FRB「正常化への”より好ましい”アプローチ」

セントルイス連銀「A Preferred Approach to Normalization」

セントルイス連銀のジェイムズ・ブラード総裁がFRBの金融政策正常化に向けた「Preferred(より好ましい)」アプローチについてスピーチを公開しています。

中央銀行ウォッチャーではない方向けにおさらいします。

  • 2014秋にQE3を終了。
  • 2015/12に「ゼロ金利(ZIRP)終了」利上げ開始
  • 2017/9にバランスシート縮小を決定

FOMCは先に利上げを行い,その後バランスシートを縮小するという正常化の道を選びました。

しかし,ブラード総裁の個人的な意見として,その逆順,すなわち先にバランスシートを縮小してから利上げに向かった方が良いのではないかと考えているそうです。

そもそも,今回の非伝統的金融政策は世界的な金融危機に対応する中でのイレギュラーなやり方でした。すなわち,金利をゼロに引き下げ,なおかつ金融機関に緊急資金援助を行なったにもかかわらず流動性が不足し,ベア・スターンズやリーマン・ブラザーズが倒産してしまったからです。

ゼロ金利の深掘りであるマイナス金利政策は今でこそ,ECBや日銀が取り入れていますが,2008年当時はまだ選択肢とみなされていませんでした。ゼロ金利政策で不足なのであれば,量的緩和しかありません。そこで慌ててバランスシート拡大を際限なく認めるQE1,2,3が行われた訳です。

QE(量的緩和)は米国債(UST)やMBSを直接買い入れることで債券市場の需給バランスをコントロールし,長期金利を直接引き下げる効果があります。その結果,リスクフリーレート(長期金利)が下がることで企業の利払いが減り,企業活動への刺激策として効果が上がる訳ですが,当時はこれでさえもイレギュラーな緊急措置でした。

そして,ブラード総裁の意見としては,巨大なバランスシートを抱えたままだと,上記の企業の財務改善効果に対する大きな副作用として,長期金利が下がったままで維持され,イールドカーブがフラットニングさせてしまうということを懸念しています。

実際,債券バブルを招いたのはFRBや日銀などの巨額の米国債買い入れ・借り換え延長政策によるものです。債券価格は無限に近いFRBの買い入れによって高止まりし,長期金利も2017年まで低下の一途を辿りました。

そして,長期金利引き下げ政策である巨大なバランスシートを維持したまま,2015年に利上げを優先したことで,短期金利の上昇ペースが先行し,イールドカーブは実際にフラットニングしつつあります。

ブラード総裁は,もし先にバランスシートを縮小していたなら,短期金利・長期金利がどちらも上昇するという好ましい経済成長が実現できたはずだという意見をお持ちです。私もこの意見には一理あるとみます。

ただ,世界の中央銀行を見渡しても意見は様々です。元日銀理事の白井さゆり氏(名著『超金融緩和からの脱却』参照)は,現在の正常化順序(先に利上げ,のちにバランスシート縮小)に賛同されていますが,FRB内にも異なる意見があり,その順序によって異なる結果を招く可能性があるということを私たち投資家も学習しておくべきでしょう。

皆さんは,①利上げ,②バランスシート縮小の順序はどちらが適しているとお考えでしょうか?

黒田総裁がつい漏らしてしまった通り,2019年には日銀も金融正常化に向けて動き始めます。その時に,①マイナス金利をやめて利上げに踏み切る,②巨額のETF,国債買い入れバランスシートを圧縮するの二つのどちらを優先して実施するのかが,極めて重要な意味を持ちます。

さて,長期投資家は何十年にも渡って中央銀行や各国政府の政策との付き合いが続きます。今回の金融政策正常化の結論・結果が出るのはこれから1〜3年後です。成功・失敗どちらの帰結になるか見届け,アセットアロケーション戦略に結びつけていきましょう。

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