原油価格の先行きは予想すべからず

岩瀬昇氏の『原油暴落の謎を解く』を読みました。

原油価格の動向について述べた箇所については良いのですが,ところどころ岩瀬氏が商社マンだった頃の裏話が挿入されており脱線が多いです。そのため推薦はしませんが要点だけ紹介したいと思います。ご興味のある方は書店で手に取ってみていただければと思います。

本書の最重要ポイントは,「エクソン・モービルでさえ原油価格は予想不可能だとさじを投げてしまっている」点です。我々個人投資家も原油価格の予想はしないようにした方が賢いです。

では,投資家としてエネルギー産業に手を出さない方がよいのかというとそういうわけではありません。原油価格の極端な変動に耐えられる強固な財務体質・堅実な経営陣を要する企業を選ぶというのが王道です。

逆に言えば,エネルギー産業は原油価格の変動が極めて大きいことから,多くの企業は安全域(Margin of safety)が小さいことになります。減配や無配,あるいは企業再生(チャプター11)といったこともあり得ると心に留めて投資すべきです。

 

要点

  1. 原油価格は需給からは予測できない
    ※エクソン・モービル(XOM)の1980年〜2000年までの原油価格予想が大きく外れた原因は,原油価格は地政学の影響が大きすぎたため。需給自体は予測可能だが,需給予測による原油価格予想は不可能。
  2. 原油価格は先物市場(の思惑)が決める
    ※セブン・シスターズやOPECなどが談合して価格を決められる時代はとっくに終わっている。
  3. 原油埋蔵量とは「経済的にペイする埋蔵量」を指す
    ※よって,埋蔵量が増減するのは当たり前。
  4. 原油は枯渇しない
    ※原油は採れば採るほど採算が悪くなっていく地下資源ではあり,「取り残し」が大量に地下に眠っている。原油価格が高騰すれば数年でそうした「取り残し」も採算がとれるようになり埋蔵量が増加する。
  5. 在来型石油井は一度掘り始めたら掘り続けるしかない融通の利かないもの。
    ※そのため,原油価格下落しても操業停止するところはなく,むしろ生産量を増やそうとする
  6. シェールオイルのシェアは2040年でも10%程度と小さく,在来型石油がシェアの9割超を占める。
  7. シェールオイルを開発可能なのはアメリカとカナダだけ。
    ※シェールオイルが土地所有者の権限で掘り出せるのはアメリカ・カナダだけ。また先端技術の塊の知識集約産業であり優秀な人材の揃った米国以外では真似できない。
  8. アメリカ全土の地質調査は終わっており「探索」不要。いきなり「開発」からスタートできる。
    ※スタンダード・オイル以降,全土が探索済みで詳細な地質情報サービスが用意されている
  9. 日米欧の石油需要は頭打ち。アジアでの石油需要は人口増と経済成長により増加見込み。
  10. 石油はいずれは別のエネルギーに代替される
    ※『石器時代が終わったのは石がなくなったからではない』→産油国の黄金時代も永遠ではない。たとえば,電気自動車や燃料電池車のような輸送燃料の代替が進むとまずい。

 

 

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