コカ・コーラ(KO) 企業分析

爽健美茶から綾鷹・”い・ろはす”へ。

コカ・コーラ(KO)は米国外で現地開発したビリオン・ダラー・ブランド(1000億円超の売上を誇るブランド)を5つ持っています。かつては爽健美茶がビリオン・ダラー・ブランドの一員でしたが,消費者の好みが伊右衛門をはじめとする緑茶にシフトしたのを悟ると,新たに綾鷹を全面に押し出し新たなビリオン・ダラー・ブランドにまで育て上げました。変化に対しワンテンポ遅れながらもしっかり対応するというのがコカ・コーラの真骨頂です。

 

近年の業績はドル高の影響もあり横ばいかやや低迷が予想されています。業界的にはコモディティであるだけに,他社製品との差別化要素はほぼマーケティングに頼っています。それだけにいかに巨額の資本を宣伝に投下し,効果的に消費者にコカ・コーラブランドを印象づけるられるかで今後の成長性が大きく左右されます。

経営手腕という観点では同業のペプシコ(PEP)の方が現時点では勝っていると思います。というのも,ペプシコの方が先に消費者の炭酸飲料離れを予見し,買収や提携,多角的経営を通じて炭酸飲料に頼らない収益体質を作り上げることに成功してきたからです。それは裏を返せば高収益の炭酸飲料市場においてはコカ・コーラが圧倒的な地盤を固めているため,ペプシコとしては成長余地のあるニッチ領域(スターバックスと提携販売するコーヒー飲料や非炭酸系飲料)に行かざるを得なかった事情もあるとは思いますが。

コカ・コーラはというと,他社が切り開きつつある飲料水セクターに後発で割って入り,圧倒的なブランド力と経営資源を活用して「後追いマーケティング」で追いつく・追い抜くということを得意としています。飲料水のように変化の遅い市場では通常は後発ブランドの方が不利です。しかし,コカ・コーラの場合はマーケティング資源・能力に絶大な信頼を置いているからこそ,相手の出方を見てから動く横綱相撲をとれるのでしょう。

現時点では,安定を求めるなら横綱コカ・コーラ(KO),変化に対応する機動力と成長を求めるならペプシコ(PEP)でしょうか。

ただし,コカ・コーラも将来的には再フランチャイズ化プランを策定しており,それが順調に実施されれば米マクドナルド(MCD)本社のような「のれん管理業を行う集金マシーン」へと変貌を遂げる可能性があります。(※詳細は後述)数年がかりのプランなので長期的に実施状況を見守っていきたいと思います。

マイナス面

ちなみに,コカ・コーラに限らず,ボトル詰め飲料は濃縮シロップや原料粉末を水で薄めてボトリングしているだけだと言うことが決算報告書に書かれており,飲む気を削ぎますね。ウォーレン・バフェットは年次総会で「毎日コカ・コーラから700kcalのカロリーを摂取している」とか訳の分からないことを言っていましたが,確かにチャーリーと一緒になってコカ・コーラをがぶ飲みしていました。アメリカの年配の世代は健康なんて気にしないで炭酸飲料を大量消費してくれるので,コカ・コーラ株主としては安泰ですね。今後の大きな課題はミレニアル世代をはじめとする健康志向の世代です。

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こんなソーダ・ファウンテイン(レストランとかホテルにある炭酸飲料製造装置)の中身はこんな原液が詰まっています。(“fountain syrups”)syrupbox

 

企業ホームページ

Coca-Cola Company

セクター

生活必需品セクター(飲料ーソフトドリンク)

企業概要

コカ・コーラ(KO)はペプシコ(PEP)と並ぶ世界最大の炭酸飲料・清涼飲料水メーカーです。創業は1886年と古く,連続増配年数53年の配当王です。ノンアルコール飲料と言うことで生活必需品であり需要が急増することがない代わりに急減することもないという高配当ディフェンシブ銘柄です。

広告宣伝費は世界第8位でありペプシコと双璧をなす圧倒的な知名度・ブランド力を有します。また,マクドナルド(MCD),ビザ(V)やナイキ(NKE)などと並んでオリンピック・オフィシャル・スポンサーを長年勤めています。

ブランド総数は500を超えており,炭酸飲料が売上の73%を占めていることからも分かるとおり,炭酸飲料には非常に強いです。炭酸飲料ブランドの世界上位5つのうち4つ(コカ・コーラ,ダイエット・コーク,ファンタ,スプライト)を保有しています。早くから世界展開を推し進めており,現在では200カ国以上でボトル入り飲料を販売しています。

最近はモンスター・ビバレッジ(MNST)やドクター・ペッパー・スナップル・グループ(DPS)との販売提携を結んでおり,コカ・コーラの輸送網・販売網を活用してモンスター・エナジーなどの飲料を販売しています。

経営陣

CEO:ジェームズ・クインシー

規模

従業員数:123,000名
拠点:世界200カ国
地域別売上:米国47%,海外53%

ビジネス

輸送や販売はコカ・コーラ自社保有のネットワークまたはコカ・コーラが管理する提携企業のネットワークを通じて行われます。全世界の飲料水消費総数580億本のうち19億本がコカ・コーラブランドですので,世界シェアは3.3%に相当します。

コカ・コーラは自社開発した『濃縮原液(“concentrates”とか”beverage bases”と呼ぶ,フレーバーや甘味料が入ったもの)』,『シロップ(“syrups”)』,『原料粉末(“powders”,飲料水Dasaniを作るための魔法の粉)』をボトラーに販売しており,ボトラーがこれらの原料を薄めてボトリングしています。

もちろん,最初からコカ・コーラで自社ボトリングした製品群(“finished product”)もありますが,これらの最終製品ビジネスは濃縮液ビジネスと比較して,売上は大きいもののグロス・マージンが低いとのことです。現地で薄めた方が輸送費等の関係で効率がよいのでしょう。

ブランド

ノンアルコールの飲料セクターほぼ全てで強力な製品を持っています。

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その中でも特に儲かる部門は炭酸飲料で,水に近いほど利益率は低いようです。

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とはいえ,非炭酸飲料やジュース部門は,コカ・コーラの市場シェアは15%〜20%とまだまだ低く成長余地が残されている貴重な領域です。今後は利益率を犠牲にしながらも,薄利多売体制で非炭酸飲料やジュースの売上成長を狙っていくのだと思います。

逆に炭酸飲料では50%以上のマーケットシェアを取ってしまっているため,成長余地がなく,80年代から90年代に見られた売上・利益の急成長は期待しない方がよいでしょう。

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近況

コカ・コーラは変革の一環として,現在のマクドナルド(MCD)と似たような「再フランチャイズ化」を行っています。具体的にはコカ・コーラ本社がボトラーを抱えるのではなく,フランチャイズとして独立させることで12万人いる本社人員を1/3の39000人まで削減するという大胆なものです。規模だけで言うなら,マクドナルドよりもドラスティックです。

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人員大幅削減に等しい大改革(ボトリング事業を人員含めて丸ごとフランチャイザーに売却するようなもの)ですが,これはさすがに期日は決められていません。中期的な目標と言うことでしょう。

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大改革(再フランチャイズ化)の狙い

再フランチャイズ化実施後の予想収支は以下の通りで,ボトラー部門がスリム化することで売上は約6割に減少しますが,グロスマージン,営業利益率,フリーCFマージンが大幅に改善されるという算段です。

それもそのはずで,ボトラーが無くなれば残った本社部分は「原液の製造販売」と「マーケティング」が主たる業務であり,コスト(輸送網やボトラー部門の人件費,設備)とリスク(原材料費,為替の影響)を両方とも別会社に移管することができるからです。確かにごもっともな話ですが,押しつけられたボトラー側(おそらくコカ・コーラ・ボトラーズXXXXXという名前の会社がいくつも誕生する)は,負担を一身に背負わないといけないので大変ですね・・・。

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地域別分析

地域別売上

2011年以降ドル高の影響で顕著に米国外の売上比率が低下しています。

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地域別営業利益率

一方,営業利益率を見ていると,米国の利益率がダントツで悪いことが分かります。それに対して,欧州やラテンアメリカでは営業利益率が60%前後もあり優秀なのと比較すると,米国本社は10%程度と業績の足を引っ張っていることが明白です。

この背景として,米国外ではボトラー部門が最初から別会社(フランチャイズ)であることが影響しています。米国本社は利益率の低いボトラーを抱えているために,他の地域では不要な工場設備・人件費がかかってきます。お荷物となっている「米国本社のボトラー部門」をいかにスムーズにリストラクチャリングするかが今後のコカ・コーラ経営陣の上での見せ所です。

もう一点気になるのは,米国本土の営業利益率が,もともと各地域別で最低だったとはいえ2010年以降さらに低迷している点です。何か大きな問題が隠されているとしか思えません。

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市場

ちょっと古いですが2013年の世界でのソフトドリンク市場の内訳です。炭酸飲料がなんと4割以上を占めており,次いで水が3割,果物ジュース・野菜ジュースが2割,という内訳です。コカ・コーラはこの最大市場である炭酸飲料部門で世界首位であり,利益の源泉となっていることが分かります。

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また,米国内に目を向けると果物ジュース・野菜ジュースの市場が1割弱と小さく,その代わりに水の市場が大きいことが分かります。おそらくバフェットの時代と比べて,ミレニアル世代が炭酸飲料から水へと嗜好が移り変わったのだと思われます。
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ちなみに日本はと言うと,炭酸飲料は1970年代に頭うちし,それ以外のコーヒー飲料,ミネラルウォーター,茶系飲料などさまざまな飲料が成長しており,バラエティに富んでいます。

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競合状況

主な競合はペプシコ(PEP)のほか,ドクター・ペッパー・スナップル・グループ(DPS)などです。

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シナリオ(SWOT)

機会 脅威
強み ドル安
弱み ドル高
炭酸飲料離れ

 

最近のマーケット状況

25年チャート

1999年のITバブルの際に高値を付けて以降,10年間程度低迷の時期が続きました。$13〜$25の間に巨大な出来高のピークがあります。

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5年チャート

2009年以降は順調に株価が上昇してきました。EPSが2012年以降低迷していることを考えると,2013年以降の株価は相場が好調だったおかげで維持できいると考えられます。(いわゆる連れ高気味。)

slb-5yr-chart20160527

日足チャート

ディフェンシブ銘柄らしく,ここ最近の相場の大きな調整にもめげず,大きな下落は発生していません。

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10年ファンダメンタル分析

10年ファンダメンタル レーダーチャート

言わずと知れた,ブランドランキング10年連続1位のワイドモート企業です。収益力は抜群の安定を誇ると言っていいでしょう。ただし,成長性に関してはここ5年が特に停滞・低迷しており,営業CF,フリーCF,EPSどれも横ばいに近い状態にまで落ちてきています。

10年ファンダメンタル 得点表

収益力の安定性に関してはさすがとしか言いようがありません。それだけ,炭酸飲料の原液ビジネスは原価が低く,儲かると言うことです。財務の数字を見てみると流動比率が低く感じますが,100年間続くローリスクビジネスモデルでありほぼ公益企業並みの安定感があることを考えれば問題ありません。

配当性向も2015年(83%)はやや増配が懸念される水準まで上がってきていますが,今後のトランスフォーメーションを行う数年間を乗り切るだけの資金力は十分にあり,連続増配面でも問題ないと思います。

5年平均 5年スコア 10年平均 10年スコア
配当株総合評価 312 340
グロース株総合評価 非該当 非該当
グロスマージン(粗利率) 60.7% 32 62.5% 32
営業キャッシュフローマージン 22.5% 14 23.7% 14
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) 26.3% 20 27.8% 20
有機的成長率(ROE x 内部留保率) 11.3% 3 13.4% 3
無機的成長率(BPS成長率) -3.9% 0 4.5% 0
収益力評価 69 69
営業キャッシュフロー増加率 2.1% 10 5.9% 20
フリーキャッシュフロー増加率 4.0% 16 5.8% 24
EPS増加率 -1.9% 0 4.5% 14
成長力評価 26 58
自己資本比率平均値 36.8% 30 41.0% 30
流動比率(流動資産/流動負債) 109.0% 10 107.0% 10
クレジット格付け 17 20 17 20
財務健全性評価 60 60
平均配当利回り 3.1% 28 3.3% 28
自社株買い利回り 1.1% 8 0.6% 4
配当金増加率 7.0% 21 7.8% 21
配当性向(増配余地) 56.7% 0 55.9% 0
株主還元評価 57 53
ブランド力 100 60 100 60
エコノミック・モート Wide 40 Wide 40
定性的評価 100 100
機関投資家比率 63.0% 4 63.0% 4
機関投資家の売買動向 -2.3% 2 -2.3% 2
インサイダーの売買動向 -0.4% 6 -0.4% 6
現在の株価 141.2% 3 141.2% 3
現在のPER(Forward) 21.84 4 21.84 4
現在の配当利回り 3.1% 16 3.1% 16
(配当+自社株買い)利回り 4.4% 12 4.3% 12
疑似債権成長率 15.2% 4 15.2% 4
直近株価評価 51 51

10年分析グラフ

SPS,OCFPS,FCFPS,EPS,DPSのバランスは見事です。これだけ安定して高収益をあげられる企業は,サービス業以外ではアップル(AAPL)やマイクロソフト(MSFT)など一部の超優良企業に限られます。極めて深いワイドモートがあると言えます。

キャッシュフローに関しても常に高い水準でフリーCFを稼げており,目下問題はありません。

唯一の問題は売上の頭打ち問題でしょう。

バリュエーション的には,2012年以降の売上頭打ち・成長鈍化が見込まれる現状では,PER20倍超えはさすがに割高です。この値付けは『安心プレミアム』(投資家が安心を買うためにローリスク銘柄が高値になってしまうプレミアムのこと。リスクプレミアムの逆の現象。)だと思います。

ko-10yr-analysis

優良銘柄の条件

優良銘柄の条件 結果 判定 備考
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ 不朽の炭酸飲料ブランド『コカ・コーラ』
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある 人口増のペースで成長余地はあるが,炭酸飲料部門自体は徐々に社会のトレンドから外れる方向。
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい 極めて高い収益性で美しいプロポーション。

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