(#日本の場合はバブル崩壊後に年間3万人もの自殺者を出し,うつ病が社会問題化したことからも分かる通り,バブル崩壊による景気・雇用・家計の悪化は国民の心を蝕みます。)

米国の今の経済は,株式・債券などの資産価格は明らかにバブル,企業業績は景気サイクルの頂点に近い,個人消費・住宅価格は回復の途上,ほぼ完全雇用,GDP成長率は上昇見込みだが直近はややペースダウンといった状況であり統計指標にも温度差があります。各理事が何を注目するかによってFOMCの結果も変わってくるというのが実情で,もし物価(CPI)だけに着目するならば利上げのペースを緩めるということも今後あり得ると見ます。

現在,年3回〜4回と予測されている利上げのペースも,結局はFRBが定める政策目標の優先順位という極めて危ういバランスの上での判断であり,日本での失態を見れば下手に利上げのペースを落とすよりも,早めの利上げでバブルの芽をを潰しておいて欲しいと思います。(私は超長期投資家なので短期的な利益より持続可能な成長を希望するためです。)

ビットコイン

過去のバブルで痛い目にあってきた私の目から見れば,ビットコインはかつてのゴルフ会員権同様,長期的(20年スパン)では投資対象として怪しい部類に入ると思います。中央銀行の資金供給のバランスが崩れ,市場全体に低金利の資金が供給されるとバブルは瞬く間に発生します。

中央銀行は海,ビットコインやゴルフ会員権は池のようなもの。満ち潮(QE, 低金利)のときの波しぶき一つで池(仮想通貨,ゴルフ会員権)が溢れたからと言って,今後ずっと池の水位が上がり続けるはずがありません。こうした一時的な価格高騰はなんども見てきましたが,長期的(一世代,20年)に見れば必ず実態価値に収斂されていくというのが私の持論であり,バブルだと思うなら手を出さないのが賢明です。

下図:金融資産/可処分所得の比率。現在が過去の水準と照らし合わせても”資産バブル期”なのは明白です。あとはどこまで放物線状に上がるかだけでしょう。

 

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