明暗を分けたホーム・デポとロウズ・カンパニーズ

ホーム・デポ(HD)とロウズ・カンパニーズ(LOW)の今期(2016Q2)決算が出揃いました。現在の米国住宅修繕用品市場では,規模の経済を最大限に活用したこの2社以外のハードウェアショップはほとんど淘汰されてしまっています。ウォルマート(WMT)やターゲット(TGT)がバラエティーショップや中小スーパーマーケットを駆逐したのと同じ構図です。

ホーム・デポの一人勝ち

今期の勝ち組はホーム・デポでした。2016年Q2のインフォグラフィックを貼りますが,YoYで売上+6.6%,同一店舗売り上げ比較(COMPS)で+4.7%,EPSで+13.9%と絶好調を維持しています。

売上増の内訳は,客足を表すトランザクションが+2.2%,顧客あたり支出額を表すチケットが+2.5%とどちらもすばらしい数字です。

決算説明会の中でも”In the U.S., all three of our divisions posted positive comps in the second quarter led by our Western division. And all 19 U.S. regions and top 40 markets saw single- to double-digit comps in the quarter.”とあり,全ての部門・米国内の全ての地域で前年比成長というから凄まじいです。特にプロ向けがDIYよりも成長していることから,住宅市場(建設・修繕・中古)全体が強いと言うことでしょう。

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それに対して,ロウズは同一店舗売り上げ比較で+2.0%,EPSで+9.2%と成長はしていますが,ホーム・デポと比較すると見劣りします。売上増の内訳も,トランザクションが+0.3%,チケットが+1.7%となっており,トランザクションが前年比横ばいで成長していません。

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住宅市場自体は好調

ホーム・デポCFOのキャロル・トームのコメントを見ていると,米国の住宅修繕用品市場は雇用数の増加や原油価格下落による家計のバランスシートの改善,住宅着工数の増加などに支えられて追い風ムードのようです。

また,ロウズの決算を見ても,雇用増・給与増・原油安による可処分所得の増加により住宅修繕用品市場はポジティブだとのコメントがありました。また,住宅価格・住宅評価額も上昇傾向と言うことで,持ち家のオーナーは自宅の改修に投資するのに積極的だとも。(米国では「自宅修繕=不動産価値アップのための投資」です。)

住宅が強いと言うことは,米国の景気が底堅い問うことにほかならないので,当分は米国内需系の優良企業は安心して見ていられます。(ホーム・デポはメキシコ等数カ国に店舗を出していますが,ほぼ米国内需依存企業です。)

何が明暗を分けたか

ロウズの説明によると,トランザクションが伸びなかったのは7月の天気のせいだとか…本当でしょうか?決算でもアナリストらから突っ込まれまくっていました。少なくともホーム・デポのトランザクションは天気の影響を受けてないように見えるので,ロウズだけ雨に弱い理由を教えて欲しいものです。(笑)

ロウズのマーケティング方法に何らかの問題が潜在的にあるように思います。特に個人的に気になるのは,「プロ向け」です。ホーム・デポはプロ向けの売上が伸びていると報告していますが,ロウズの決算報告はそのあたりが曖昧でした。

ロウズの株主対策

ロウズ・カンパニーズは,ホーム・デポと並んで米国ホームセンター業界においてはワイドモート企業であり直近で経営が不安定になるような心配は全く不要だと思います。ただし,業界を2社で寡占していることもあってロウズは常にトップランナーのホーム・デポと比較される立場にあり,成長性や収益性についてホーム・デポを意識したガイダンスを出さざるを得ない立場にあります。そうした苦しい台所事情の中で,ロウズは潤沢なキャッシュフローをほとんど自社株買い(10年平均6.1%!)として還元することで株主にアピールしている状況です。

これって,どこかで見た構造だとお気づきの方も多いと思いますが,IBM(IBM)がまさにそうです。IBMは売上などの指標で成長に陰りが見える中で,事業変革が完了するまでのつなぎの戦略として,莫大なフリーキャッシュフローを配当と自社株買いにつぎ込んでいます。この作戦は今年は当たっており,投資先としてはピカ一の人気を誇ります。

2016年Q2の決算では,成長性に疑問符がついたロウズ・カンパニーズですが,IBMと同じく株主還元を強化するでしょう。8月17日の本日は-6%と大きく下がっていますが,2016年のキーワードとして(FRBの利上げ先送りと各国中央銀行の金融緩和により国債の魅力が低下したことで)『利回り重視の株式』が人気です。数週間は株価が冷え込むでしょうが,その後再び利回りハンターの目にとまり買い戻されると思います。(もちろん,ロウズ自身が自社株買いしますが。)

下図はロウズのチャートですが,直近では出来高の雲が$74あたりにあり,これを割ると$68あたりまでの真空地帯があります。

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オムニチャンネル=オンラインセールスの伸び

ホーム・デポの決算の中で特に好調な数字だったのは,オンライン部門の売上でYoYで+19%の伸びを見せており,全体の5.6%にまで成長しています。両社ともにオムニチャンネル戦略を採っていますが,どうもホーム・デポの方が先行しており成功しているようです。

ホーム・デポの質疑応答で「オンライン注文の42%は店舗で受け取っている=FODFS, Buy online, Deliver from Store」というコメントがありました。こういう使い方をするというのは,顧客は自宅や勤務先に商品を届けてもらうのが目的ではなく,「確実に欲しいものを注文したい」というのがオンラインを使う目的になっていると考えられます。もちろん,店舗に足を運んでもいいのですが,馬鹿でかい店舗なので商品が決まっているならオンラインで指名買いしたいと。

長期的に見れば”Everything Store”であるアマゾン(AMZN)が参入しないはずがありませんので楽観視はできません。しかし,住宅修繕用品という限られた商品カテゴリーにおいては,現時点では規模の経済を生かした購買力と品揃えの点で,ホーム・デポやロウズがアマゾンを圧倒していると思います。

こうした「限られた商品カテゴリーにおいて確実にアマゾンに勝つ」ことは,Un-amazonableな企業として生き残るために必須な要素であるため,今後の決算ではオンライン部門の売上成長率も注目していこうと思います。

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