クラウド主戦場はマジョリティ,ラガード攻略へ

現在のIaaS,PaaS,プライベートクラウドを全て含めたマーケットシェアランキングは以下の図に示すように,1位アマゾン(AMZN),2位マイクロソフト(MSFT),3位IBM(IBM),4位グーグル(GOOG)という順です。既に市場シェア30%を超える1強状態のアマゾンを各社が猛追している状態です。

一見すると盤石に見えるアマゾンですが,30%のシェアというのは薄氷のリードだと感じており,その理由をまとめてみたいと思います。

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クラウドサービスへの期待の変化

従来はクラウドサービスの売りというと,
①低価格,
②導入手続きの容易さ,
③メンテナンスのしやすさ
の3本柱でした。まさにアマゾンがAWSで前面に打ち出したメリットですね。これで,『高価格・手続き面倒・メンテは大変』なオンプレミスサーバー大手のIBMやオラクル(ORCL)などは滅茶苦茶にされてしまいました。(#まさにウォルマートが旧態依然としたバラエティストアを潰すときにやったような薄利多売でボリュームを稼ぐ戦略ですね。)

しかし,最近になってクラウドサービスに対する期待というものが徐々にシフトしているように思います。従来の3本柱に加えて,
④多機能さ(豊富なAPI),
⑤他のシステムやサービスとの接続の容易さ,
⑥処理速度,
⑦データの保守,
⑧セキュリティ,
などです。

顧客の変化

ここ10年間にアマゾン(AWS)を使用するようになった企業は,新しい技術の導入に積極的な『イノベーター型企業』が中心でした。ネットフリックス(NFLX)などが代表例です。まさに持ちつ持たれつで成長した親子のようなものです。(#『親』のインフラIaaSをアマゾンが提供し,『子』の配信サービスをネットフリックスが提供。)

それに対し,今後10年で拡大するであろうクラウド市場は,『乗り遅れ組の企業』と『個人』だと考えています。

乗り遅れ組の企業

私が乗り遅れ組と呼んでいるのは,フォーチュン500のような大企業やあるいはIT業界以外の中小企業です。

企業は様々な面で保守的でわがままです。既存の社内資産(主としてオラクルなど)を活用したいとか,社内の技術者が新しい言語・技術を覚えなくてもすんなり移行できるといった要素をカバーすることが必須の要求であり,価格は二の次です。

こうした市場背景の中で,クラウドで出遅れたマイクロソフトやIBM,オラクルが既存資産の有効活用を売りとして攻勢を仕掛けてきたというのが昨今の事情だと思います。

そもそも,『乗り遅れ組』なので急いでクラウドを導入する気などなく,じっくり吟味して手厚いサービスのところと契約しようとしている状態です。

こうした顧客は,アマゾンやグーグルが最も苦手とする客層です。アマゾンやグーグルはまさに技術者天国な会社でありシリコンバレーとは相性が抜群ですが,それと表裏一体でフォーチュン的な古参企業とは企業文化が違い相性が合いません。これが弱点になり得ます。

いまはクラウド黎明期とは異なり,従来のオンプレミス型の営業手法(見積もり比較とか導入支援とかサポートとか)がフィットする顧客層を攻略しないといけない時期です。

私はアマゾンやグーグルは企業文化を変えず,営業戦略も変えられないと考えています。

そこにマイクロソフト,IBM,オラクルなどの手厚いサービス(インフラそのものよりも,その後の導入支援や開発支援,アフターサービスなどの付加サービスで金を取る)に大きな勝機があると見ます。

最近の調査結果でも「導入予定のクラウドは1位マイクロソフトAzure 32%,2位 VMware vCloud Air 24%,3位AWS 22%」(ZDNet)となっており,また「金融業や製造業の回答者の多くは、Azureを選択した(それぞれ43%と50%)。一方、AWSを好む業界は、情報調査分析(33%)、医療および生命科学(29%)、テクノロジ企業(18%)だった。」(同記事)とのことです。

やはり企業文化によってマイクロソフトのようなブランドを選択してしまいがちという傾向が根強くあると感じます。(もちろん,既存資産の活用やセキュリティの高いプライベートクラウドに強いマイクロソフトの戦略の勝利ですが。)

今後

おそらくクラウドとしての技術的水準は,ぱっと比較した限りではアマゾン,グーグルが頭一つ抜き出ており,価格面では1位グーグル,2位アマゾンというような状況のようですが,それだけでは今後の成長は保証されないと考えた方がよいと思います。つまりは,今の4強のマーケットシェアは各社10%〜20%への収斂するのではないかというのが2016年現在の見立てです。

以上のような理由で,アマゾンの30%のシェアというのはリードとしては小さすぎ,マイクロソフトがウィンドウズで,あるいはグーグルがアンドロイドOSで勝ち得た80%のマーケットシェアのような不動のワイド・モートは築けず,今後の苦戦を予想します。まあ,アマゾンにとっては数多ある事業のうちの一つなので他に期待しましょう。

参考文献:『トルネード』(ジェフリー・ムーア)

 

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