マクドナルド(MCD) 企業分析

デフレ・リセッション・景気後退・賃金下落といった話が出れば,cheap food銘柄であるマクドナルドは買いです。鉄壁のディフェンシブ銘柄の一つと呼んでいいマクドナルド(MCD)について分析します。

企業ホームページ

McDonald’s

セクター

一般消費財・サービス(レストラン)

企業状況

マクドナルド(MCD)は,外食産業で世界首位のハンバーガーチェーンです。1955年創業で,短時間で気軽に食事を楽しむファストフード文化を根付かせました。

店舗の数は199カ国で3万6525店に及びます。マックカフェやドライブスルー専門店なども運営しており,米国ではドライブスルーでの販売が過半数を占めます。チェーン全体での利用客数は1日あたり6900万人に上ります。

2014年12月31日時点
従来のフランチャイズ店 21,147
ライセンス契約店 5,529
海外のアフィリエイト店 3,405
フランチャイズ 30,081 (約8割)
直営店 6,444 (約2割)
マクドナルド全体 36,525

収益の柱は,直営店経営とフランチャイズによる収入です。(日本マクドナルドはロイヤルティ使用料として売上の3%を米国本社に納めています。)

近年は健康志向や競争の激化,新たな食文化が存在感を増し逆風です。フランチャイズの経営方針の見直しなどを行っています。2015年には直営店の数がわずかながら減り,フランチャイズ店舗数が伸びました。これは,米マクドナルドの直営によるリスクを低減させつつ,フランチャイズによるロイヤルティ料を集めるビジネスにより傾斜していくことを狙ったものだと考えられます。

実際,現在のフランチャイズ率80%を95%に引き上げようとしています。(“We continually review our mix of Company-owned and franchised restaurants to help optimize overall performance, with a goal to be 95% franchised over the long term. “直営店削減によるコスト減・投下資本減を狙ったもの。)米国本社は,グローバルなマクドナルド・フランチャイズのブランド管理会社に化けようとしているわけです。※その分,店舗数の増加ペースは落ちます。

海外売上比率は68.5%と非常に高く,ドル高の影響で売上は伸び悩んでいます。
米国31.5%,欧州40.4%,アジア太平洋中東アフリカ23.0%。

歴史

レイ・クロックとディック・クロックの兄弟により1955年に創業されました。ディックはもともと小さなハンバーガーレストランを経営していました。その後,紆余曲折は自伝(成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS))を読んでいただくとして,1990年代以降のアップダウンをまとめます。

低迷の1990年代

マクドナルドは1990年代のジャック・グリーンバーグCEO時代に一度業績不振に陥りました。グリーンバーグが推し進めたのは「made for you」(あなたのために作ります)キャンペーンで,その結果調理時間が延び,マクドナルドの成長はマイナスに転じました。(ファストフードは速度が命なので,手間暇かけるサービスは逆効果でした。)

復活の2003年

ジャック・グリーンバーグは2003年に更迭され,ジム・カンタルポCEOに交代となりました。カンタルポは2003年から2004年の心臓発作による急逝までわずか1年程度の期間,CEOを勤めました。期間としては短かったですが,カンタルポはマクドナルドの業績回復に成功しました。カンタルポがやったのは,店舗の清掃・品質向上でした。グリーンバーグ時代の急激な出店ペースを改めて,出店数を絞り込むことで店舗間のカニバリズムを防ぎました。また,バーガーキングとの値下げ競争もやめました。

成長の2004-2012年

カンタルポCEOの死語,ジム・スキナーがCEOとなりました。スキナーはカンタルポと同じく既存店舗の改善に取り組みました。(スターバックス(SBUX)会長のハワード・シュルツと似ていますね。)

すでにマーケットリーダーとして確固たるブランドを築いているならば,特別な戦略というものは必要ないという典型的な例です。地道に既存店舗の価値向上・ブランド価値向上を推し進めていくのが最も重要だということでしょう。珈琲屋であるならコーヒーの香りのする快適な空間作りですし,ハンバーガー屋であるなら速やかに熱々のバーガーを提供するというごく基本的なことです。

ジム・スキナーCEOのもと,EPSは$1.93(2004年)から$5.36(2012年)へと大きく成長しました。

再度低迷の2012-2014年

2012年,スキナーが引退し,ドナルド・トンプソンがCEOとなりました。この時期,マクドナルドのサービス品質の低下,従業員のモチベーション低下(低賃金労働)などの問題が発生し,2014年のEPSは$4.82と,スキナーCEO時代よりも低下してしまいました。

復活の2015年

トンプソンCEOは更迭され,2015年3月にスティーブ・イースターブルックがCEOに就任しました。イースターブルックは直営店従業員の賃上げや,メニューのスリム化(サンドイッチなどの削減)などの改革を行いました。また,米国で人気の「オールデイ・ブレックファスト(いつでも朝食メニューを頼める)」を始めるなど,既存店価値の向上を目指しています。

まだ,就任して丸1年程度ですが,徐々に効果は出始めており,既存店売り上げが4%成長とトンプソンCEO時代の低迷から反転しつつあります。

収益構造

フランチャイズ売上の13%程度が本社の収益として入ってきています。フランチャイズ店舗はコストがかからずに儲かる家賃収入のようなものなので,フランチャイズ収益が増えていけばグロスマージンは改善していきます。

コストの欄を見ていただけばわかるとおり,本社にとってのフランチャイズはドル箱です。(直営店は売上の8割がコストで吹き飛ぶのに対し,フランチャイズ収益は8割が残ります。)

2,015 2,014 2,013 2,012 2,011 2,010
フランチャイズ売上 $ 66,226 69,617 70,251 69,687 67,648 61,147
直営店売り上げ $ 16,488 18,169 18,875 18,603 18,293 16,233
フランチャイズ収益
(本社への上納金)
$ 8,925 9,272 9,231 8,964 8,713 7,842
総売上 $ 25,413 27,441 28,106 27,567 27,006 24,075
直営店コスト $ 13,977 15,288
フランチャイズ店コスト $ 1,647 1,697  略  略
営業利益 $ 7,146 7,949 8,764 8,605 8,530 7,473
純利益 $ 4,529 4,758 5,586 5,465 5,503 4,946
フランチャイズ料比率 % 13.48% 13.32% 13.14% 12.86% 12.88% 12.82%

フランチャイズ比率推移

比率 2,015 2,014 2,013 2,012 2,011 2,010
直営店舗数 17.6% 6,444 6,714 6,738 6,598 6,435 6,399
フランチャイズ店舗数 82.4% 30,081 29,544 28,691 27,882 27,075 26,338
トータル店舗数 36,525 36,258 35,429 34,480 33,510 32,737

成長市場

外食産業の市場は年率3%程度で成長見込みです。

Global-food-services-sales-forecast-2013-2017

競合状況

マクドナルドの競合はケンタッキー・フライドチキンやピザ・ハットを運営するYUM!Brands(YUM),シェイクシャック(SHAK),チポトレ・メキシカン・グリル(CMG)などのファーストフード店です。

YUM!Brandsの売上は$13,820M程度でありマクドナルドの約半分です。業種もフライドチキンやピザなどこってりした油料理が中心であり,マクドナルドとは嗜好が異なります。おそらく直接は競合していません。

やはり直接的な競合となるのは,高級ハンバーガーチェーン店であるシェイクシャックでしょう。私は食べたことはないですが,東京の旗艦店では行列ができているという話を聞いたことがあります。一過性のブームではないということでしょう。

競争優位

マクドナルドの強みは圧倒的な知名度(ブランド力94点),規模の経済を生かした低コスト体質,そして日本を含む世界中からロイヤルティ料を回収する集金能力です。特に集金マシーンと化したフランチャイズ・システムを作り上げた元祖がマクドナルド(MCD)であり,このシステムがある限り経営が傾くことは考えられません。

広告宣伝費

2015年の広告宣伝費は$718.7M(売上$25,413Mの約3%)に上ります。コカコーラ(KO)の広告宣伝費が$3,976M(売上$44,294Mの約9%)と比べたらかわいいものですが,それでも,競合であるYum!などと比べれば群を抜いて宣伝にコストをかけています。

最近のマーケット状況

5年チャート

2015年のCEO交代による業績改善が評価され,株価は$80~$100のレンジ相場から上にブレイクアウトしました。

mcd-5yr-chart-20160401

日足チャート

mcd-daily-chart-20160401

先四半期のキャッシュフロー

先期は借入を増やしています。

直近株価評価

 

10年ファンダメンタル分析

10年ファンダメンタル レーダーチャート

マクドナルド(MCD)は極めて強固なブランド力を背景とした高収益企業であることがわかります。通常,外食産業や小売業といった業種は収益力に難ありというケースが多いのですが,フランチャイズからの集金マシーンと化したマクドナルドは違います。

残念ながらここ数年は成長力が低迷していましたが,2015年以降の復活劇が本物であれば株としても魅力あるものになってくると思います。

10年ファンダメンタル 得点表

5年平均 5年スコア 10年平均 10年スコア 配点
配当株総合評価 312 367 500
グロース株総合評価 非該当 非該当 非該当
グロスマージン(粗利率) 38.8% 32 38.6% 32 32
営業キャッシュフローマージン 25.3% 21 25.3% 21 28
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) 36.8% 20 33.9% 20 20
有機的成長率(ROE x 内部留保率) 15.8% 6 16.5% 6 12
無機的成長率(BPS成長率) -6.8% 0 -3.4% 0 8
収益力評価 79 79 100
営業キャッシュフロー増加率 -1.8% 0 4.2% 10 40
フリーキャッシュフロー増加率 1.3% 8 6.2% 24 32
EPS増加率 -1.9% 0 5.4% 21 28
成長力評価 8 55 100
自己資本比率平均値 43.2% 30 44.7% 30 40
流動比率(流動資産/流動負債) 152.2% 30 141.6% 20 40
クレジット格付け 14 15 14 15 20
財務健全性評価 75 65 100
平均配当利回り 3.5% 28 3.6% 28 28
自社株買い利回り 2.0% 8 2.8% 12 16
配当金増加率 6.3% 14 13.2% 28 28
配当性向(増配余地) 55.6% 0 53.6% 0 28
株主還元評価 50 68 100
ブランド力 94 60 94 60 60
エコノミック・モート Wide 40 Wide 40 40
定性的評価 100 100 100
機関投資家比率 69.0% 4 69.0% 4 8
機関投資家の売買動向 -5.6% 2 -5.6% 2 8
インサイダーの売買動向 -5.3% 4 -5.3% 4 8
現在の株価 240.2% 0 240.2% 0 12
現在のPER(Forward) 21.06 4 21.06 4 16
現在の配当利回り 2.8% 12 2.8% 12 16
(配当+自社株買い)利回り 5.9% 12 6.7% 16 16
疑似債権成長率 18.8% 4 18.8% 4 16
直近株価評価 42 46 100

10年分析グラフ

デフレをものともせず2006年〜2011年まで成長を続けてきました。ここ数年はやや伸び悩んでいますが,高収益体質は維持しています。PERは高めで推移しており,ここから買いに行って報われるかどうかは注意が必要です。

mcd-10yr-analysis

優良銘柄の条件

優良銘柄の条件 結果 判定 備考
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ  特になし。 ×
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある  人口増に合わせて成長余地あり
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい 極めて美しいです。外食とは思えないバランスの良さです。

One thought on “マクドナルド(MCD) 企業分析

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です