イールドとFRB

景気拡大期の末期になると中央銀行(FRB)が利上げを連続で行い,LIBORが急騰し,長期金利(満期10年のT-Bond 財務省証券利回り)を上回るようになります。直近の価格推移を見るとLIBORの上昇によりイールドカーブのフラットニングが進んでいることが伺えます。

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下図は米国10年債と2年債のイールド差を表したものです。

現在,イールドカーブは2018年初頭を割り込んでいます。市場はFRBの年4回の利上げを織り込みつつあると見てよいでしょう。年4回といえば,1年間で0.25%の利上げを4回繰り返すということなので1%の利上げに相当します。長期金利が安定して上昇している局面であれば長期・短期の双方の金利が上昇しイールドカーブのフラットニングペースは遅くなりますが,今は10年債の売られすぎの反動と株式市場から安全な債券市場への資金流出によって長期金利がやや下落気味であるためフラットニングのペースが上がっています。

混沌とする地政学的背景(米露緊張・米中貿易摩擦)は株式市場から債券市場やゴールド・シルバーなどへの資金流出を招きます。すなわち,債券が買われ長期金利が下落し,一方でFRBによる利上げとQTはハイペースで進むことで短期金利やLIBORは安定上昇を続けるということが予想されます。

長期金利の下落そのものはリスクフリーレートの下落なので企業業績にとってポジティブです。しかし,それが「株式離れ」が原因であれば”株価”にとってはポジティブではありません。これは2018年の企業業績が過去最高を更新したとしても,株価が思ったより反応せずバリュエーション(PER)がネガティブに触れる可能性があるということです。そうなれば,コンセンサスを上回る決算でも株価はフラットという可能性がありえます。

2017年は過去最高の市場流動性が確保され,ありとあらゆる資産価格が上がるバブリーな一年でした。日米で完全雇用が達成され需給ギャップが埋まり,欧州でも需給ギャップがかなり狭まっている中で,世界的に見て依然として中央銀行のバランスシートは拡大を続け,金利が低く抑えられているという状況は,あらゆる資産(ただし金利がつかないゴールドなどの安全退避資産は除く)にとってポジティブでした。

通常であれば,季節性(例えば,セルインメイで五月に売られやすいとか,九月に売られやすいなどの傾向が出ます。)さえも度外視した右肩上がりの1年となり,季節性アノマリーを重視する投資家が裏切られる結果となりました。

これは「極度の楽観と過剰のマネーが市場を席巻し,不安に感じる時期でさえも手仕舞いする必要を感じなかった」1年だったと総括できるでしょう。年後半のビットコイン(BTC)バブルやライオット・ブロックチェーン(RIOT),オーバーストック(OSTK),ロング・ブロックチェーン,ロングフィン(LFIN)などのいわゆる”ブロックチェーン銘柄”バブルも投資家のタガが緩んだ証左です。

しかし,今年はガラリとセンチメントが変化しており,米国中間選挙という不安定な政治イベントを迎えるにあたって季節性が悪い方に顕在化すると見ています。これは昨年の真逆で「安全サイドで手仕舞いする投資家が増える」と予想しているためです。では,いつ手仕舞いするかという話ですが,投資家内に不安心理・安全欲求が高まると,季節性アノマリーを信じる(思い出す)人が増えて,季節性が手仕舞いのきっかけになる可能性があります。

相場は短期的には予想や歴史を裏切るかのように見えますが,長期的には歴史が繰り返されることが多いので,(本来は好きではないですが)季節性アノマリーにも注意を払っておいた方がいいでしょう。

さて,最後にGDP VS フェデラル・ファンド・レート(FFR)を見ましょう。過去の景気後退期を見てみると利上げ(引き締め)による影響でGDP成長率が急落していることが分かると思います。残念ながら過去2回2000年,2008年のクラッシュはFRBによる引き締めの遅れがITバブルや住宅サブプライムバブルを引き起こし被害が拡大しました。今回は債券市場のバブル,株式市場全体のバブルも同時で発生しているため,一旦バブルが弾ければ被害は長期化すると見ています。(上昇が長かっただけに。)

以下の長期チャートではまだGDPとFFRの間には1%程度のマージンがありますが,アトランタ連銀が出してくれているGDP Nowを見てみると恐ろしいことに予想値が毎月急落しています。短期的に見てGDP減速の兆しが観測されつつあるということで,対GDPでの逆イールドになっていないかをチェックする必要があるでしょう。

GDP Nowの次回更新日は米国時間の2018/4/16です。アトランタ連銀の年初予想は下方修正され続けており,トランプ減税によるGDP押し上げ効果やトランプ財政出動による景気刺激策を「意識的に,かつ,過剰に」織り込んできた可能性があります。(FRBのラエル・ブレイナード理事のスピーチを見てみると,減税で+0.5%,財政出動で+0.4%などを全部”累積”していました。)

GDP予測値を意図的に上げておく目的はといえば,FRBは次の景気後退に備えて,金融緩和策の弾薬を準備をする口実が欲しいためです。端的にいえば,バランスシートを圧縮して量的緩和できるマージンが欲しい,利上げをして利下げ余地を増やしたいということです。

本来はトランプのおかげで景気は最高でインフレ加速という表向きのストーリーの裏側で速やかに利上げとQTを進めたいはずですが,さすがに最近はややトーンダウンして下方修正を連発するようになりました。最近のFRBの発表を見てみると,トランプの関税・貿易戦争などをGDP減速の理由にしています。半分は当たっていますが,半分は金融引き締めによる流動性減少が原因だと見ています。

こう書くと私がFRBを嫌っているようですが必ずしもそういう訳ではありません。今の景気循環の次の波で大きな被害を出さないようにするためには,なりふり構わぬ弾薬集めが必要なことは理解できます。準備期間としてもそれほど猶予が残されていないとFRB理事たちが考えているとするならば,今は多少の嘘(インフレ加速説,賃金上昇説,完全雇用説を盛ること)を市場は受け入れる必要があると考えています。

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