JPモルガンチェース(JPM) 企業分析

言わずとしれた大手米国銀行持ち株会社です。特筆すべきは現CEOのジェームズ・ダイモンです。

JPMorgan Chase CEO Jamie Dimon, head of the largest bank in the United States, testifies on Capitol Hill in Washington, Wednesday, June 13, 2012, before the Senate Banking Committee about how his company recently lost more than $2 billion on risky trades. (AP Photo/J. Scott Applewhite)

2004年から足かけ12年ほど同行の舵を取っており,その間純資産は順調に伸びています。チェース銀行が母体となっているリテール銀行部門への投資(クレジットカード,オンラインバンキング,ATMなどのサービス強化)が実っており,米国での預金シェアが伸びています。投資銀行とリテール銀行と言えば,華では投資銀行部門に軍配が上がりますが,地道に顧客サービスを改善してブランドイメージを向上させてきたことがリテール銀行部門の安定した業績につながっています。

いわば「銀行業務のポートフォリオを組む」マネージャーがジェームズ・ダイモンというのが言えるのではないでしょうか。リテール銀行・投資銀行・商業銀行にうまくリソースを配分し,多角的で安定した収益構造を築いてきた経営陣の手腕は高く評価できると思います。

また,業界全体が沈没しかけた2008年のGreat Recessionもウェルズ・ファーゴ同様に痛手を被ることなく乗り切り,事業拡大に成功しました。買収も自己資本内で行う方針であり財務体質は健全で,安定成長銘柄と言えるでしょう。銀行セクターの中ではウェルズ・ファーゴ(WFC)やUSバンコープ(USB)と並んで安心です。

企業ホームページ

JP Morgan Chase

セクター

金融セクター(銀行)

企業状況

世界60カ国以上に営業拠点を持つ世界有数の金融グループです。2000年にJPモルガンとチェース銀行が合併して誕生しました。その後も2008年にはベア・スターンズやワシントン・ミューチュアルを買収するなどして拡大を続けています。

投資銀行業務,企業及び資産家向けの金融サービス(プライベートバンキング等)を行うほか,富裕層を中心に百万人の顧客を擁しています。特に投資銀行業務が強くヘッジファンド部門は世界最大です。M&Aのアドバイザリー手数料なども大きな収益源です。

市場

投資銀行業務による収益見通しですが,トレンドとしてはEquities(株式)微増,Fixed Income(債権)減少,投資銀行(横ばい)といった感じでしょうか。

JPMorgan-2005-and-2006

 

過去の収益構造を見ていても2010年〜2011年頃にFixed Income(債権)による収益が一時的によかったもののその後落ち着いてしまっている構図が読み取れます。※FICCはFixed Income Currencies & Commodities。

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競合状況

投資銀行部門の主な競合はゴールドマン・サックス(GS)やバンク・オブ・アメリカ(BAC),モルガン・スタンレー(MS),シティ・バンク(C)などです。

リテール銀行部門の競合は,ウェルズ・ファーゴ(WFC)やUSバンコープ(USB)などが該当します。

主な業績

2015年通年決算

売上 $97B
費用(Overhead ratio) $56B 売上の58%に相当。将来的な目標は55%
純利益 $24.4B
EPS $6.00
株主還元(CET) $11B 売上の11.6%に相当。
通常株式ROE(ROTCE) 13% 将来的な目標は15%

競合との比較

売上・純利益ともに2015年は業界一位でした。ROTCE(通常株式についてのROE)はウェルズ・ファーゴ(WFC)が1位,JPモルガンチェースが2位です。

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多角的経営

経営資源を多角化しているおかげで,他行よりもマーケット・ボラティリティに対して強いです。2015年は激動でしたがその中でも収益は毎月順調に積み上がっています。

JPM-diversity

セグメント構造

顧客は法人が6割,個人が4割を占めます。JPモルガンは法人部門,チェースが個人部門という感じでざっくり棲み分けがなされている様子です。

JPモルガンチェースの戦略として収益基盤の多角化(法人と個人,地域,部門)が掲げられており,2016年以降さらなる海外進出を狙っています。(現在は北米が売上の75%程度を占めており,欧州中東17%,アジア7%と海外比率はそこまで高くありません。まあ,ウェルズ・ファーゴが100%北米のみというのと比べれば,遙かに海外進出していますが。)

JPM-segments

セグメントの概要

JPモルガンチェースのセグメントは大きく分けて以下の4つです。

CCB Consumer & Community Banking リテール銀行部門はJPモルガンチェースの中でも最大の部門であり全売上の半分を占めます。ここ10年で預金シェアを2倍に増やしており,サービス品質の向上が着実に顧客獲得につながっている印象です。
ROE 18%,純利益$9.8B,売上43.8B
CIB Corporate & Investment Bank 投資銀行部門は全社売上の4割を占めます。こちらも非常に大きい部門です。
新興国経済の成長鈍化の影響,利上げなどさまざまな要因が絡んで来ますので,債券市場・株式市場のボラティリティが高い時期になると業績は予測しづらいです。
ROE 12%,純利益$8.1B,売上$33.5B
CB  Commercial Banking 商業銀行部門です。規模はあまり大きくありません。ただし,法人顧客の資金ニーズに対して融資(CB商業銀行部門)するか,それ以外の方法で資金獲得するか(CIB投資銀行部門)などのアドバイスを与えることができる間口の広さがあります。
ROE  15%,純利益$2.2B,売上$6.9B
AM  Asset Management  資産運用部門です。
ポートフォリオマネージャー600人,アナリスト250人,マーケット・ストラテジスト30人とかなりの人員を配置しています。
売上 12.1B

 

 

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最近のマーケット状況

5年チャート

jpm-5yr-chart-20160415

日足チャート

2016年4月13日の決算発表により急騰しています。$50〜$60の保ち合いから上離れしてくれたので,今が買いのタイミングだと思います。

jpm-daily-chart-20160415

先四半期のキャッシュフロー

JPM-cf-2016q1

直近株価評価

残念ながら私の分析法では,銀行セクターのような負債比率が高く,低収益率な構造の業態は正確には分析できません。ROEではなくROAで判断するとか,グロスマージンの基準値を引き下げるとかしないといけません。あくまで参考値です。

10年ファンダメンタル分析

10年ファンダメンタル レーダーチャート

10年ファンダメンタル 得点表

5年平均 5年スコア 10年平均 10年スコア
配当株総合評価 197 165
グロース株総合評価 非該当 非該当
グロスマージン(粗利率) 0.0% 0 0.0% 0
営業キャッシュフローマージン 78.5% 28 36.6% 28
株主資本利益率(ROE)平均値(Net Income/Equity) 10.2% 0 10.0% 0
有機的成長率(ROE x 内部留保率) 7.4% 3 7.7% 3
無機的成長率(BPS成長率) 5.3% 2 6.2% 2
収益力評価 33 33
営業キャッシュフロー増加率 -5.2% 0 -100.0% 0
フリーキャッシュフロー増加率 -5.2% 0 -100.0% 0
EPS増加率 6.0% 21 4.0% 14
成長力評価 21 14
自己資本比率平均値 8.7% 10 8.4% 10
流動比率(流動資産/流動負債) 0.0% 0 0.0% 0
クレジット格付け 14 15 14 15
財務健全性評価 25 25
平均配当利回り 2.9% 21 2.9% 21
自社株買い利回り 1.0% 4 -0.4% 0
配当金増加率 11.5% 28 2.4% 7
配当性向(増配余地) 28.6% 0 28.6% 0
株主還元評価 53 28
ブランド力 70 45 70 45
エコノミック・モート Narrow 20 Narrow 20
定性的評価 65 65
機関投資家比率 76.0% 4 76.0% 4
機関投資家の売買動向 -0.2% 2 -0.2% 2
インサイダーの売買動向 -0.6% 6 -0.6% 6
現在の株価 100.2% 9 100.2% 9
現在のPER(Forward) 9.68 16 9.68 16
現在の配当利回り 2.8% 12 2.8% 12
(配当+自社株買い)利回り 4.3% 12 3.3% 8
疑似債権成長率 8.8% 4 8.8% 4
直近株価評価 65 61

10年分析グラフ

金融セクターの分析には向いていない手法を採っていると知りつつもコメントすると,銀行という性質上,収益の波が大きくその結果,営業CFの波も大きくなってしまっているのでCF面で見た健全性がいまいち判断がつきません。成長基調を確認するにはBPSの伸びで判断するしかないように思います。ここ10年,BPSは順調に成長し続けており,ダイモンCEOの経営手腕は確かなものだと思います。

配当性向は現在で28%と低く,PERはForwardで9.68倍と割安です。増配余地は大きいと思います。

自社株買いと配当含めたNet Payout Ratio(株主還元性向)を,長期的には55-75%にすると公言しており,自社株買いにも積極的です。CEO自身,個人資産で自社株買いしていましたし,業績の割に株価が低迷している状態です。2016Q1の決算発表でのブレークアウトが本物かどうかを見守っていきたいと思います。

jpm-10yr-analysis

純利益イールド,配当イールド

2009年の減配($1.52→$0.2)が酷かったですが,現在は配当額$1.72に戻ってきています。当時減配に至ったのも,業績不振によるものと言うよりは規制強化により自己資本を強化することを要求されたためのようです。
JPM-yield-2016q1

優良銘柄の条件

 

優良銘柄の条件 結果 判定 備考
条件3:他社と差別化できる優れた新製品を持つ  なし ×
条件5:主力製品の市場が長期的に拡大し続ける余地がある 金融市場(株式・債権)自体は拡大する。
条件10:売上,営業キャッシュフロー,フリーキャッシュフロー,EPSのバランスがよい バランス悪い。年ごとのばらつきが大きい。 ×

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