雑学

相場には格言・迷信・アノマリーといった情報が溢れています。これらのネタを真に受けて投資するのはオススメしませんが,他の投資家がどういう行動を取るのか,歴史的にどういう値動きがよく起こり得るのかを知る上ではヒントになるでしょう。投資家にとっての教養の一環としてまとめます。

季節性

先物価格に強い季節性があるように,株式市場でも季節性が観測されています。ただし,株式市場インデックスの季節性は年ごとのばらつきが大きいため,明らかに需給が季節依存で変動する先物価格ほどは有用ではありません。
それでも,知っておけば他のトレーダーのセンチメントを正確に理解することには役立ちます。漁師が船出するときにざっくりとした天気予報を知っておくと役に立つという感じでしょうか。
アノマリー投資』ジェフリー・ハーシュ著には,S&P500, NASDAQほか各セクターETFの季節性が紹介されています。ただし,日本語版の『アノマリー投資』は読み物としてはいいのですが内容がかなり古いです。本格的に季節性を学ぼうと思うなら,「Stock Trader’s Almanac by Jeffrey Hirsch」がおすすめです。毎年冬に新刊が発売されますので今は2018年版が最新です。「株式投資アノマリー界の年報」と考えて毎年買っておけば1年を通じて楽しめるでしょう。
Stock Trader’s Almanacには,過去20年ほどのデータに基づいて,取引日1日ごとの騰落確率が紹介されています。下手なタイミングで売り買いを避けるためには参考になるでしょう。

(出所:「Stock Trader’s Almanac」(株式投資家のためのカレンダー) の1月のページに書かれているアノマリー。さらに興味があるならジェフリー・ハーシュ本家のサイトに会員登録するのもオススメです。月会費はかかりますが,買いシグナル・売りシグナルなどをメールで送ってくれるため,投資のタイミングが全くわからないという方には役立つでしょう。)

セクターローテーション

長期的な景況観・相場観こそが,長期投資家が短期トレーダーに勝てる重要なエッジです。
インフレ,デフレ,利上げ,利下げ,量的緩和,引き締め,ノーマライゼーション,etc
トレーダーが過去の高値(抵抗線)・安値(支持線)を見つけに行くのと同じような感覚で,長期投資家は過去の金利・物価・業績などを調べればいいということになります。

バブル

バブルというのは想像しているより身近に存在します。人は欲にかられやすく,また他人に嫉妬して理性を失う生き物だからです。

VIX(volatility indexes)

CBOEが開発したボラティリティーインデックスです。VIX指数と言えば,通常はS&P500インデックスのオプション取引の動きから算出される指数を指します。このVIX指数はCBOEの収益の柱に成長しており(特許取得済み @GooglePatent),現在はあらゆる商品に関するボラティリティー・インデックスを開発しています。(数学的にはどんな商品の値段についてもVIX指数を算出できます。VIX指数のVIX指数なども販売されています。)

VIX @stockcharts.com : チャート
CBOE VIX Whitepaper : 販売元が書いているだけあって分かりやすくて詳しい。

  • VIX指数は$SPX(S&P500)の次の30日間のボラティリティーの標準偏差を計算し,さらにそれを通年(365日相当)に直した上で平方根を取り,パーセント表示に直したものです。CBOEでは以下の数式で簡潔に表現しています。
  • なぜ標準偏差σが用いられるかというと,値動きが正規分布に従うと仮定しているからです。(#実際にはFat Tail = でかい尻尾,と呼ばれるように,相場では極端に大きな値動きが正規分布で予想される確率以上の頻度で発生するため,厳密に言えば正確ではありません。)
  • 年間取引日数を252日として簡易計算する方法がオプショントレーダーの間ではよく使われます。252日の平方根は15.87です。この15.87を用いて,「標準偏差から想定される1日あたりのボラティリティー」の目安を計算すると以下のようになります。いわゆる,1σ = 68%,2σ=95%です。
  • VIX = 16のとき:2/3の確率で$SPXの値動きが1%以下。1/3の確率で$SPXの値動きが1%以上。5%の確率(2σ)で$SPXの値動きが2%以上。
  • VIX = 32のとき:2/3の確率で$SPXの値動きが2%以下。1/3の確率で$SPXの値動きが2%以上。5%の確率(2σ)で$SPXの値動きが4%以上。
  • VIX = 48のとき:2/3の確率で$SPXの値動きが3%以下。1/3の確率で$SPXの値動きが3%以上。5%の確率(2σ)で$SPXの値動きが6%以上。

FAT TAILS

日々の値動きについてのファット・テール。正規分布で想定される確率よりもはるかに高い頻度で大きな値動きが発生します。(『ブラック・スワン』 by ニコラス・タレブ)

勝者と敗者

長期的なリターンに基づくファットテール。

以下の図を見れば「損切りできない人が必ず株式市場から退場させられる」カラクリが分かります。正規分布では考えられない数の敗者が存在するからです。株式市場で生き残るには,(1)勝者に長期投資するか,(2)日々の値動きを見て短期・中期トレードに徹するかの2択しかありません。

対Russel 3000指数

対投資元本

以下のチャートを見れば個別株投資がどれだけ効率が良いかがよく分かります。右端の優良企業に集中投資するバフェット流ならインデックスをはるかに上回るリターンを得られます。20%の確率で大外れ,20%の確率で大当たりなので,上位20%の企業を見つけ出し,下位20%を掴まないようにすればいいのです。
長期的には企業業績の成長率に近い水準に株価は収斂するので,業績的にハズレを引いたら損切りし,アタリを掴んだら永久に投資するという基本コンセプトで問題ありません。

超長期リターン

株式の長期リターンはあらゆる投資商品を上回ってきました。これは企業の事業価値がインフレに対して維持されてきたことを意味しています。
現金の価値は永続的に消滅し続け,その結果相対的に企業の価値は永続的に高まり続けるという通貨価値下落のトレンドは今後も変わらないため,「超長期では」株式投資は有利です。
ただし,このチャートには生存者バイアスがあり,コカ・コーラ(KO)など一部のモンスター企業が,100年以上成長を続け,株式市場全体のインデックスを牽引しています。
逆に言えば,日々発生する小型企業の倒産や吸収合併などのリスクは盛り込まれていません
株式投資の未来 永続する会社が本当の利益をもたらす』 ジェレミー・シーゲル著にある通り,永続し反映し続ける会社を見極めることが何より重要です。
勝者による市場寡占化と一極集中による富の集積を表した1枚なので,上のFAT TAIL(でかい尻尾)の図とあわせて見るようにしてください。

投資手法

相場は大きく分けて「トレンドがあるとき」「トレンドがないとき」の二つに分かれます。そして,トレンドがあるときに適した投資手法の大半は,トレンドが消えると途端に機能しなくなります。したがって,相場に取り組む上でもっとも最初に行うべきは,トレンドの有無を確認することです。トレンドがあればトレンドフォローを,トレンドが弱まっていれば転換点を探し逆張りを,トレンドが全くないチャブついた相場ならオシレーターを使っての短期売買に徹するなどの柔軟な取り組み方が求められます。

手法 トレンド 勝率 説明
あり なし
ADX トレンドの有無を確認するために使用するオシレーターです。
ADXは上昇トレンド・下落トレンドが出ている時に高くなり,トレンドが弱まるとADXは下落します。
ADX自体で売買するのではなく,他の売買シグナルの補助として使用します。
MA × 20-40% 10DMA, 50DMA, 200DMAなどが有名ですが,こうした移動平均線は上昇トレンドでは支持線となり,下落トレンドでは上値抵抗線となります。そのため移動平均線を上抜けしたタイミングでの買い,移動平均線を下抜けしたところでの売りが基本的な投資手法となります。
特に有用なのが,EPSが年率30%以上で急成長している株式が上昇トレンドの途中で10DMAまで押すことがあります。強い上昇トレンドでの10DMAへの押しは絶好の買い場となることが多いです。
STDEV 標準偏差です。値動きのボラティリティーを表します。
ATR 真の値幅です。上ひげ・下ひげを含めた値動きの幅を表します。
ボリンジャーバンドのバンド幅として採用されるなど,値動きの指標として多用されます。